ワイフ&パンツァー (変態と言う名の紳士)
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第三話

「これはどう言う事だ?」

 あれから数時間後、みほと春樹たちは食事中の緊急放送で生徒会に来るよう言われた。彼らはみほのことだと考え、全員で生徒会に行くことを決意した。そして現在の状況。河島桃はそういって手元に持っていた必修選択科目の申請書をみほの前に突き出した。それは戦車道ではなく華道に○を付けたみほの申請書であった。
 
 「何で選択しないかな~?」

 そうムスっとした表情で話した角谷杏生徒会長に河島が角谷の方を振り向きながらこう言う。

 「我が校、喜多川龍と西住みほを除いて戦車経験者は皆無です」

 「終了です……我が校は終了です…」

 そういう小山柚子に監査役である秀雄が重苦しく口を開いた。

 「…あれは生徒会直接の命令であった。それを断ったら何があっても文句は言えないはずだ…」

 「勝手なこと言わないでください!」

 「そうです。やりたくないと言っているのに無理にやらせる気なのですか」

 そう反論する沙織と華。それに続いて春樹も強く反論する。

 「生徒会。あなた達はみほがこの学園に来た理由を知っているか。みほは…!」

 「知っています。あなたたちの事情。そして西住さんが戦車道をやりたくないわけを」

 そういったのは会計の駿であった。それに続いて書記の錬が口を開いた。

 「だが、こちらにもわけがある。とりあえず、素直に戦車道をやりたまえ。下手をすると……」

 「この学園からいれなくしちゃうよ…」

 そうこちらに視線を合わすことなく角谷が淡々と話す。それを聞いた春樹はカッとなって怒る。彼は懐に忍ばせていたアーミーナイフをいつでも取り出せるようにすると角谷を睨みつけながら叫ぶ。

 「ふざけるな! 脅しをかけるなんて!」

 「脅しではない。これは警告だ。もう一度言う。戦車道をやれ、西住。そして西澤、その懐に持っている暗器を捨てろ。ここで下手なことはされたくない」

 秀雄がそう言いながら悠然とした態度で角谷を護衛するような形で前に立つ。その姿に春樹は相手が並みの敵ではないと直感で判断する。すぐさま暗器から手を放すと自身もそばにいたみほの手を握りながら自身のななめ後ろに立たせた。

 「ふざけるな!」

 「横暴だ!」

 同じく怒りを露わにしながら叫ぶ武と義明だが、彼らは涼しい顔で答えた。

 「横暴は生徒会に与えられた特権だ」

河島がいまだにムスッとした表情をしながら言う。その言葉に錬が相変わらず他人を下に見るような目つきをしながら、

 「それに、いざとなればどんな方法でもどうにかなる。いい時代になったものだ」

 そう答えた。そして彼らに続いて小山が口を開く。

 「今のうちに謝ったほうがいいと思うよ? ね、ね?」

 彼女自身はある意味で真剣に謝っている。しかし春樹たちにそれは火に油を注ぐものだった。

 「……てめぇら……、なめてんのか! えぇ!」

 春樹は怒りを露わにし、普段からは使わないような言葉づかいで生徒会に詰め寄る。それに明と武も続いた。

 「さすがに私もこればかりは…。いっそう生徒会を告発しましょうか。脅迫の罪で…」

 「いや、それだけじゃねえ。強要もつけねえとな」

 そんな姿に唯一冷静だった義明が皆を落ち着かせようとする。

 「みんな落ち着いて! 生徒会の皆さんも! ね! ね!」

 しかし義明の努力も空しく彼らの言い争いは止まることはない。言葉の応酬に次ぐ応酬。そんな中、みほはギュッと春樹の手を強く握りしめたまま、体を震わせ、深く顔をそむけていた。だが何かを訴えたい、その感じが春樹にも伝わってくる。
 それに春樹は冷静さを取り戻す。彼はみほの手をやさしく握り返すとみほだけに聞こえるようにこう告げた。

 「大丈夫だ。俺がついている」

 その言葉にみほは目を瞑り、一段と体の震えを大きくした。しかし覚悟を決めた様に大きく息を吸い込むと、大声でこう言い放った。

 「あの! わたし!!」

 「なんだ!!!」

 「…戦車道、やります!!」

 その言葉は一瞬の静寂を生徒会室にもたらす。そして、

 「えええええええええええええええええええええっ!!!!!!」

 沙織、武、華、明、麻子、義明がみほの発言に驚愕し驚く声が生徒会室に響き渡ったのだ。


 生徒会とのやり取りの後、春樹達とみほ達は学校の帰り道アイスクリーム店でアイスを食べながら今日のことについて話し合っていた。それぞれがお互いにテーブルを対面越しにアイスを食べさせあっている。この店ではカップルか夫婦が食べさせあいをするとアイスが半額になるのだ。そのためこの店ではカップルと夫婦が多くいた。

 「本当にいいのか。みほ」

 春樹がそう言いながらみほに自分のアイスをスプーンですくいみほへ食べさせる。みほは少し照れながらもアイスを頬張り、「うん」 と言った。

 そんなみほを見ながら、隣にいた華が心配そうに話しかけた。

 「でも、本当に良かったんですか……?」

 「無理しなくても良かったんだよ?」

 華に続くように沙織がそう言う。それにみほは首を横に振ってこう伝えた。

 「大丈夫……」

 そう言ってみほは表情を暗くした。

 「私、嬉しかった……。みんなが私の為に一生懸命戦ってくれて…、私そんなの初めてだった……」
 
 そしてみほは暗い表情で話を続ける。

 「誰も私の気持ちなんて誰も考えてくれなくて。お母さんとお姉ちゃんも家元だから戦車道するのは当然って感じで。でも……、駄目な私は、いつも……」

 そう言い放ちみほが下を俯くとしばらくの沈黙が春樹達を包み込む。そして春樹は真剣な表情で答える。

 「そんなことはない。みほはダメなやつじゃない。俺が保証する!」

 その表情にみほは少しだけ表情を明るくする。

 「ありがとう。はるちゃん……」

 そんな様子に春樹は笑みを浮かべながらもその心の内では黒い感情が渦巻いていた。

 (みほ…、本当は嫌なはずなのに…。生徒会…! いつかみほのトラウマをえぐったお前たちを!!)

 そしてそんな自身の感情を振りほどくようにウーロン茶を一気に飲み干すのだった。

 
 

 その翌日、いよいよ戦車道の授業が始まった。
 20年以上前に立てられた戦車格納庫の前には戦車道を選択した生徒たちが集まっている。春樹達もみほたち妻の様子を見るために全員が集まっている。
 そんな彼らのそばに、一人の男子生徒が不安な表情をしながら一人の女子生徒を見つめていた。その姿に自分たちと同じ匂いを感じる春樹。ひょっとして……。
 彼は近くにいた男子生徒に話を聞いた。

 「すまん、いいか」

 男子生徒は急に声をかけてきた春樹に少し驚きながらも返事をした。

 「はい…なんでしょうか」
 
 「お前、ひょっとして結婚しているか? 相手はあの中にいる」

 「えっ! なんでそれが!!」

 男子生徒は驚いた様子で春樹達に聞いてきた。

 「俺たちもあの中に妻がいてな。お前の見る目が俺たちと同じなのに気づいた。どうやら当たりのようだな」

 そんな様子で話していた時、みほたちの前に生徒会女子のメンバーが現れた。そこには男たちの姿はない。どうやらこの場にはいないようだ。

 「全員静かに、これより戦車道の授業を始める」

 河島がそう言うと一人の女子が彼女に問い掛ける。

 「あの……? 戦車は? ティーガーですか、シャーマンですか? それとも……」

 「さぁ~、何だっけ? 小山、河島、ドア開けて」

 そう言いながら会長が倉庫のドアを小山先輩と川島先輩に開けさせる。すると、そこにあったのはボロボロの4号戦車D型であった。

 「うえぇー……」

 「ボロボロー…」

 「何コレェー?」

 「ありえなーい」
 
 そう1年の女子達が愚痴をこぼす言葉を聞きながら、華と沙織も言葉をかわした。

 「侘び寂びがあって良いじゃないですか」

 「いや、あれは鉄さび」

 そんな感じで各々がボロボロの4号戦車を観て抱く考えを口にする側、みほがゆっくりと4号戦車に歩み寄り、車体側面の装甲板に手を置き4号戦車の状態を確認していた。そしてある程度見ると微笑みながらこう呟く。

 「装甲も転輪も大丈夫そう、これでいけるかも」

 「おおおおおおっ!!!」

 戦車格納庫に選択した生徒たちの声が響く。それを確認した春樹達は安堵を浮かべるとともに、これからどうなっていくのか、一抹の不安を抱くのであった。




インタビュー

大島義明。冷泉麻子の夫。戦車道においては特技である情報関係の知識を生かし、敵の情報収集や部隊の戦闘データの収集など、様々な後方支援を担当していた。

 僕と麻子との出会い? うーん、僕と麻子は生まれた時から一緒なんだ。ちょうど同じ時、同じ病院で生まれて、保育器も隣同士。親同士も仲が良くてね。気づいたらいつも一緒にいたね。ちなみに沙織とも幼馴染だね。だから麻子の世話を一緒にしていた時もあるよ。
 好きになったのは小学校高学年の頃かな。いつも一緒に過ごしているうちに、なんとなくうれしい気持ちがあふれていたんだ。それが日増しに大きくなっていくある時、事件は起きた。

 麻子の両親が亡くなったのさ。あの時の麻子は僕が見ても危ない状態なのが理解できた。とても一人にはしておけなかった。だから僕は麻子が彼女の祖母に引き取られると分かったとき頼んだのだ。『麻子の世話をさせてください!!」 って。
 今にしてもおかしな話だよ。けどあの時は必至だった。彼女を一人にしておけない。僕が彼女を守るんだ。そう思っていたよ。

 それから僕は毎日彼女の家に向かうと料理を作ったり、麻子を起こして学校に連れて行ったり。時に両親がいないことで悲しくなっている彼女を優しく抱きしめたり。そんな風に過ごしているとより麻子のことが好きになった。少し見ただけで簡単に覚える能力。それに相手を見抜く洞察力。そんな優秀な能力とは裏腹に、朝が弱くて毎日僕におんぶされながら学校へ向かったり。それにクールな雰囲気とは違う照れた表情がとてもかわいい。
 そんな風に彼女の魅力を一つ一つ知っていくうちに彼女のことを放したくない。手に入れたい。そんな独占欲も現れたんだ。

 中学に上がってからは寮が共同生活が許されているところに一緒に住んだ。麻子の祖母から許可も得たし、僕の両親からも許可を得た。おかげで毎日麻子と過ごせてうれしかったな。……麻子に悪い虫もつかなくて済んだから……。
 少し話がそれたかな。それから少しして僕は麻子に告白した。彼女は照れながら、

『……よろしく…頼む……」

 そういってくれたんだ。あの時の麻子は僕の中でベスト3に入るぐらいの良い顔だね。
 それから僕たちは中学卒業し、僕の元服の儀式を終えたその足で結婚をした。あの時、顔を真っ赤にしながら役場に書類を提出する麻子はかわいかったな……。襲いたくなるぐらい……。……なんでもないよ……。

 麻子のかわいいところか。さっきも言ったけど、普段は無表情な麻子が時々見せる照れた顔。これが最高にかわいいね。後、照れながら甘えてくる姿。まるで猫のようなんだ。本当にかわいいよ。
 まぁ、一番かわいいのは喘いでいる時なんだけど……。ああ見ててベッドの上ではね……。

 (これ以下は扇情的な内容が続くため掲載できません。まことに申し訳ありません by新聞部)




 冷泉麻子。戦車道あんこうチーム操縦手。高い操縦技術は様々な戦局で大洗学園の力になる。

 ん。義明のことか? 私と義明は小さいころからどこに行く時も一緒だった。沙織ともよく遊んでいたが、一番は義明だ。そのせいか、子供大人構わず夫婦だってからかわれていたな、私たちは。でも悪い気はしなかった。義明といるととても楽しい。それに心が温まってくる。そんな気持ちを私は子供の時感じていたんだ。

 私が義明を好きになったのは、……私の両親が死んでからだ。あの時、義明が居なかったらと思うと怖くて仕方がない……。そのぐらい、当時の私はふさぎ込んでいたんだ……。
 義明が私とおばぁが暮らしている家に毎日来てくれて、私のことからおばぁの事までいろいろ世話してくれた。お父さんとお母さんが亡くなった時のことを思い出して泣いていた時も、優しく接してくれた。そんな風に過ごしていたら、いつの間にか好きになっていたんだ。
 中学の時、義明が告白してくれた時、私は本当にうれしかった。好きな人に告白される。これがうれしいものだと私はあの時初めて知ったんだ。
 結婚後もいろいろ助けてくれる義明は本当に感謝している。もし義明が居なかったら、私は遅刻してばかりだからな。

 義明の困ったところか。義明はあんなかわいい笑顔と裏腹にドSなんだ。私が嫌と言っているのに責めたりするんだ…。たとえばな……。

 (ここから先は内容が扇情的になってしまうため掲載できません。まことに申し訳ありません by新聞部)



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