中国首相が銀行に講じたショック療法、90年代の改革手法想起
6月27日(ブルームバーグ):中国の金融システムを動揺させた李克強首相は、1990年代に首相を務めた朱鎔基氏が練り上げた戦略をまねている。それは長期的な利益のために短期的には痛みを強いるものだ。
3月に首相に就任した李氏は新指導部が銀行に信用 拡大の抑制を望んでいるという最も明確なメッセージをこの1週間に送った。これにより短期金融市場の流動性が奪われ、少なくとも過去10年で最も深刻な資金逼迫(ひっぱく)状態に陥った。野村ホールディングスのアナリストは、次の一手には一部の中小金融機関を倒産に追い込む引き締め措置が盛り込まれる可能性があると予想する。
数百万人の従業員を抱える国有企業の規模縮小に踏み切った朱氏の戦略は、10%超の成長率 が数年にわたる中国経済の基礎を築くのに貢献した。今回は資産バブルや不良債権危機を回避するためにより緩やかなペースでの成長に重点を置いており、李首相ら指導部は財政状況が厳しい地方政府や国有銀行からの反発に直面する可能性がある。
中国の米商業会議所の会頭を務め、中国分析の著書で知られるジェームズ・マグレガー氏は「このシステムを改革するにはハンマーが必要だ」と述べ、「中国では法の支配が確立していないため、金融システムから参加者を追い出すのに注意を引くように鈍器を使わざるを得ない。これで注目が集まった」と語った。
痛みを伴う改革中国人民銀行(中央銀行)は今週、短期金融市場を一段と混乱させるような流動性の引き締まりを容認しない意向を示す一方、年初から融資が経済成長を上回るペースで拡大したことを受け、いかなる流動性支援も経済への貢献のために融資を行う銀行に焦点を絞るとした。中国国務院(内閣に相当)は先週、金融システムは経済成長をより良く支えなければならないとの声明を発表。26日の声明では、市場の期待を安定化させるために中国は政策の一貫性と安定性を維持すると表明した。
国営新華社通信は26日夜の論説で、「流動性逼迫を乗り切るには痛みを伴うが、将来の利益のための道を開く」と解説。「より持続可能な経済の恩恵を享受するため、銀行がまず初めに、確かにこれが最後ではないが困難に耐えなければならない」と記した。
米ゴールドマン・サックス・グループの元大中華圏担当会長で、プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社プリマベーラ・キャピタル・グループ創設者の胡祖六(フレッド・フー)氏は、「李、朱両氏は共に改革者だ。投資家は李氏が朱氏のように勇敢で、痛みを伴う改革を断行できるかどうか見定めようとしている」と説明。「朱氏の改革は当時は不人気で、つらいものだったが、最終的には中国経済に多大な恩恵をもたらした」と語った。
原題:Li’s Shock Treatment to China Lenders Evokes Ex-ReformerZhu (1)(抜粋)
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更新日時: 2013/06/27 12:06 JST