【伊木緑】経済産業省幹部の立場で知った未公表情報をもとに株を取引したとして、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の罪に問われた同省元審議官の木村雅昭被告(54)=起訴休職中=に対し、東京地裁は28日、懲役1年6カ月執行猶予3年、罰金100万円、追徴金1031万円の有罪判決を言い渡した。執行猶予以外は検察の求刑通りだった。弁護側は即日控訴した。
金子大作裁判長は「職務上知った情報を、私益に用いた」と批判した。
判決によると、木村被告は2009年3月、半導体大手NECエレクトロニクス(現・ルネサスエレクトロニクス)の合併情報を知り、公表前の4月下旬に5千株を購入。また、業界大手のエルピーダメモリが公的資金による増資を決定したとの情報を同年5月11日までに知り、同月15、18日に計3千株を購入した。
NECエレ株では28万円、エルピーダ株では207万円の売却益を得た。
エルピーダについては、公的資金による支援を盛り込んだ「改正産業活力再生特別措置法」の適用準備を被告自身が担っていた。
弁護側は、09年2月にエルピーダは「改正法が成立した場合、資本増強も選択肢の一つとして検討したい」と表明▽NECエレクトロニクスの合併情報も4月中旬に報道されていた――と指摘。インサイダー取引となる「重要な事実が公表される前の株取引」でなく、無罪だと訴えた。
だが地裁は、2月時点でエルピーダの増資は選択肢の一つに過ぎず、重要な事実の公表とは言えない▽合併報道は、会社の公表とは違う――などと退けた。
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朝日新聞社会部