ケースワーカーの過重な負担を
どう解決すればよいのか
現在の生活保護制度を機能させ、就労などの自立を望む当事者を支援するためには、福祉事務所の体制の充実がどうしても必要だ。特に、現場を担うケースワーカーの増員や人員育成が必要だ。このことは、さまざまな立場の人々によって指摘されている。しかし、この1年ほど、福祉事務所の体制強化が制度に組み込まれるとすれば、
「不正受給摘発のために、福祉事務所に警察OBを配置」
「不適切な保護費使用を監視するために、福祉事務所のスタッフを増員」
というような文脈の話ばかりだ。なぜ、このように換骨奪胎されてしまうのだろうか。
6月21日の参議院・厚生労働委員会に、参考人として出席した社会福祉士の藤田孝典氏(NPOほっとプラス代表理事)もまた、生活困窮者を支援する立場から、ケースワーカーの増員の必要性を主張した。
藤田氏によれば、ケースワーカーの人材育成は、まったく「間に合っていない」そうだ。日常業務での負担が過重である上、ケースワーカーの多くは人事異動でたまたま配属されただけの職員である。1~3年が経過すれば、また次の部署へと異動するため、経験を蓄積してゆくことができない。厚労省は監査・指導・研修などで対策しているが、ニーズに対して人材育成が追いついていない。水際作戦の原因の一つは、福祉事務所の窓口を訪れた生活困窮者の「話を聞く」余裕すらないケースワーカーが、話を聞かずに追い返してしまうことにもあるという。
次回は、藤田孝典氏へのインタビューを紹介する。社会福祉士として、生活困窮者に寄り添う支援者として、社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の部会委員として、藤田氏は、日本の「貧困」をどのように見ているだろうか?
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