2012年10月11日(木)

新エネルギー投資詐欺 カメラがとらえた手口

井上
「風力や太陽光といった今、注目を集める再生可能な自然エネルギーへの投資話を持ちかけ、金をだまし取る新手の詐欺事件の手口が明らかになりました。」


 

大越
「警察庁によりますと、震災があった去年(2011年)は被害は7件、額にしておよそ5000万円。
それが今年(2012年)は、先月(9月)までで、すでに32件、被害額はおよそ9倍の4億4000万円に上っています。」
 

井上
「カメラがとらえた『新エネルギー詐欺』の手口です。」
 

急増“新エネ”投資詐欺 なぜ抜け出せないのか

詐欺の被害にあった、北海道の59歳の女性です。
7月、商社の社員を名乗る男から電話があり、風力発電の施設に投資しないかと持ちかけられました。
勧められるまま、老後の資金として大切にしていた夫の退職金をだまし取られました。

詐欺被害にあった女性
「興味があったのは事実。
風力に対して原子力(事故)があったから、余計に風力がこれから大事なのかと思った。」

 

取材班は、女性から詐欺の手口を聞きながら男から電話がかかってくるのを待っていました。
すると。

「もしもし…。」

男から再び電話がかかってきました。

詐欺被害にあった女性
「キタニシさんですか…。」

詐欺だと怪しむ女性に対し、男は…。

「詐欺ではないから。
こういう時代ですから、オレオレ詐欺もある。
ただ、そういう会社でないところもある。
オレオレ詐欺というのは、こういうちゃんとした会社のまねするんですから。」

男は詐欺ではないと繰り返しますが、金は一切戻ってきていません。
女性はなぜ男の手口から抜け出せなかったのか。

核心:狙われた“新エネ”ブーム

男は、最初の電話から一貫して、風力発電への投資が世界的に注目されているとあおってきました。

詐欺被害にあった女性
「風力ってだめなんだと思っていた。」

「だから日本の企業がやらないで、海外の企業がこうやって来てやる。
日本の企業はお金を出すだけ。
2台ぐらいはできている。」

送られてきたパンフレットは、巧妙に作られていました。
「アジアでの伸びが顕著」。
「原子力などを抜いて最大の電力供給源」など、もっともらしい謳い文句が並べたてられていました。
そして、デンマークに実在する風力発電の企業の代理店をかたって投資をもちかけ、出資すれば、5%から9%の高い利息がつくとうたっています。

完全に話を信じた女性は、300万円を振り込みました。

詐欺被害にあった女性
「“2回目は無理”と言ったけど、むこうは“何口足りない”と言って。」

その2日後には、200万円。
さらに5日後には、135万円。
毎回、違う金融機関を指示され、立て続けに1週間で635万円を振り込みました。
最後の振り込みの翌日、金融機関からの指摘で初めてだまされたと思った女性は、8月、警察に被害を届けました。
電話をしてきた男に、女性は解約を切り出しました。
男は、ただでは解約できないと言い出しました。

「“中途解約金”とあるように結構な金額になる。
280万円かな、中途解約金で消えてしまう。」

女性が納得しないと見ると、解約金を少し減らしてもいいともちかけてきました。

 

「280万円で80万円はうちの会社でかぶるけど、あとの200万円は個人で解約すると。
動いたのだから、責任を持ってもらう。」

詐欺被害にあった女性
「警察に行きました。
詐欺だって警察が言っていた。」

「うちの会社は微動だにしませんし、そんなこと問題にしていないじゃないですか。」

警察に届けたと言っても、男は全くひるみませんでした。

詐欺被害にあった女性
「300万から始まって200万、135万、やめてしまえってうちのだんなが言っている。
うちのだんなが中卒で働いてたけど退職して、退職金なんだよねそれ。」

「もったいないよね。」

詐欺被害にあった女性
「お金出すの無理、はっきり言って全然無理。」

この日を最後に、男と連絡を取ることはできなくなりました。
取材班は、パンフレットに書かれた会社の住所に行ってみました。

「すいませーん」。

会社があるはずのビルの一室はすでに空き部屋に。
民間の私書箱業者が入っていましたが、8月いっぱいで退去していました。
男は、郵便物や電話を転送するサービスを悪用して、詐欺を行ったとみられています。
増え続ける、新エネルギーへの投資をかたった詐欺。
手口をよく知る人物に話を聞くことができました。

詐欺の手口をよく知る人物
「最近のはやりは太陽光発電とかエコ関係。
原発にかわるエネルギーがキーワード。
エコとかいう言葉を使うとこれからの商売だともうかると、そこに金を投資します。」

北海道の女性に送られてきたパンフレット。
表紙の風力発電装置は、九州大学の研究グループのイラストを無断で掲載したものでした。
こうした画像をネット上から手に入れ、パンフレットなどを作っているといいます。

詐欺の手口をよく知る人物
「しっかりしたホームページと会社案内、名刺はちゃんとしたものを作る。
特に地方の人はわからないので、パンフレット見て“すごい”と。
ホームページ見たら“もっとすごい”と信用して買ってしまうパターンが多い。」

巧妙化している新たな詐欺の手口。
新エネルギーブームのなか、危険が広がり続けています。

「もうゴール見えてるから、次で最後なんだからやってみない、ちゃんと。」

大越
「なぜだまされるのかと思われるかもしれないが、取材に当たった記者によると、男は何度も電話で話しをしてきて互いのプライベートのことまでも打ち明けるようになって、警戒心が薄れたところで具体的な金額などを切り出してきた。」

井上
「まさか自分がだまされることはないだろうとたかをくくらずに、十分注意してください。」

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