注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
キシリトール [英]Xylitol [学名]-
概要
キシトールは、キシリットともいわれ、D‐キシロースを還元して得られる糖アルコールである。俗に「ショ糖やグルコースと比べて虫歯になりにくい」、「低カロリーで血糖値上昇抑制効果を持つ甘味料」などといわれている。ヒトでの有効性については、「虫歯の原因になりにくい」「歯を丈夫で健康にする」として、キシリトールを関与成分とした特定保健用食品が許可されている。安全性については、食品中に含まれる量であれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、一度に大量 (30〜40 g) 摂取すると、下痢や腹部不快感を生じるとされている。妊娠中・授乳中では過剰摂取した場合の安全性については十分なデータがないことから過剰摂取は避けること。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。
法規・制度
「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」に区分される (30) 。「指定添加物」 (甘味料) である。米国ではGRAS (一般的に安全と見なされた物質) 認定。特定保健用食品の関与成分にもなっている。
成分の特性・品質
主な成分・性質
C5H12O5、分子量152.15。
分析法
紫外可視 (UV) 検出器を装着した高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による分析の報告がある (PMID:11043600) (PMID:6613357) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中で見当らない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
・小児を対象とした無作為化臨床試験 (RCT) において、キシリトールシロップまたはキシリトールガムを投与させたところ、急性中耳炎の罹患率が低下したとの予備的な報告がある(25) (64) (66) が、急性気管支感染症を併発した場合の中耳炎には有効性が見られなかったとの報告もある (66) 。
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
・虫歯予防におそらく有効と思われる (64) 。キシリトール含有製品 (食品、ガム、アメ、歯磨き粉など) でキシリトールを1〜20 g/日使用すると、成人および小児における虫歯の発生が抑えられたという報告がある (64) (66) 。キシリトール製品はソルビトール製品よりも虫歯予防効果が高いことが明らかになった (64) (66) 。 ・キシリトールを関与成分とし、「虫歯の原因にならない甘味料(キシリトールおよびマルチトール)を使用しています。また、歯の再石灰化を増強するキシリトールを配合しているので、歯を丈夫に保ちます」などの表示が許可された特定保健用食品がある。 ・歯周疾患のない成人10名 (26〜34歳) を対象に、65%キシリトール含有ガムまたは100%キシリトール含有キャンディー2個の摂取、もしくはキシリトール溶液 (5%、20%)10 mLの洗口剤使用を、2回/日、4日間で介入を行ったところ、洗口液使用の条件でのみプラーク沈着が少なかったという報告がある (2002120227) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
・ヒト歯を用いた実験において、5%キシリトールと500 ppmフッ素を混合した歯磨きは、キシリトール無添加の群と比較して、再石灰化を促進した (PMID:17429185) 。 ・20%キシリトール添加飼料で飼育したラットにおいて、好中球の殺菌作用増強ならびに、実験的な肺炎球菌敗血症状態における生存延長が認められた (PMID:18334022) 。
安全性
危険情報
・食品中に含まれる量であれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、一度に大量 (30〜40 g) に摂ると浸透性下痢や鼓腸、腹部不快感が起こる可能性がある (5) (25) (64) 。また、長期に多量摂取することは危険性が示唆されている (64) 。 ・高濃度のキシリトールを静注すると、高尿酸血症、肝機能試験値の変化、アシドーシスを起こす可能性がある (64) (66) 。 ・妊娠中・授乳中は食品中に含まれる量であればおそらく安全と思われるが、過剰量の摂取における安全性については十分なデータがないので、多量摂取は避けること (64) (66) 。 ・術後患者のビタミン非投与下で、グルコース・フルクトース・キシリトール混合輸液中に重篤な代謝性アシドーシスを発症、敗血症性ショックを併発し、ビタミンB1の投与で回復したという報告がある (1995229970) 。 ・9週齢女児 (スイス) が、4週齢時から疝痛および睡眠障害の改善のためにキシリトールを含有するホメオパシー製品を投与されたが、症状の改善がみられなかったため、服用量をおよそ100 mg/kg体重/日まで増やしたところ、下痢、体重減少、代謝性高塩素性アシドーシスを起こしたという報告がある (PMID:20625910) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) キシリトールを投与:ラット経口16.5 g/kg、ラット静脈内10.8 g/kg、マウス経口12.5 g/kg、マウス静脈内8.5 g/kg (91) 。 2.LDLo (最小致死量) キシリトールを投与:マウス腹腔内22.1 g/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
参考文献中に記載なし
総合評価
・食品中に含まれる量であれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、長期に多量摂取するのは危険性が示唆されている。 ・妊娠中・授乳中では、過剰量の摂取における安全性については十分なデータがないので、多量摂取は避けること。 ・一度に大量 (30〜40 g) に摂ると浸透性下痢や鼓腸、腹部不快感を起こすことがある。 ・高濃度の静注による副作用としては、高尿酸血症、肝機能試験値の変化、高酸血症が知られている。
・未就学小児の急性中耳炎発症率を低下させる目的で、ガムやシロップを経口摂取した場合、有効性が示唆されている。 ・虫歯の原因にならない、歯の再石灰化を増強する機能が、特定保健用食品の審査で認められている。
参考文献
(5) 栄養成分バイブル 主婦と生活社 中村丁次 (25) クリニカル・エビデンス日本語版 日経BP社 日本クリニカル・エビデンス編集委員会 (64) 健康食品データベース 第一出版 Pharmacist's Letter/Prescriber's Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳 (PMID:11043600) J Chromatogr A. 2000 Sep 29;893(1):195-200. (PMID:6613357) Z Lebensm Unters Forsch. 1983;176(6):417-20. (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (1985058262) 日本腎臓学会誌. 1983;25(9):1079-82 (2002120227) 日本歯周病学会会誌. 2001; 43(3):289-94 (1995229970) 外科と代謝・栄養(0389-5564)29巻2号 Page135-142(1995.04) (66) Pharmacist’s Letter/Prescriber’s letter Natural Medicine Comprehensive Database(2006) (PMID:17429185) J Oral Sci. 2007 Mar;49(1):67-73. (PMID:18334022) BMC Microbiol. 2008 Mar 11;8:45. (PMID:20625910) Eur J Pediatr. 2010 Dec;169(12):1549-51.