降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

毎日新聞 2013年06月26日 02時31分

 降圧剤バルサルタンの臨床試験を巡る疑惑で、京都府立医大と東京慈恵会医大の各試験は、患者データを最終的に分析する主任研究者が、試験途中でデータを見られる状態だったことが分かった。主任研究者が、バルサルタンの効果が高いとの試験結果となるよう、データを集めている現場の医師らに投薬量の調節などを働きかけることが可能だった。一連の臨床試験には販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が統計解析の専門家として参加していたことなどから、データの改ざんの有無が焦点になっているが、試験の手法自体に欠陥があった。【八田浩輔、河内敏康】

 ノ社の社内調査結果から判明した。臨床試験は、バルサルタンの発売後、血圧を下げる効果に加え、脳卒中などの発症を抑える効果もあるかを探ることが目的だった。両大学では、関連病院の医師らが各3000人以上の患者を登録。バルサルタンと別の降圧剤を服用する二つのグループに分け、約3年間経過を追跡した。

 今回の試験では、医師と患者には、バルサルタンとそれ以外の薬のうちの、どちらを服用するかが事前に知らされていた。この場合、主任研究者には途中段階のデータを知らせないことが必要になる。主任研究者が途中段階のデータを知ってしまうと、現場の医師に指示することで、患者の診断や投薬量に関する判断に影響を与えることが可能となるためだ。

 患者データは、委託業者が管理する「データセンター」に集積され、表向きは大学側から切り離されていた。しかし、主任研究者には毎月、業者からCD−ROMなどに記録されて途中経過のデータが送られていた。研究室のパソコンからインターネットで接続し、閲覧することもできる状態だった。

 臨床試験の統計解析の第一人者、大橋靖雄・東京大教授は「データセンターが主任研究者から独立していなかったのは非常に大きな問題。今回のような薬の効果を比較する臨床試験では通常考えられない。こうした品質保証がなされていない試験結果を信頼することはできない」と指摘する。

 バルサルタンの臨床試験は、府立医大、慈恵医大、千葉大、滋賀医大、名古屋大で実施され、バルサルタンの有効性を示した。ノ社はこれらの論文を薬の宣伝に活用し、売り上げを伸ばしてきた。昨年、「論文のデータが不自然だ」と専門家が医学誌上で指摘。今年、ノ社の社員が試験に参加していたことが判明した。

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