まず、自閉症とは何かをお話ししましょう。自閉症とは、言語障害のある子供から優秀な科学者や技術者までを含む一つの大きな連続体です。ここは居心地が良いですね。自閉症の遺伝子ばかりですから自覚はないでしょうが…
(拍手)
ある特質の連続体なんです。オタクをアスペルガーから隔てる境界線はどこにあるのでしょう?アインシュタインやモーツァルト、ニコラ・テスラなど、今日であればみな自閉症と見なされたでしょう。
私は自閉症の子供達を新エネルギーを発明するような人間に育てたいんですよ。今朝ちょうどビル・ゲイツが話しましたね。
さて 自閉症や動物を理解するために、異なる思考法についてお話しします。言語からは離れてください。私は絵で考えます。言葉では考えません。
自閉症の脳は細部に注目します。これは大きい文字か 小さい文字を識別しなさいというテストです。自閉症の脳は 小さい文字をより早く認識します。通常の脳は 細部を無視するんですね。橋を造るなら 詳細は大事です。そうでないと 橋は壊れてしまう。
今の世の中は概念的な方向に偏りすぎています。実践するという事から遠ざかっています。体験型の授業の減少がとても気がかりです。私は美術のような科目に秀でていましたからね。
牛に関しての話です。 私は ほとんどの人が見落とす些細な点が牛を尻込みさせる事に気づきました。例えば、この病院の正面にある たなびく旗です。
この病院は全て取り壊されるところでした。旗を移動するだけで済んだんです。せわしい動きが問題の原因でした。
この仕事を始めた頃 牛の通路にもぐり、牛の視点に立ってみました。おかしいと思われましたが フェンスにかかったコートや影や床のホースが牛を尻込みさせるんです。誰も気にしていませんでした。
垂れ下がった鎖とか私の映画でよく描かれています。 この映画は私の仕事をうまく再現していて好きですね。 ガリ勉の面です。
私の描いた絵も主役をはっていますよ。“Temple Grandin”という映画です。
私の著書の「絵で考える」ではないですよ。
絵で考えるという事は脳内で映画を観るようなものです。私の脳はGoogle画像検索に近い。 子供の頃 自分の思考法は変わっていると知らず、みな絵で考えていると思っていました。
“Thinking in Pictures”という本を書くために人々に思考方法を尋ねました。そこで 自分の考え方が人と違うことを知り ショックを受けました。「教会の尖塔について考えよう」と言えば大半の人は一般的なものを想像します。 この会場では違うかも知れませんが他の多くの場所では真実です。
私の場合はGoogle画像検索のように具体的な画像が次々と浮かんでくるんです。
映画の中でも上手に描かれていて「靴」という言葉が発せられると 50年代60年代の靴がたくさん 私の脳内に浮かぶんです。 これは私が子供の頃の教会です。
これくらい具体的です。フォートコリンズや有名な教会なんかですね。こんな感じで次々と浮かび上がるんです。
画像検索のごとく 即座に現れます。一枚ずつです。そこに 雪を降らせてみたり雷を加えてみたり、イメージを保持して 動画に出来るんです。
この視覚型思考は 家畜施設をデザインする上で大変な利点となりました。牛が食肉処理場で少しでも苦しまないように努めました。
ここで生々しい画像は出しませんがご興味があればYouTubeに上げてあります。私がデザインする過程で出来た点は、その設備を自分の脳内で試運転出来たという事です。 コンピュータ内の仮想現実のようにです。
これは映画で使用された私のプロジェクトの再現物の空中写真です。とても良くできてるんです。映画の大道具さんには 多くのアスペルガータイプや自閉症タイプがいましたからね。
(笑)
私が気がかりなのは このタイプの若い子達が どこに行くのかという事です。彼らが行くべきシリコンバレーには到達してないんです。
(笑)
(拍手)
私は社会的ではなかったので 自分自身でなく自分の作品を売る必要があると 早い時点で学びました。自分が描いた図面を見せて、家畜施設の仕事を得ました。
子供の頃役立った事がもう一つ、50年代ではマナーを教わってたんですね。 お店の棚にある商品を引きずり下ろして放り投げてはいけないと教えられました。
さて この子達が3年生4年生になった頃、将来は視覚で考えるようになると思うかも知れません。遠近法で絵を描いたりしてね
でも、全ての自閉症の子供達が視覚型思考を持つわけではありません。
これは数年前に撮った私の脳のスキャンです。私の視覚野には極太のインターネットの幹線が通っていると冗談を言ったもんです。
これはテンソル画像ですが私のこのインターネット幹線は比較対照の2倍あります。 赤い線が私ので青い線が 同じ年齢、性別の被験者のものです。 ご覧の通り私のは非常に大きく 比較対照の青い線はとても細いですよね。 この連続体に属する人たちは実際に一次視覚野を使って考えているという最近の研究もあります。 視覚型思考も 脳のあり方の一つだということです。
自閉症の脳は 特定の行動に熱中しがちです。ある事に秀でていて ある事に劣る。私は代数が苦手でした。幾何学などのクラスは許可されませんでした。大きな間違いです。代数が苦手であっても幾何学や三角法は学べるのです。
もう一つは パターン型思考です。より抽象的で エンジニアやプログラマに向いています。これが例です。
このカマキリは一枚の紙から出来ています。テープもハサミも使いません。背景にあるのが折り方です。思考のタイプです。
私のような 写実的・視覚型思考者にパターン型思考者音楽や数学の脳です。 読書が苦手だったりしますね。失語症の子供達にもこのタイプがいます。
このような 違うタイプの脳があり、言語的な脳があります。物知りタイプです。
次に 知覚の問題です。 私はこのヘッドセットを身につける事に抵抗がありました。なので30分前にここに来てこれに慣れるようにしました。顎に当たらないよう調整してもらいました。知覚は問題になります。蛍光灯や音に敏感な子供もいます。この辺は多種多様です。
私の視覚型思考は 動物の気持ちを知る上で大きな力となりました。
動物は知覚で考える生き物です。言語ではありません。 絵で考え音で考え においで考えます。ただの消火栓にどれだけの情報があるか考えてみてください。犬であれば、誰が居たのか・いつ居たのか・敵か味方か・付き合える相手は居るのか・・・その消火栓には膨大な情報があるんです。とても具体的な情報です。
これらの詳細を調べることが動物を知る洞察力となりました。
動物や私の脳は知覚で得た情報をカテゴリーに分別します。馬に乗っている人、地面に立っている人。これらは全く別のものとして認識されます。
乗り手に虐待された馬がいたとします。この馬は獣医や蹄鉄工を恐れる事はしませんが 乗馬はさせないでしょう。蹄鉄工に虐待された馬がいたとします。その馬は地面に落ちているものや獣医を恐れるようになりますが 乗る事はできます。
牛たちも同様です。
馬に乗っている人と立っている人。これらは別物なのです。異なる「絵」なんですね。
どれほど具体的か 考えてみてください。この「情報を分別する」事を苦手とする人が多いんです。
私が施設の設備などの問題解決しているとき、彼らは把握できないんです。人の訓練の問題なのかその設備に問題があるのか。設備の問題と人間の問題を分別する必要があるのです。多くの人はこれが苦手なんです。 これが設備の問題であったとしましょう。自分で修理可能なレベルのものか?そもそもの設計が悪いのか?これが解けない人が多いんです。
別の問題を考えてみましょう。 飛行機をより安全にしたいとします。私はミリオンマイルフライヤーです。飛行機にはしょっちゅう乗っています。もし私が連邦航空局にいたらどこに注視するでしょうか?飛行機の尾部ですね。 この20年間で5件の大事故が尾部が外れたり 尾部にある操舵部の故障で起こっています。 問題は尾部なんです。疑いありません。 パイロットが飛行機の中を見て回っても尾部の中までは見えないんです。私がこういう事を考えるとき全ての詳細な情報をたぐるんです。具体的で基礎的な部分から検証します。細かなピースをかき集めて パズルのように組み立てます。
この馬は黒い帽子を極端に恐れます。黒い帽子をかぶった人に虐待されたんですね。白い帽子なら大丈夫なんです。
さて 重要なのは あらゆるタイプの頭脳が協力して働く事が今後 求められるでしょう。 これらの頭脳の発達に取り組まねばなりません。 私をいらつかせる事の一つは私はあちこちで自閉症の会合に参加しますが、多くの天才予備軍に会います。ちょっと社会的でないだけです。しかし誰一人、科学やなにかに彼らの興味を向けようとはしないのです。
ここで 私の科学の先生について話しましょう。その先生は映画の中で見事に描かれています。高校ではダメ生徒扱いでしたカーロック先生の科学の授業を受けるまでは勉強を気にした事もありませんでした。 映画ではカーロック博士として出てきます。彼は私に目の錯覚を解き明かすよう仕向けたんです。子供達が興味をそそられるものを提示してあげるという事です。
TEDがやるべき事の一つはその素晴らしい講演について 学校に教える事です。 ネット上には子供達の目を開かせるものがたくさんあるんです。 多くの天才予備軍を見てきましたが中西部や その他のあまり進んでいない地域では、教師が何をすべきか分かっていないんです。 そのせいで道を過ってしまう。
より思慮深い 認識能力のある頭脳にすることも、より社会的な頭脳にすることも可能です。 自閉症の脳の後頭部辺りには余剰な回路があるという研究があります。 天才を生む代わりに 社会性の回路を失うんです。 思考能力と社会性のトレードオフですね。
これが極度に偏ると全く言語を使わなくなります。動物と異なり 人間の脳では言語が視覚型思考を覆い隠します。
これはブルース・ミラー博士の研究ですが、彼は前頭側頭型認知症を患うアルツハイマー患者を調査しました。
この絵は 言語障害を負った元自動車組立工が描いたものです。ゴッホに物理学の知識は無かったでしょう。しかし興味深いのはこの絵の渦巻きは乱気流の統計学的モデルに沿っているという事です。
このような数学的パターンは私達の脳に入っていると想像するととても興味深いですね。
私はWolframで得た情報やそこで検索するための単語なんかを常に書き留めています。自閉症の講義で必要になりますからね。興味深いものを見せるんです。技術や図面設計や美術の授業は科目から除かれてしまいました。美術は私の得意科目でしたしね。
これらの頭脳を忘れてはいけません。異なる頭脳と協力する必要があります。将来 このようなタイプの人々を必要とする時が必ず来ます。
仕事について話しましょう。科学の先生に背中を押されるまで私は勉強嫌いなダメ生徒でしたが仕事の経験はあったんです。 時間を守るといった基本を知らない子達がたくさんいます。 私は8歳でそれを教えられました。 祖母の家でテーブルマナーを学んだり、幼い頃に教えられたんです。 13歳の時には洋服の仕立屋で裁縫の仕事をしていました。 大学ではインターンシップに参加しいろいろ作りました。 課題のこなし方も学びました。馬の絵ばかり描く私に 母は言ってくれました。 「他の絵も描いてみない?」と。
違う事のやり方を知る必要があります。レゴに執着する子がいれば他のものを組み立てるよう促すんです。 自閉症の脳は執着する傾向があります。レーシングカーが好きならそれを算数に使うんです。この距離を何分で走る?とか、子供のやる気を引き出すため執着心を利用するんです。
主にここから遠い地方の教師達が彼らの扱い方を知らないので、本当にうんざりしますよ。頭に来るんです。
視覚型思考者の適職とは? グラフィックデザインにコンピューター全般、写真や工業デザインなどです。パターン型思考者なら数学者やソフトウェアエンジニア、プログラマーなどですね。言語型思考者は優れたジャーナリストです。舞台俳優にも向いているんですよ。 なぜなら 自閉症の人は芝居を演じるように 社会性を身につけるからです。学ぶほかないんですね。
私達も共に学ぶ必要があります。 そこで指導者の話です。
私の科学の先生は非公認でした。NASAの科学者だったんです。アメリカのいくつかの州では生物学や化学の学位があれば学校に来て 教壇に立てるんです。これをもっとやるべきです。この子らに相応しい先生達がコミュニティー・カレッジにはたくさんいると感じています。彼らを高校に招くべきです。
別の可能性としてはソフトウェア産業からリタイアした人たちに教えてもらう事です。 教える内容が古くても構いません。引き金となることが大切です。子供達のスイッチを入れるんです。新しい事は自ら学ぶでしょう。指導者は必要不可欠です。 私にとってカーロック先生の影響は はかり知れません。
彼らを雇う必要もあります。あなたの会社のインターンに自閉症の子が来たとしましょう。「何か作れ」ではなく、具体的な指示を出してください。より詳細な指示を出すんです。
「電話機のためのソフトでこの機能を持つ必要がある。使えるメモリはこれだけだ」 こういった詳細な指示です。
私の話はこれで終わりです。ご静聴ありがとうございました。
ここに立てて光栄です。
(喝采)
質問があるんですか? いいですよ。
(拍手)
クリス: 本当にありがとうございました。私が好きな あなたの一節があります。「もしなにかの魔法で自閉症が絶やされたら、人類は今も洞窟の入り口で焚き火を囲んで 暮らしているだろう」
テンプル: 初めて石槍を作ったのはアスペルガーの人でしょう。もし自閉症が無くなればシリコンバレーも終わるでしょうしエネルギー問題も解決されないでしょう。
(拍手)
クリス: いくつかお聞きしたいのですが、もし不適切な質問があれば「次の質問」と言ってください。もしここに 自閉症の子を持つ人や 自閉症の子を知っている人がいて彼らが心を開かないと感じていたらなんとアドバイスしますか?
テンプル: まず 年齢が重要です。2~4歳の子で何も話さず 社会性も無い場合今すぐに 最低週20時間のマン・ツー・マンの指導を始める事です。自閉症にも幅があります。その連続体の約半数は話し方を覚えません。 シリコンバレーで働く事もないでしょう。単に向いていないんです。 しかしもう一方は 軽い自閉症の天才予備軍たちです。彼らに興味深いものを見せスイッチを入れてあげるんです。私は共通の趣味から社会性を学びました。他の子達と馬に乗り ロケットの模型を作り電気実験をしたりしました。60年代には スピーカーにゴム膜を張り鏡を糊付けし 派手な照明にしました。超イケてると思いました。
クリス: 自閉症の親達が望むように 子供に自分を愛してもらう事は難しいのでしょうか?
テンプル: いえ 子供はとても忠実ですよ。もし火事にでもなれば 助けにくるはずです。
クリス: それは驚きました。さて人々に何に夢中かを尋ねると「子供」や「恋人」と答えます。あなたが夢中なのは何ですか?
テンプル: 自分の行動が世界を良くしているという事実です。自閉症の子を持つ母親に「あなたのおかげで子供が大学に進学したの」と言われると嬉しいです。 80年代に私がいた屠畜場も酷いものでした。そこでシンプルな評価システムを作りました。結果を測るだけです。何頭が転倒し、何頭がつつかれ何頭が痛み悶えたか。非常に単純です。いくつか観察するだけです。これが大変有効でした。 実社会を変えているのを見ることに満足を覚えました。概念ばかりでなくもっとこういった事が必要です。
(拍手)
クリス: 電話でお話したときサーバーファームに興味があると仰ってました。ねそれについてお聞かせください。
テンプル: サーバーファームを知って興奮しました。知識の固まりなんですね。図書館なんです。私にとって知識はとても貴重です。10年以上前ですが近所の図書館が水害に遭ったんです。インターネットが広まる前でした。本がダメになってしまうと 動揺しました。それは知識の崩壊ですから。サーバーファームやデータセンターは巨大な知識の図書館なんです。
クリス: あなたをTEDにお招きできて本当に光栄です。
テンプル: こちらこそ ありがとうございます。
(喝采)
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