汚れたバッジ:警官脅迫事件/下 「更生に尽力」異例発言

毎日新聞 2013年06月02日 中部朝刊

 異例の光景だった。

 「被告人が反社会的勢力と完全に決別できるよう、尽力する」

 2012年3月、名古屋地裁。指定暴力団山口組弘道会(本部・名古屋市)の幹部と共に逮捕され、詐欺罪などに問われた風俗店グループ「ブルーグループ」の実質的経営者、佐藤義徳容疑者(55)の公判で、弁護人である城(たち)正憲容疑者(65)自身が、更生を手助けすると誓ったのだ。法曹関係者は「普通は家族が受け持つ役回り。2人の親密さが表れていた」と指摘する。

 当時、水面下では愛知県警警部に対する脅迫事件の捜査が進んでいたが、決定打に欠けていた。脅迫電話をかけたとされる元グループ幹部の青木公司容疑者(43)が、行方をくらませていたことが影響していた。脅迫事件が立件に至らない中、同月末に言い渡された佐藤容疑者の判決は懲役2年6月、執行猶予4年。2人にとっては「勝訴」と言えた。

    ◇

 佐藤容疑者の実業歴は1983年の金融業にさかのぼる。不動産業を経て、風俗業界に進出したのは92年。名古屋の繁華街である今池、池下、そして栄。短期間で業容を拡大し、最盛期には数十店舗を擁する一大グループを築き上げた。売り上げは、年60億円を超えていたともいわれる。

 これまでの裁判で、佐藤容疑者の力の一端が垣間見えたことがある。証言台に立った県警の元警察官は、佐藤容疑者の買収に応じ、摘発などの捜査情報を流していたことを明かした。脅迫事件で事情を聴かれた際、当初は警察への協力を拒んでいた女性証人は「佐藤容疑者が怖かったから」と理由を語った。

 しかし警部脅迫を発端に、携帯電話会社や公務員など個人情報漏えいルートの摘発が次々に進むと、その力に陰りが差し始める。グループの関係者たちが重い口を開き始めたのだ。今年1月、脅迫容疑が立件され、もう一つの容疑も明るみに出る。

 「弁護士が犯人の逃亡を指示していたようだ」

    ◇

 法律家と実業家。別々の道を歩んできた2人の軌跡がいつ交わり、深まったのかは明確ではない。ただ行き着いた先は同じだった。

 <5月31日>

午前8時27分 城容疑者逮捕

午前8時45分 佐藤容疑者逮捕

容疑 青木容疑者を逃走させた犯人隠避

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