【PC遠隔操作事件】公判前整理手続が決まる

江川 紹子 | ジャーナリスト

記者会見で検察側の対応を批判する佐藤博史弁護士(左)

ハイジャック防止法違反など3件で起訴された片山祐輔氏について、東京地裁(大野勝則裁判長)は17日、争点や証拠を裁判前に絞り込むための公判前整理手続きを行うことを決めた。裁判所、検察官、弁護人の3者協議の後、弁護人が記者会見を開いて明らかにした。

公判前整理手続きは弁護人が求めていた。佐藤博史弁護士によれば、検察側は「他にも複数の事件で追起訴の予定がある。捜査が全部終わらないと、公判前整理手続きについての意見も言えない」としていた。裁判所が、いつ捜査が終わるのかを訪ねたが、検察官は「いつとは言えない」と回答を避けた。また、検察官は「本件については、先に起訴した事件と全く別な事件があるわけではなく、(他の事件も起訴済みの事件と)一体のものだ。証拠はすべて共通している。そのため、今すぐに弁護人に証拠を開示すると、証拠隠滅が可能になる」とも述べた、という。

裁判官3人が別室で10分ほど協議した後に、公判前整理手続きに付することを決定。5月17日を検察側の証明予定事実記載書面の提出期限とした。この時点で、検察は請求予定証拠を弁護人に示すことになる。

ところが検察官は、「開示はするが、その後(証拠が)変更になることもある」と発言。これに対して、佐藤弁護士が「補充の証拠が後から出てくる、というなら分かるが、変更とはどういうことか。証拠が十分そろい、確証があって起訴したのではないのか」などと指摘した、という。

会見の中で佐藤弁護士は、「検察が、(有罪立証に)全然自信がないということがよく分かった」と述べ、検察側の証明予定事実記載書面に先んじて、今月30日までに弁護側の主張を文書で裁判所に提出することを明らかにした。

弁護側が進行を急ぐのは、身柄拘束期間が長引いて、片山氏の精神状態が不安定になってきているためでもある。独り言をつぶやいたり、壁や床を叩いて留置管理官に注意され、それに反発するなど、拘禁性の精神疾患にかかっているおそれがある、という。早期の保釈を実現するために、効率的な公判前整理手続きを求め、手続きを行う日もまとめて決めるように裁判所に訴えた。

裁判所は、5月22日、6月21日、7月18日に公判前整理手続きの期日を決定。片山氏本人も手続きに同席する予定、という。ただし、この手続きは非公開で行われる。

江川 紹子

ジャーナリスト

早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社会部記者を経てフリーランス。司法、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々。著書『人を助ける仕事』(小学館文庫)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)など。

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