「主従って、そういうものだと思っています。」

「ふうん。」



なにか意味深にうなずいたあの方。


それで、
わたしはペットになった。

ペットにしていただけた。



「今日からお前はペットね。」





すごくうれしくて、もう、快感だった。

自然にため息が出て、声にならない声が出た。
自分でもわかるくらいに濡れていた。


「俺のことを知るたびに、深くなっていくだろう。」



うなずくことしかできないわたしに
あの方は抱きしめてくださって、目元に口づけてくださった。










あの方のおうちに向かったのはいいけど
迷っちゃって、20分くらい遅刻。。。

泣きそうになりながらたどり着いて
それでもあの方はぜんぜんいらだった風じゃなくて
むしろわたしを気遣ってくださった。
ベッドに腰掛けて、ぼうっとTVを見ていて
「何人の女の子がこの光景をみていたんだろう」って考えてしまった。
それがなんだか切なくてすごく寂しくなって。
それでも今だけは、ここはわたしの場所なんだなって思えば
それだけで幸せで。





それから、映画の話。
「私の奴隷になりなさい」っていう映画。
わたしもあの方もみたことがなかったから、
一緒にみた。

あの方はベッドの上で壁によりかかって、わたしはベッドに腰掛けて。

わたしはそれを観ながら感じていて、
あの方の後ろからの視線を感じるたびにからだを震わせてた。




SMの話だけど、M側の気持ちになんとなく感情移入して、
ご主人様に愛でられているのをみると、画面の向こうの壇蜜にさえ嫉妬してた。
嫉妬、ってほどじゃないかな。
とにかくうらやましくて、だけど感じてた。

観終わって、
あの方はわたしを後ろから抱きよせて耳元で言葉をかけてくれた。


映画の感想の話になって、
わたしはあの方のお話をじっときいてた。
「『わからない』をわからないで終わらせないで、自分なりに考える想像力がなきゃね。」


わたしなりに考えようとしたんだけど
それよりも感じてしまった体ではなにも浮かんでこなかった。

それに気づいていたのかは分からないけど、
奉仕するように促されて、わたしはそれだけで幸せで
涙が出てきそうになるのを、じいっと耐えた。

「言いたいことを言いなさい。」


こう仰ったあの方が、映画のご主人様に少し重なったように見えて
わたしも本物の主従になれたっていう錯覚をして、
なんだか寂しくて嬉しくて、きもちがよかった。






それからふたりで横になって、少しだけ眠った。

あの方の抱き枕みたいになったような感じで、
わたしの足をあの方の足が挟んで、絡めてくれるの。
うとうとして少し目が覚めるたびに、
わたしの体をなでてくれて、それが嬉しくて吐息が漏れる。
あの方の足の指に足の裏を刺激されて
くすぐったいよりも快感の波がふわって来て、
もうびっくりするくらいに感じた。


起きて、服を整えて、
「あの方のSM」を教えていただいた。


Lv.1 変態なかま的な。
Lv.2 ペット 
Lv.3 メイド
Lv.4 奴隷
Lv.5 それ以上

こういうのがあるよっていうのと、
それからさっきの映画のこと。

あの方は「相手に幸せになってほしい」っていう気持ちでも
SMをやってらっしゃるってきいて
なんだかすごく、綺麗だなって思った。

もう他にもいろいろ。



途中でワインが切れちゃったって言ってお店まで買いにふたりで歩いた。
深夜2時ですごく静か。

人とのかかわり方をあまりしらないわたしに
たくさんお話をしてくれた。





おうちについて、あとはわたしのこと。

わたしなら、Lv.4くらいまで行ける気がすると思ってる、だって。
なんだかうれしい。
Lv.4の内容は内緒だけどね。





「お前は、友達はいるの?」

「えっと・・、たぶんいません。」

「無理に作れとは言わないけど、友達を作りなさい。」
「相手のいない世界は何もない。」
「何もないお前の人生をもらったところでそこには何もないからね。」

「…はい。」




こういう会話があって、なんだか

この方にささげる人生だったら、もっときらきらに輝こう、って思えてきた。
この方にこんなにも何もない人生をささげるなんて、
わたしは最低だ。

はじめて友達がほしいって思った。