10年3月24日・社会新報(10年3月24日号)
派遣法改正 事前面接解禁削除させる
与党3党党首級による基本政策閣僚委員会が17日、開かれ、専門26業務などを除く登録型派遣と常用型を除く製造業派遣の禁止を柱とする労働者派遣法改正案に合意した。社民党の福島みずほ党首の要求(国民新党もこれに同調)で、期間を定めずに雇用する労働者に対する派遣先企業の「事前面接」の解禁は削除されることが決まった。
同日の記者会見で福島党首は「今回の法案は規制を強化する法案だから規制緩和の条文があることはおかしい」と述べ、旧政権法案に入っていた事前面接解禁の撤回は労働者保護の立場から当然だと指摘。事前面接について@雇用者責任を負わない派遣先が労働者の採用に介入し選別することは労働者派遣の基本構造をおかしくするA特に女性労働者が容姿で差別されるなどのおそれがある と問題点を挙げ、政治主導・国民主導の立場で「ここまで粘ってよかった」とした。
JR問題で4党解決案提示
社民、民主、国民新の与党3党と野党の公明党の4党代表者は18日、国土交通省に前原誠司国交相を訪ね、JR不採用問題の政治解決に向けた4党案を申し入れた。和解金は1人平均2406万5000円。政治的解決に伴い裁判上も和解する。
申し入れには社民党から又市征治副党首が出席。同省政務3役として辻元清美副大臣らも同席した。概要は以下のとおり。
【JR不採用問題4党解決案(概要)】
社民、民主、国民新、公明4党のJR不採用1047名問題解決案の概要は以下のとおり。
@和解金 1人平均2406万5000円。内訳は争議の解決金相当分として(旧国鉄の不法行為を認めた)鉄建公団訴訟高裁判決の慰謝料550万円と遅滞金利分、プラス(年金回復分を念頭に置いた)「雇用救済金」の1224万円。
A雇用問題 JR北海道、九州等を中心に200名くらいの採用を要請。北海道、九州、四国、貨物の各社については採用支援のために雇用調整助成金に当たるような「雇用助成金」を3年間分支払う。また被解雇者が運営する「事業体への支援金」10億円を提供する。
B政治解決に当たって @、Aは4党が人道上不可欠と判断した結論であり完全実施による政治解決を要請。雇用問題はJR各社においても人道的見地から全面受け入れを要請。@の「和解金」とAの「事業体支援金」は「解決金」として一括支払いが望ましい。和解金等は鉄道建設・運輸機構の特例業務として支出。以上の政治的合意に基づき裁判上の和解を行ない、すべての訴訟を取り下げる。
国労闘争団など原告団への支払い総額は228億9900万円プラス雇用助成金に当たる額となる。
温暖化防止 原発は「切り札」にあらず
政府は12日、日本の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減するなどの目標を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を閣議決定した。
この目標設定には「すべての主要な国が、公平かつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築するとともに、温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をしたと認められる場合」との前提条件が付いた。国内排出量取引制度については、国が総量の上限を定め(企業ごとに割り当て)る「総量規制」(キャップ・アンド・トレード)を「基本としつつ」、生産量当たりの排出量に上限を設ける「原単位方式」も「検討を行なう」とした。
原子力については「安全の確保を旨として、国民の理解と信頼を得て、推進するものとする」とされた。
同日の閣議後会見で福島みずほ消費者・少子化担当相(社民党党首)は、原子力の「推進」を「行なう」に改めるなどするよう要求してきた経過に触れつつ、「社民党が原子力推進で納得ということではない」と指摘。党の立場は「温暖化対策に原子力が切り札になるという考え方はおかしい」「むしろ自然エネルギーの促進に大いに力を入れるべき」というものだとし、原発の新増設についても「社民党としては新たな原発の建設に反対。全く変わっていない」とキッパリ。
改正貸金業法の完全施行訴える
■近藤正道議員、多重債務問題に関連して 社民党の近藤正道議員議員は18日の予算委員会で、雇用非正規化で不安を抱え、企業内で熟練を積む機会もない労働者が増えたとして「ディーセント・ワーク(人間らしい労働)の実現に向けて大きく一歩を踏み出すべき。派遣法改正もその一歩だ」と強調。党の主張で閣議決定直前に労働者派遣法改正案から派遣先による事前面接解禁が削除されたことへの見解をただした。
鳩山由紀夫首相は「最終的にできあがった派遣法の改正でない。まずは第一歩」と答弁。さらに、非正規雇用の増大が「この国の体力を奪ってしまったのではないか」との認識を示し、引き続き働き方を見直すことに前向きの姿勢を見せた。
中小企業減税をなぜ見送った
■渕上貞雄議員、10年度税制改正で 社民党の渕上貞雄参議院議員は12日の予算委員会で、民主党が総選挙マニフェストに盛り込んだ中小企業への法人税率軽減が10年度税制改正で実施されなかったことについて「今回なぜ中小企業の法人税引き下げを見送ったのか。今後はどう対応するのか」とただした。峰崎直樹財務副大臣は、減税をするときは課税ベースを広げるのが税制改正の基本方針だとした上で、中小企業に対する租税特別措置見直しについて「昨年秋にはほとんど手をつけていない。景気上昇に伴って課税ベースを広げることで中小企業の税率を下げることができるのではないか」と答弁した。
渕上議員はさらに、整備新幹線着工が並行在来線のJRからの経営分離への沿線自治体の同意を条件としていることに関し、JR経営分離の基本スキーム見直しを含め、経営難で存続が苦しい在来線への国やJRの支援策拡充を求めた。
オスプレイ配備は現代の密約か
■山内徳信議員、日米密約問題に関連し 山内徳信参議院議員は15日の予算委員会で、日米密約に絡み「まだ闇の中に静かに潜っているものもある」とした上で、(辺野古の代替施設アセスメント文書に登場しないなど)日本政府が従来認めてこなかった米軍普天間基地所属ヘリを危険性が指摘される垂直離着陸機MV22オスプレイに代替更新する計画について「これは現代の密約ではないか」とただした。
北沢俊美防衛相は、「2010米会計年度海兵隊航空機計画」に沖縄配備が明記されていることを認めた上で「これに基づいて外交的あるいは軍事的に日本側に要請してきた事実はない」としつつ、「やがてそういうことが行なわれる可能性が高い」との認識を示した。
山内議員は、有事の際の沖縄への核再持ち込み密約についても議論を交わした。69年日米首脳会談の署名入り「合意議事録」が佐藤栄作元首相宅に私蔵されていたことが明らかになったにもかかわらず、外務省有識者委が政府に引き継がれていないなどとして「必ずしも密約とは言えない」と結論づけたことに対し、山内議員は「これこそ大変な密約。国民に知らせてはいけないということだ」と指摘した(16日の外交防衛委員会)。
この問題で岡田克也外相は「核抜き(返還)と言った以上、結果的に沖縄の人たちを欺くことになった」と認めた(15日の予算委)。
グアムなど国外移設求める緊急提言
■平野官房長官に 社民党の重野安正幹事長、山内徳信国際担当常任幹事、吉泉秀男常幹は18日、首相官邸に平野博文官房長官を訪ね、鳩山首相、平野官房長官にあてた福島党首名の「普天間飛行場のグアム、北マリアナ諸島(サイパン、テニアン)への移設を求める緊急提言」を手渡した。沖縄県内移設案は県民に再び苦悩と犠牲を押しつけるものだとし、@県民の負担軽減を前提に出発した鳩山政権の政治的責任を果たすことA候補地から県内を除外し、グアム、北マリアナ移設を求めて対米交渉を始めることB基本政策閣僚委員会での政府案決定の前に連立3党の合意形成のための議論・検討の機会を確保すること――を要請した。
「環境直接支払い」の実現に意欲
■農業政策を考える集会で中島隆利副幹事長 新たな「食料・農業・農村基本計画」の閣議決定を前に「これからの農業政策を考える生産者・消費者集会」が11日、参院議員会館で開かれ、約120人が参加した。全日農など6団体でつくる全国農民組織連絡会議とフォーラム平和・人権・環境の主催。
同計画の見直しは5年ぶり。今次改定の農水省素案では20年度の食料自給率目標を50%(カロリーベース。現計画は45%)へ引き上げるとともに、11年度からの戸別所得補償制度の本格実施検討を明記。また、一定規模以上の農家へ農地を集積する現行の大規模化路線も転換し、小規模を含め多様な農業者の育成を打ち出している。
集会には社民党の中島隆利副幹事長、近藤正道参院議員も出席。中島副幹事長は今、特に中山間地域の小規模農家の経営基盤確立が問われているとし、「こうした条件不利地域には有機農業や減農薬で直接所得補償の施策上乗せに取り組みたい」と「環境直接支払い制度」の実現に意欲を示した。
与党間の政策調整機関設置申し入れ
■社民、国民新の幹事長 社民党の重野幹事長、国民新党の自見庄三郎幹事長は15日、国会内で民主党の高嶋良充筆頭副幹事長と会い、連立与党間の政策調整機関の設置を申し入れた。子ども手当、高校無償化の両法案の修正合意が、与党間協議と合意を踏まえた上で行なわれなかったという経過を受けたもの。
国会同意人事案の与党調整ルールを
■会見で重野幹事長 政府が衆院議院運営委員会に内示した国会同意人事案件の原子力安全委員会委員案の中に強固な原発推進派として知られる人物が含まれていた問題で、社民党の重野安正幹事長は18日の記者会見で「(人事案が閣議決定され国会に提出されれば)決まったものを認めるか認めないかしか選択肢がない。これではよくないのではないか」と述べ、政府案を固める前の段階で連立与党に打診し調整する国会同意人事案決定の新たなルール作りが必要との認識を示した。
(社会新報3月24日号より)