後絶たない韓国への文化財流出 検査と管理に「甘さ」
長崎県対馬市の仏像盗難事件を受け、国内港湾の検査態勢の不備を指摘する声が出ている。28日に判決が出た盗難事件の公判では、窃盗団が福岡市の博多港から手荷物で仏像を持ち出した理由について、検察官が「エックス線での手荷物検査がない港を選んだ」と言及するなどノーチェックぶりが浮き彫りになった。
「エックス線検査がなく通関手続きが簡単だから博多港を使ったのではないか」。公判での検察官の追及に、被告は「下関や大阪も港でエックス線検査をしていない。博多港は近くに自分たちの倉庫があり便利だからだ」と証言。日本の「検査の甘さ」を際立たせた。
博多港国際ターミナルの出国検査場では、税関職員が目視で手荷物を点検している。入り口付近にエックス線検査機や金属探知機はあるが、通常は混雑を避け、不審点がない限り、ほとんど使われない。市港湾局によると、2002年の日韓共催サッカー・ワールドカップ(W杯)のテロ防止や、大型クルーズ船の寄港時など、「特別なケース」だけに使われる。
国土交通省によると、空港ではハイジャックやテロ防止のため、航空会社に搭乗者や手荷物に対するエックス線や金属探知機による保安検査を義務づけている。一方、港ではテロの懸念が高まった際に政府が警戒強化を指示することはあるが、空港のような法規定はない。関係者は長年、日本ではシージャック事件がないことや、海上では取締船による包囲など比較的動きを制御しやすいためとみている。
韓国政府は文化財の密輸対策に港湾・空港に文化財鑑定官室を設置。窃盗団が仏像を運び込んだ釜山港では通常のエックス線検査後、税関から通報を受けた鑑定官が「模造品」と誤認して事件を見逃したことが、地元メディアの批判を浴びた。
過去にも兵庫県の寺から盗まれた重要文化財の掛け軸が韓国で見つかるなど、日本からの文化財流出は後を絶たず、韓国政府関係者は「日本も水際で阻止する態勢を強化すべきだ」と訴える。朝鮮半島由来の仏像に詳しい菊竹淳一九州大名誉教授も「相次ぐ盗難事件は日本の文化財管理態勢のずさんさを示している」と態勢見直しを求めている。
=2013/06/29付 西日本新聞朝刊=