制作プロデューサーのおすすめ!総合、BSプレミアムで放送している〈シリーズ世界遺産100〉。その中から、制作プロデューサーがおすすめの世界遺産を選び、 見どころや取材・編集のこぼれ話を伝えていきます。
フレーヴォ。レシーフェで生まれた独特なダンスだ。
踊りが魅力のレシーフェのカーニバルは、観光客を含め誰でもが参加できる。「ロープを張らないカーニバル」といわれ、リオのカーニバルのように、選ばれたグループがコンテストとして優劣を競うのとは違い、飛び入り自由なのだ。
16世紀からポルトガルやオランダの植民地として栄えた人口150万の港町に、250万人が集う。
パレードの先頭をきるダンス“フレーヴォ”の原型は、サトウキビ畑で過酷な労働を強いられた黒人奴隷たちが、農園主からの暴力をかわすために編み出した“カポエイラ”という護身術だ。
まるでボクシングのように体を左右に揺らしながら相手の攻撃をかわす。そして踊るように足を高く上げ技を繰り出す。こちらから向かっていくのではなく、あくまでも防御が基本だ。
その武術が、「煮え立つ」という意味のフレーヴォというダンスに変わってきたのは、19世紀末に奴隷制度が廃止されてからだ。
テンポは速く、足元に熱した鍋があるように飛んだり跳ねたりとアクロバティックな動きになった。アフリカのエネルギーがあふれる切れ味の良さが特徴だ。
強い日ざしを避けるために人々が持ち歩く日傘も取り入れられた。
黒人奴隷が生みだした身を守るための武術が、誰でもが楽しめる“エンターテインメント”へと姿を変えたのだ。
しかし護身術“カポエイラ”は今でも健在だ。ブラジルでは子どものときの遊びとして誰でもが経験するもので、競技会もある。
ブラジルのサッカーが強いのは、「小さいときからカポエイラで足腰を鍛えたからだ」という人もいる。いわば国民的な武術として位置づけられているのだ。
そういえば、私の息子の友人がカポエイラの名手で、日本にも競技団体があるというから、海を渡って海外にも知られていることになる。
奴隷制度という悲しい歴史が生んだ護身術が、人種の垣根を越えたダンスへと発展したのだ。
レシーフェ市は、20年近くも前からフレーヴォの学校を設立し、誰でもが通えるプロの踊り手による無料レッスンを行っている。フレーヴォそのものが街の歴史でもあり、それを広め伝えていくことが使命だと考えているからだ。
文/制作プロデューサー・須磨章
「〜レシーフェのカーニバルの舞踊と音楽」 ON AIR
5日(水)総合 午後10:50〜10:55
7日(金)BSプレミアム 午後4:25〜4:30
その他のON AIR 総合
(土) 総合 午前11:25〜11:30*
(日) 総合 午前4:25〜4:30
(月〜金) 総合 午前4:15〜4:20※
(水) 総合 午後10:45〜10:50*
(木) 総合 午後4:50〜4:55*
(金) BSプレミアム 午後4:25〜4:30
* 一部、別番組の地域があります。
※ 6日(木)午前4:15〜は休止。
カーニバルには250万人が集う。
カポエイラ。
アフリカからやってきた奴隷たちの護身術だ。