【動画】男を銃刀法違反容疑で逮捕 東京・練馬、3児童切りつけ |
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家路につこうと校門を出たばかりの小学生たちが突然、ナイフを持った男に次々と襲われた。東京都練馬区で28日、1年の男児3人が首やひじを切られてけがをした事件。「助けて」。泣き叫び、逃げ惑う子どもたちの声が校庭に響いた。下校を見守っていた男性が男に立ち向かい、被害の拡大を食い止めた。
午後1時40分ごろ。校庭で校長と別れたランドセルの列が外へと伸びていって、間もなくだった。
「ぎゃー」「助けてーっ」
大泉第一小学校の正門を出て左に約20メートル。歩道側に停車していた青い乗用車から男が降り、横断歩道を渡ろうとしていた子どもたちに向かって駆けだした。
手にはナイフ。目撃者によると、「この野郎っ」と怒鳴り、興奮した様子で男児の首を切りつけ、さらに2人目、3人目に刃を向けた。「思いっきり振り回していた。怖かった」。一部始終を見ていた男児(7)は声を震わせた。
うずくまる子、泣き出す子。10人ほどが、クモの子を散らすように逃げ出す。男がさらに追いかけようとしたとき、1人が間に入った。児童の登下校を横断歩道で見守るシルバー人材センターの学童誘導員、広戸勇さん(71)だった。
子どもたちを自らの背の後ろに回し、男には持っていた横断旗を向けて対峙(たいじ)した。その間に騒ぎを聞きつけた教師が、子どもたちを校内に避難させた。男は教師の姿を見ると車に乗り込んだ。
広戸さんは「怖かったけれど、子どもたちを守らなければいけないので、逃げるわけにはいかないと思った。全員命が大丈夫だったことはホッとしているが、けがをさせてしまったことは悔しい」と語った。
学校の説明では、首を切られた2人の子どもはハンカチで止血されて現場にうずくまり、1人は「怖いよー」と泣きじゃくっていたという。「不審者が出たので外に出ないでください」。混乱のなかで、校内放送が流れた。
男の車を追跡したのは、そばに止まっていたダンプカーだった。近くにいた人によると、運転手は「あの車、おかしいから、オレ、追いかけっから」と叫び、現場から走り去ったという。
午後2時すぎ。事件現場から約10キロ離れた埼玉県三芳町に、通報を受けたパトカーのサイレンと警官の叫び声がけたたましく響いた。「車、左よれ、左!」。男の乗用車が止まると、2台のパトカーが前後を挟んだ。
続々と捜査車両が道路を埋める。車から降りた男を数人の警察官が取り囲んだ。近くの商店の女性従業員(53)は「両脇を警察官に抱えられるような感じだった。暴れたり、怒鳴ったりする様子はなく、おとなしくパトカーに乗った」。
男はパトカーの後部座席で話を聞かれた。自分の車とを何度か行き来した後、警察署に連行された。男の母親の話では、3年ほど前に化粧品の営業の仕事を辞めてから無職。この日は「旅行に行く」と言って外出したという。母親は「本当に息子がしたのであれば、世間をお騒がせして申し訳ない」と語った。
大泉第一小には事件後、子どもの安否を気遣う保護者たちが次々に駆けつけた。主婦の小沢恵美子さん(45)は「まさかという思い。震えた」。息子で小5の和季くん(11)は「すごい怖かった。まだ不安な気持ちでいっぱい」と話した。
■「見守り」も限界、現場に戸惑い
「不審者がいたので、外に出ないで!」。大泉第一小学校は、校内放送で全児童に呼びかける一方、保護者全員に緊急メールを一斉送信した。「緊急事態です。お迎えに来て下さい」
不審者が校内に侵入した場合のマニュアルはあり、同校では、入り口を正門1カ所に絞るなどの対策をしてきた。1年生は集団下校。通学路では、区が委託したシルバー人材センターの学童誘導員が下校を見守っていた。
それでも、不測の事態は起きた。
小1男児の母親(40)は「毎日、学校に迎えに行けないし、先生に『送って下さい』とは頼めない。どうすればいいのか」。区教委の担当者も「見守り要員を増やしてとの声もあるが、どれだけ増やせば事件を防げるのか」と戸惑う。
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朝日新聞社会部