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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第30回】 2013年6月28日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

廃案となった生活保護法改正案の行方は?
参議院・厚生労働委員会では何が議論されたのか
――政策ウォッチ編・第30回

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ケースワーカーの過重な負担を
どう解決すればよいのか

 現在の生活保護制度を機能させ、就労などの自立を望む当事者を支援するためには、福祉事務所の体制の充実がどうしても必要だ。特に、現場を担うケースワーカーの増員や人員育成が必要だ。このことは、さまざまな立場の人々によって指摘されている。しかし、この1年ほど、福祉事務所の体制強化が制度に組み込まれるとすれば、

 「不正受給摘発のために、福祉事務所に警察OBを配置」

 「不適切な保護費使用を監視するために、福祉事務所のスタッフを増員」

 というような文脈の話ばかりだ。なぜ、このように換骨奪胎されてしまうのだろうか。

藤田孝典氏(NPOほっとプラス)。参考人として、「水際作戦」と「自立支援」という名の就労強制に対する懸念を述べた(「参議院インターネット審議中継」よりキャプチャ)

 6月21日の参議院・厚生労働委員会に、参考人として出席した社会福祉士の藤田孝典氏(NPOほっとプラス代表理事)もまた、生活困窮者を支援する立場から、ケースワーカーの増員の必要性を主張した。

 藤田氏によれば、ケースワーカーの人材育成は、まったく「間に合っていない」そうだ。日常業務での負担が過重である上、ケースワーカーの多くは人事異動でたまたま配属されただけの職員である。1~3年が経過すれば、また次の部署へと異動するため、経験を蓄積してゆくことができない。厚労省は監査・指導・研修などで対策しているが、ニーズに対して人材育成が追いついていない。水際作戦の原因の一つは、福祉事務所の窓口を訪れた生活困窮者の「話を聞く」余裕すらないケースワーカーが、話を聞かずに追い返してしまうことにもあるという。

 次回は、藤田孝典氏へのインタビューを紹介する。社会福祉士として、生活困窮者に寄り添う支援者として、社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の部会委員として、藤田氏は、日本の「貧困」をどのように見ているだろうか?

<お知らせ>

 本連載に加筆・修正を加えた「生活保護リアル」(日本評論社)が7月3日に刊行予定。既にAmazonで予約注文開始中。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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