九回、代走・荒木が二盗に成功。プロ初盗塁を最高の場面で決めた(撮影・森田達也)【拡大】
(セ・リーグ、阪神4x-3広島、7回戦、阪神4勝3敗、29日、甲子園)二塁へ激走する荒木の姿に、満員の甲子園が息をのんだ。セーフ判定に大歓声が沸き上がった。3年目の荒木が、プロ初盗塁をマーク。勢いに乗った若虎が、大和のサヨナラ打で歓喜のホームを駆け抜けた。
「『行けたら行け』と言われていた。けん制もあったけど、割り切って行けた」
出番は3-3の同点で迎えた九回一死だった。代打・高山が四球を選ぶと代走として出場。しびれるような場面で、続く代打・関本の2球目に、好スタートを切った。50メートル5秒7の快足を甲子園で披露し、虎の劇的勝利を演出した。
1軍と2軍の入れ替えが頻繁に行われている今季。しかし、チャンスを与えてもらっても、つかみとることができず、鳴尾浜に帰ってくる若手選手が目立つ。荒木も同様だ。今季は開幕1軍でスタートしながら、2度の出場選手登録抹消を経験した。まさに、行ったり来たりだった。
出場13試合目だが、先発出場は2度だけ。計6打数無安打と、いまだプロで「H」マークを灯せていない。それでも、荒木には内外野を守れる守備力と、何より足がある-。遅ればせながらのプロ初盗塁だが、同点の九回という緊迫した場面で決め切ったことは、大きなアピールになったことは間違いない。
「ベンチから試合を全部観ていますし、後から出るとかは関係ない。そういう立場なので、アピールしていかなければいけない」
試合後は語気を強めた。若手の台頭。大和こそ出てきたが、阪神ではほとんど耳にしない言葉になった。それでも候補生たちはたくさんいる。まずは足で、25歳の若虎が、名乗りをあげた。(渡辺洋次)
(紙面から)