疑惑の薬・バルサルタン:/中 臨床試験に懸けた製薬企業 不透明な産学連携
毎日新聞 2013年06月22日 東京朝刊
バルサルタンの座談会形式の記事広告には、日本高血圧学会を中心に有力研究者が繰り返し登場してきた。一方で、臨床試験の結果は複数の学会の診療ガイドラインにも反映され、現場の医師の治療を左右した。しかし、今年2月に京都府立医大の論文が掲載誌から撤回(取り消し)されたため、ガイドラインを見直す動きが出ている。
疑惑の全体像を明らかにするには、研究者側へのあらゆる資金の流れの開示が不可欠なのに、利益相反に関するルール作りを各大学に指導してきた文部科学省は「製薬企業や大学が自主的に情報を公開すべきだ」(産業連携・地域支援課)と、あくまで大学などの調査待ちの姿勢を崩さない。
宮坂信之・東京医科歯科大名誉教授は、医学系研究費の半分を民間資金に頼る日本の現状を踏まえて指摘する。「医学の発展のためには製薬企業の支援は今後も欠かせない。国策で産学連携を進めた結果として今回のような問題が起きたのだから、国は大学や企業任せではなく、積極的な対応をとる必要がある」
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■ことば
◇利益相反
研究者が外部から資金提供を受けたことにより、研究の公正さを疑われる状態を指す。疑いを持たれずに産学連携を推進するには、研究者と資金提供者には資金に関する情報公開が必要とされている。