いま、

今まさにあの方はわたし以外の誰かを愛でてる。

今、この瞬間も
わたしじゃない「誰か」は
あの方の手できれいに手入れされた縄で
自身の体を拘束されて満たされつつあるの。



どうして彼は
こんなにもむごいことをするんだろう。




かならず苦しくなる雌がいるって、
そんなこと知らなかったなんて言わせませんよ。


それとも貴方はあえて
わたしや、わたしじゃない他の雌がこういう気持ちになることを知った上で
今まさに自分たち以外を愛でている場面を
リアルタイムで伝えているんでしょうか。

例えそれが
今まさに愛でられている「誰か」の見られたい、という欲求を満たすための行為であっても

それがどんなに悲しくて、悔しくて、孤独なことか。

貴方に理解できるはずがありませんね。










本当に、どこまで意地が悪い。






あの部屋
あの明かり
あの縄
あのパイプのベッド
あのクッション
あの床
あの天井
あのタオル
あの椅子

・・・



ああもう

わたしも


ついこの前に

本当に本当に、ついこの前に

わたしもあの同じ場所で彼に拘束してもらったの。




あの瞬間だけはわたしは貴方のモノになれていたのに。

今この瞬間だけは少なくとも「彼女」が貴方のモノなんですね。




それをこんなに大胆に、
あなたの少し高調した声と一緒にこの目で目の当たりにしちゃうなんて。

わたしが来ること、
わたし以外の雌たちが来ることをわかってしているなんて、




貴方は本当に意地が悪いです。





これからどんなふうに「彼女」を愛でて行くんだろう。
どんなふうに愛でてもらえるんだろう。


羨ましい。
憎たらしい。




こんなふうになってる雌はわたし以外に何人いるんだろう。
あの方の「2人以上10人未満」のペットや奴隷のうち、
何人の女の子が、切なくなっているのか。。




もう画面なんて見られませんよ。


「コメントしろ」?


ふざけないでくださいよ。





そんなに楽しそうな声でわたしを名指しですか?

わたしのことなんだと思ってるんでしょう。


わたしなんて、たった今
貴方にいつ触ってもらえるかもわからない肌を
手入れしているところだったんですよ。

貴方に少しでも長い時間触れていてもらえるように
少しでも少しでも綺麗できめの細かい肌にしようと、
貴方の皮膚に吸いついて離れたくなくすような魅力的な肌になりたい、って。



それを他の「誰か」を愛でている貴方を見ながらやって、
しかもコメントをよこせと?


わたしはまだこれからやることがたくさんあるんです。
貴方がほめてくれた黒髪を手入れして、
貴方が絞れと言った脂肪を燃やすマッサージをして、
クリームを塗って・・・


貴方に「コメントをよこせ」と言われて
よこさないわけがないでしょう?

わかっているくせに。







ああもう、

もう涙しか出てこない。
せっかくの手入れが台無しですよ。
一体どうしてくれるんでしょうか。

明日のわたしのまぶたがどんなに腫れて醜くなっても
貴方はおかまいなしでしょうね。







……ごめんなさい。


こんなこと、貴方をお慕いする雌なら
当然のことでしょうね。






もう








絶対に感じることがないだろうって思った、
源氏物語の姫君の切なくて、でもどこか儚げで、美しいように見えた心を
そういう気持ちを今味わうことになるなんて

綺麗だって思っていた状態にわたし自身が陥るなんて

皮肉にもほどがある。




だけど実際は「儚さ」や「美しさ」なんて綺麗なものじゃありませんね。
どちらかというと
「悔しさ」「恨み」「嫉妬」「憎しみ」。

自分で言ってて痛々しい。

だけどそこには「愛しさ」だって、確実にしっかりと存在してるんです。






だって



こんなふうな状況でも、こんな状況だからこそかな。

わたしは彼に名前を言ってもらえただけで
うれしくてうれしくてもう

涙が止まらなくなるんですよ。





タチの悪い悪戯ですか?


これが多頭飼いだって、わたしに教えてくれてるつもりですか?
きっと、「わたしに」なんて限定するのでさえおこがましい。
だけど今だけは我儘を通させてくださいね。

分かっていますよそんなこと。
貴方が誰かを愛でていることだってそれが複数いることだって。
それでもどうあがいてもわたしは
貴方から動けないんですからね。



わたしがこんな風になっちゃうの、
貴方は知らないんでしょうか?


どうして、「誰か」を愛でていると、
決定的なモノを見せてくるんですか。
もう何も言い逃れができない事実を目の当たりにさせられたら
わたしどうやって、どこに逃げればいいんでしょうか。




例のS氏からもお聞きの通り、わたしは貴方のことが大好きなんですよ。


わたしが羨ましがるのを知っているくせに、

それなのに







・・・









本当に貴方の悪戯はタチが悪い。