【森本未紀、武田耕太】製薬大手エーザイは8月、アルツハイマー型認知症治療薬アリセプトが、ダウン症に伴う生活行動の低下を改善するかどうかを見る臨床試験(治験)を始める。安全性と有効性が確認されて厚生労働省が承認すれば、症状を改善する初の治療薬となる。
ダウン症の人は成人するころから、身の回りのことができなくなったり、引きこもったりすることがある。厚労省研究班の2010年度の調査では、「介護者が対応しても日常生活が難しい」と報告された中学卒業後のダウン症の人が6・5%いた。
ダウン症の成人では、若いころから、アルツハイマー型認知症と同じたんぱく質が脳内に沈着しやすいことが知られている。長崎大が02年から、約70人を対象にアリセプトを使った同様の臨床研究を実施したところ、下痢などの副作用もあったが生活の質(QOL)が改善し、家族の満足度も上がるなど効果がみられたという。全国10病院で行われる今回の治験では、15〜39歳のダウン症の数十人を対象に3〜4年間行う。
ダウン症は、21番染色体が1本多いことで先天的に起き、800〜1千人に1人の割合で生まれるとされる。知的な発達の遅れや、心疾患を伴う場合もある。
長崎大の元准教授で、みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家診療部長の近藤達郎さんは「薬が使えるようになれば、成人期のダウン症に対応する施設が、全国的に整備されていく可能性がある」と話す。
アリセプトは、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑える薬として、1999年に発売された。
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朝日新聞社会部