特集ワイド:憲法よ ノーベル賞学者・益川敏英さん

毎日新聞 2013年06月27日 東京夕刊

ノーベル賞学者の益川敏英さん=京都市北区の京都産業大学で2013年6月24日、後藤由耶撮影
ノーベル賞学者の益川敏英さん=京都市北区の京都産業大学で2013年6月24日、後藤由耶撮影

 あれから70年近い歳月が流れる。この春、またもや北朝鮮はミサイル発射の構えをみせ、東京・市ケ谷の防衛省のグラウンドなどに地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」が展開された。尖閣諸島をめぐっては中国の監視船が東シナ海をうろうろする。いつになく日本周辺がキナ臭い。あわただしい憲法改正の流れはこうした情勢が後押ししてもいる。そんなことを口にしたら、しばしの沈黙があって、ニコニコおっちゃん先生の顔がこわばった。「戦争、キライです。反対じゃなくて、キライです。生理的にキライです」。そして静かに続けた。

 「プロイセンの将軍、クラウゼビッツの『戦争論』にあるでしょ。戦争は外交の延長だと。その通りですよ。国と国の利害はぶつかりあう、どの時代だってね。でも、僕は思う。自国の国民まで犠牲にして守らなきゃいけない国益なんてものがどこにあるんですか。愚かな戦争などせずとも、もめごとの解決の道は必ずある。譲歩できない利益なんてない。戦争は外交で防げる。いま必要なのは戦争を防ぐ知恵でしょ。それなのに憲法改正? 改憲論者は、つまるところ、交戦権が欲しいんですよ。憲法9条なんて邪魔だというのは、相手から攻撃されなくても、こっちから先に撃ちたい。つまり戦争がしたい。そうとしか思えない。恐ろしいことじゃないですか」

 梅雨の晴れ間、とても気持ちよさそうなのでちょっと外へ。ソファから立ちあがった先生はちっちゃい。身長152センチ。「昔なら5尺。まことに小さいんですなあ」。ゆっくり、ゆっくり、揺れながら歩く。階段は手すりをにぎって、そろり、そろり。キャンパスは京都市北区の高台に広がり、眼下に京の町がのぞめる。「あの安倍(晋三首相)さん、坊ちゃん政治家だからね。自分は安全なところにおって、戦争できると考えているんじゃないの。テレビゲームみたいな感じで。96条の改正から手をつけるようなことを言っていたでしょ。本気ですよ。これまでは、いつかは変えてやるぞってことでしたから。いまがチャンスと踏んでいるんだろう。反対する側も本気にならんといけない」

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