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【発明の名称】 散骨装置及び該装置を用いた葬儀方法
【発明者】 【氏名】細谷 文夫
【氏名】瀧塚 道則
【氏名】武笠 文吉
【課題】遺灰等を自然へ回帰させるという価値観ないし死生感に応じ、これを天空中に散布する葬送様式につき、葬儀の一環としてこれを実施可能な散骨装置を提供する。

【解決手段】本発明に係る煙火玉(散骨装置)1は、空中で破裂可能なように割薬2を装填する半球部位1aと故人を偲ばせる遺灰等を装填する半球部位1bとを有する。そして、前記半球部位1bには、蓋部8と、該蓋部8により開閉可能とされた前記遺灰等を装填するための開口部9とが形成されている。また、前記半球部位1aには、前記破裂の際に発光を伴って燃焼し飛跡する火薬玉である星4が配列されている。このような構成により、葬儀の現場において、その一環として、遺灰等を煙火玉1に装填することが可能となり、かつその空中散布(自然葬)を実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 空中で破裂可能なように割薬を装填する第一の部位と故人を偲ばせる遺灰等を装填する第二の部位とを有する散骨装置において、前記第二の部位には、前記遺灰等を装填するための開口部が形成されていることを特徴とする散骨装置。
【請求項2】 空中で破裂可能なように割薬を装填する第一の部位と故人を偲ばせる遺灰等を装填する第二の部位とを有する散骨装置において、前記第二の部位には、蓋部と、該蓋部により開閉可能とされた前記遺灰等を装填するための開口部とが形成されていることを特徴とする散骨装置。
【請求項3】 前記第一の部位には、前記破裂の際に発色を伴って燃焼し飛跡する星が配列されていることを特徴とする請求項1又は2記載の散骨装置。
【請求項4】 前記第一の部位及び前記第二の部位はその形状が半球であって、これら第一の部位及び第二の部位の両部位を覆う球形状の外殻を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の散骨装置。
【請求項5】 前記第一の部位及び前記第二の部位はその形状が円柱であって、該円柱の軸線を連結して形成したこれら第一の部位及び第二の部位の両部位を覆う円柱形状の外殻を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の散骨装置。
【請求項6】 故人を偲ばせる遺灰等を装填する部位を有する散骨装置において、前記部位には開口部が形成されていることを特徴とする散骨装置。
【請求項7】 前記部位には、発色を伴って燃焼し飛跡する星が配列されていることを特徴とする請求項6記載の散骨装置。
【請求項8】 前記遺灰等は容器に収納され、該容器が前記第二の部位又は前記部位に装填されることを特徴とする請求項1若しくは2又は6のいずれかに記載の散骨装置。
【請求項9】 空中で破裂可能なように割薬を装填する第一の部位と故人を偲ばせる遺灰等を装填する第二の部位とを有し、前記第二の部位には、蓋部と、該蓋部により開閉可能とされた前記遺灰等を装填するための開口部が形成されている散骨装置を用いた葬儀方法であって、故人の火葬をし、該火葬の結果である亡骸の全部又は一部を含んで前記遺灰等を構成した後に、葬儀の一環として、前記遺灰等を前記散骨装置における前記第二の部位に対し、前記開口部を介して装填し、前記遺灰等が装填された前記散骨装置を空中に打ち上げてかつ破裂させ、当該遺灰等を空中で散布することを特徴とする葬儀方法。
【請求項10】 故人を偲ばせる遺灰等を装填する部位を有し、前記部位には開口部が形成されている散骨装置を用いた葬儀方法であって、故人の火葬をし、該火葬の結果である亡骸の全部又は一部を含んで前記遺灰等を構成した後に、葬儀の一環として、前記遺灰等を前記散骨装置における前記部位に対し、前記開口部を介して装填し、前記遺灰等が装填された前記散骨装置を空中に打ち上げて、当該遺灰等を空中で散布することを特徴とする葬儀方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、故人の粉骨又は遺灰等を天空に散布する散骨装置及び該装置を用いた葬儀方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】我が国では一般に、葬儀として、故人は火葬された後その遺骨ないし亡骸が骨壷に収められ、寺社に設けられた墓地に埋葬されることが行われている。これは、火葬により死者を天空へと昇天させるとともに、残された者(遺族)は、残骸であるところの遺骨に対し、墓を標として永遠に故人を供養しかつ敬い続けるという、洋の東西を問わず広く見られる思想ないしは風習に基づくものである。
【0003】しかしながら、水平的(地理的)あるいは垂直的(歴史的)に世界を見渡せば、死者に対する弔いは、実に様々な方法で実施されていることがわかる。例えば、有名なところでは、古代エジプトにおける死者復活の思想に基づく、死体のミイラ化(ミイラ処理)を挙げることができるし、また、現代においても、上記したいわゆる「墓に入る」という、わが国における代表的な風習が唯一のものではなく、死者を川へ投じて海へと送り出す「水葬」、死者を山頂あるいは丘の頂き等に運び死体を鳥に食らわせる「鳥葬」等が現実に行われている。
【0004】そして、現代日本でも個々人における価値観の多様化等が影響して、故人の生前の意志、またそれを実現しようとする遺族の意志により、様々な葬送方式が顕在的に希望されるに至っている。このような流れは、そもそもある者の「死」というものが、本来、その者と残される者の各々にとって、極めて「個人的な事件」であることを鑑みるに、これら各個人の思想が、その収斂ともいえる葬送様式(葬儀方法)に反映され得ることは、考えてみれば当然なことであるともいえよう。また、現実的な観点からは、墓地入手に係る経済的困難、墓地造成に係る自然破壊に対しての配慮等が、このような流れを支持するものとなっている。
【0005】このような様々な価値観等に対応するための葬送様式として、例えば平成11年12月21日発行の読売新聞夕刊の記事にあるように、宇宙葬と自然葬とが紹介されている。そして、前者においては、例えば特開平5−115516号公報「宇宙葬システム」で、後者においては、例えば遺灰等を、主に従来の打上花火に係る技術を利用して空中に散布する自然葬として、特開平10−306999号公報あるいは特開平11−137411号公報で、各々公開公報による開示がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記新聞あるいは特開平5−115516号公報において示されている「宇宙葬」は、確かに、故人の遺灰が宇宙空間を漂うことを生前に思念する当の故人及びその遺族において、ある種の宗教的感情を呼び起こし一定の満足を得さしむることが可能ではあるが、遺灰等を搭載するロケットを宇宙空間に放出する技術が必ずしも「一般的」とはいえないことから、現実において実施されている宇宙葬では、長らく順番待ちを強いられるような状況も考えられ得るし、また現実的には、「実」費用も相応に必要となる。
【0007】また、特開平10−306999号公報あるいは特開平11−137411号公報において開示されている「散骨方法」は、既に記したようにいわゆる「自然葬」にカテゴライズされるものであって、上記した「宇宙葬」に関するような問題点は基本的に生じない。しかし、これらの散骨方法及び散骨のための打上煙火部材あるいは遺灰散骨方法及び装置では、粉骨ないし遺灰は予め煙火部材等内に「入れ込んで」おく必要がある。すなわち、ここに開示されている散骨方法等では、火葬に付された後、葬儀の一環として連続的に空中散布を実施することができず、上記宇宙葬の場合ほどではないにしても、葬儀と空中散布とを実施する間に時間的な隔たりを生じることになる。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遺灰等を自然へ回帰させるという価値観ないし死生感に応じ、当該遺灰等を天空中に散布する葬送様式につき、葬儀の一環としてこれを実施可能な散骨装置及び該装置を用いた葬儀方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために以下の手段をとった。
【0010】すなわち、請求項1記載の散骨装置は、空中で破裂可能なように割薬を装填する第一の部位と故人を偲ばせる遺灰等を装填する第二の部位とを有する散骨装置において、前記第二の部位には、前記遺灰等を装填するための開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】また、請求項2記載の散骨装置は、請求項1記載の同装置と略同様な構成であって、かつ前記第二の部位に、蓋部と、該蓋部により開閉可能とされた前記遺灰等を装填するための開口部とが形成されていることを特徴とするものである。
【0012】請求項3記載の散骨装置は、請求項1又は2記載の同装置において、前記第一の部位に、前記破裂の際に発色を伴って燃焼し飛跡する星が配列されていることを特徴とする。
【0013】請求項4記載の散骨装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の同装置において、前記第一の部位及び前記第二の部位はその形状が半球であって、これら第一の部位及び第二の部位の両部位を覆う球形状の外殻を備えていることを特徴とする。
【0014】請求項5記載の散骨装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の同装置において、前記第一の部位及び前記第二の部位はその形状が円柱であって、該円柱の軸線を連結して形成したこれら第一の部位及び第二の部位の両部位を覆う円柱形状の外殻を備えていることを特徴とする。
【0015】また、請求項6記載の散骨装置は、故人を偲ばせる遺灰等を装填する部位を有する散骨装置において、前記部位には開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】請求項7記載の散骨装置は、請求項6記載の同装置において、前記部位には、発色を伴って燃焼し飛跡する星が配列されていることを特徴とする。
【0017】そして、請求項8記載の散骨装置は、請求項1若しくは2又は6のいずれかに記載の同装置において、前記遺灰等は容器に収納され、該容器が前記第二の部位又は前記部位に装填されることを特徴とする。
【0018】また、請求項9記載の葬儀方法は、空中で破裂可能なように割薬を装填する第一の部位と故人を偲ばせる遺灰等を装填する第二の部位とを有し、前記第二の部位には、蓋部と、該蓋部により開閉可能とされた前記遺灰等を装填するための開口部が形成されている散骨装置を用いた葬儀方法であって、故人の火葬をし、該火葬の結果である亡骸の全部又は一部を含んで前記遺灰等を構成した後に、葬儀の一環として、前記遺灰等を前記散骨装置における前記第二の部位に対し、前記開口部を介して装填し、前記遺灰等が装填された前記散骨装置を空中に打ち上げてかつ破裂させ、当該遺灰等を空中で散布することを特徴とするものである。
【0019】最後に、請求項10記載の葬儀方法は、故人を偲ばせる遺灰等を装填する部位を有し、前記部位には開口部が形成されている散骨装置を用いた葬儀方法であって、故人の火葬をし、該火葬の結果である亡骸の全部又は一部を含んで前記遺灰等を構成した後に、葬儀の一環として、前記遺灰等を前記散骨装置における前記部位に対し、前記開口部を介して装填し、前記遺灰等が装填された前記散骨装置を空中に打ち上げて、当該遺灰等を空中で散布することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る散骨装置である煙火玉1の構成例を断面視した概要図である。煙火玉1は、この図に示すように、その外形が球状とされ、該球状内部が仕切紙Pによって二つの半球部位(第一の部位)1a及び半球部位(第二の部位)1bに仕切られたものとなっている。このうち一方の半球部位1aには、その容積内に主に割薬2が詰められた構造となっており、他方の半球部位1bには、後述するように、主に遺灰等Xが納められるようになっている。
【0021】半球部位1aには、上記割薬2の他、薄紙3、複数の星4が収納されている。割薬2は、煙火玉1の中心に一致し、かつ半球部位1aと相似関係にある半球状に詰められている。この詰め具合は、上記したように、半球部位1aのほぼ全容積を占めるようになされる。薄紙3は、この半球状に詰められた割薬2の外周全面を覆うように設けられている。さらに、星4は、上記薄紙3の外周全面を覆うように複数配列されている。より具体的には、煙火玉1の破裂・爆発の際に、紅、黄、青、その他の様々な発色、発光、及び/又は発煙を生じさせるため、これら各色に対応した薬剤を適宜含ませて構成しておく。ここに、例えば紅色光を発色させるのであれば炭酸ストロンチウム、黄色光であればシュウ酸ナトリウム、青色光であれば硫酸銅等の薬剤を用いればよい。
【0022】そして、外殻5は、上記星4の配列の外周に、かつ前記半球部位1a及び1bの両部位を覆う球形状として設けられている。この外殻5を構成する具体的な材質としては、例えばクラフト紙等を使用すればよい。また、その外周面には、適当な紋様を施しておいてもよい。
【0023】また、半球部位1aにおいては、煙火玉1の軸線に沿いつつ、その中心にほぼ達するよう、導火線6が設けられている。すなわち、導火線6の先端6aは、割薬2内部に埋没するような形となる。なお、当該先端6aには、黒色火薬7を仕込ませておく。この導火線6と上記した割薬2とによる構成が、本発明にいう「空中で破裂可能な」を本実施形態において具現化した構成となる。
【0024】一方、半球部位1bにおいては、図1に示すように、例えば工場出荷の段階では何をも詰めることなく、上記した外殻5によって、その半球状の空間Qが覆われた形となっている。また、この半球部位1bにおいては、前記導火線6を仮想的に延長した直線(つまり軸線)と外殻5とが交わる部分付近、すなわち煙火玉1における一頭頂部付近において、蓋部8が設けられている。これは、例えば煙火玉1における上記したような軸線と垂直に交わる平面が、外殻5を切るときに見られる円形に沿って切り取るような形態として設ければよい。このような場合においては、明らかなように、蓋部8の具体的形態は、図2に示すような「ドーム状」のものとなるとともに、該蓋部8により開閉可能な開口部9のそれは「円形状」となる。無論、本発明においては、蓋部8及び開口部9の形態としてこれ以外の如何なるものを採用することとしてよい(例えば、湾曲した四角状など)。
【0025】上記した構成となる煙火玉1が実際に打ち上げに供される際には、図3に示すように、打上筒100に収められる。打上筒100は、例えばその材質としてステンレス等が利用され、その下方内部に打上用火薬101を納めている。煙火玉1は、この打上用火薬101上に載置される。また、この打上用火薬101にその一端を埋没させ、その他端が打上筒100の上方開口部から引き出される、導火線102が設けられている。
【0026】以下では上記構成となる散骨装置に係る作用及び効果について説明する。本発明においては、上記散骨装置を用いた散骨の儀式を、「葬儀の一環」の流れの中で実現することを特徴とするものであるから、ここでは葬儀の流れに沿った説明を行うこととし、殊に、ここに説明する葬儀は、わが国において一般的な「仏式」を例としたものとする。
【0027】まず、通夜を済ませたあくる日、故人は棺桶に入れられて、火葬場に葬送される。故人はここで荼毘にふされ、遺族及び参列客の宗教的ないし心理的な感情は一つの頂点を迎える。続いて、炉より取り出されし亡骸を、遺族等の各人が箸を使って骨壷へと納骨する。この際、亡骸のうち比較的大きなものは、適当な大きさとなるよう砕かれて「粉骨」となる。
【0028】通常の葬儀方法では納骨を終えた後、参列客に関してはこのまま散会となるが、本実施形態においては、上記した粉骨を含む亡骸の全部又は一部(以下、遺灰等という)を、別途「自然葬」会場へと運ぶのに伴って、参列客の全部又は一部は、当該会場へ場所を移すこととなる。ちなみに、この自然葬を執り行う会場としては、これを例えば山上若しくは海上に設ける等してよいことは勿論であるし、火葬場に近い場所であってかつ安全な場所を確保しておくようにしてもよい。なにより大事なのは、故人の遺志、そして遺族のそれに対する同意等であることは言うまでもない。ただし、会場(つまり、散骨する場所)選びは、「節度を持って行われる」ことが必要ではある(法務省による´91年見解)。
【0029】自然葬会場では、予め前記打上筒100等を所定箇所に設置し、煙火玉1も所定箇所に設置しておく。このとき、煙火玉1は、それに設けられた上記蓋部8を取り除いておくことによって、開口状態としておく。すなわち、半球部位1b内部の半球状空間Qと外部とが連通した状態としておく。
【0030】さて、当該会場へと運ばれた遺灰等は恭しく遺族の前に載置される。遺族は、この遺灰等Xを、図4に示すように、適当な匙10等を用いて、前記煙火玉1の内部、すなわち半球状空間Qへと装填する作業を行う。この装填は、前記蓋8が取り除かれたことによる開口部9を介して行われることは言うまでもない。
【0031】この際、装填する遺灰等の量としては、上記したように、亡骸の「全部又は一部」でよいが、いずれにしても半球状空間Qがすべて遺灰等Xで埋まらない場合には、残余の空間に適当な詰め物(不図示)を装填する。詰め物としては、煙火玉1の打ち上げ及びその破裂に対して影響を及ぼさない不燃物等であればよい。
【0032】遺灰等Xの装填が完了したら、この装填状況を専門家が視認し、かつ必要であれば調整も実施して、その安全性を確認したら、煙火玉1の開口部9に対し蓋部8を取り付け、その接合部位に適当なシールをなす。例えば、アルミ箔テープなどでシールをすればよい。そして、このような作業を施された煙火玉1は打上筒100へと運ばれる。
【0033】後は、周知の花火打上技術に則って、煙火玉1を打ち上げればよい(図3参照)。簡単に説明すると、導火線102の先端に点火せられた火種は、該導火線102に沿って伝わり、打上筒100内の打上用火薬101に着火する。煙火玉1は、この打上用火薬101への着火・爆燃(燃焼)に伴う、打上筒100内における圧力上昇によって、打上筒100上方へと打ち上げられる。また、打上用火薬101への着火と同時に、煙火玉1に設けられた導火線6に火種が点火せられる。
【0034】やがて、煙火玉1が所定の高度に到達した時点で、導火線6の先端6aにおける黒色火薬7に火種が達し、これが割薬2に伝えられて、図5に示すように、煙火玉1は破裂することになる。この際、本実施形態における煙火玉1の破裂においては、当該煙火玉1内部に星4が予め配されていたことにより、該星4の燃焼・飛散が誘発され、該燃焼・飛散は、その星4が有する性質、ないしより具体的には上記した薬剤の相違、に基づく発色を伴ったものとなる。具体的には、例えば、煙火玉1が辿った経路90及び上空で開化した花模様91に関し、金色又は銀色の光等が発色するような構成とすれば、「葬儀」の趣旨により則したものといえるだろう。ただし、本発明は、具体的な「色」について特に限定されるものではない。
【0035】そして言うまでもなく、上記煙火玉1の破裂とともに、遺灰等Xの空中散布も同時に行われることになる。
【0036】遺族及び参列客は、この散骨の儀式に関し、上記火葬時とは別の宗教的ないしは心理的な感情の高まりを覚える。ここに、宗教的ないしは心理的な感情の高まりとは、例えば故人が自然へと帰還することに対する一種のすがすがしさ、あるいは別の観点からすれば、それに対する畏怖でさえもあり得るようなものである(図5参照)。
【0037】そして本実施形態で特に大事なのは、上の説明からも明らかなとおり、このような宗教的ないしは心理的な感情の高まりが、葬儀の流れに沿って達成し得ることにある。換言すれば、当該感情の高まりは、故人が火葬により荼毘に付された時点から長い時間の隔たりをおくことなく、上記散骨儀式が「葬儀の一環として」連続的に実施されることにより、火葬において一つの頂点を迎えた遺族等の感情の起伏の連続線上において、達成し得るのである。このような遺族等における感情の連続は、言ってみれば、故人の尊厳を貴びこれを未来永劫へと葬送する、という「葬儀」本来の機能に関し、それを全うすることができるものであるとも言えよう。
【0038】このように、まず、本実施形態における散骨装置は、葬儀の一環としての散骨儀式の実現を可能とし、また、本実施形態における葬儀方法では、葬儀本来の機能の全う、換言すれば、遺族等の故人に対する感情の断絶等を招くことなく、連続的な葬送の儀式の流れにおいて、故人を自然へと帰還させるという十全なる葬儀の実現を可能とするものである。
【0039】以下では、本発明に係る上記とは別の実施の形態(以下、「第二実施形態」という)について説明する。この第二実施形態において特徴的な点は、上記では、煙火玉1の半球部位1bに対し、直接に遺灰等Xを装填されていたが、これに代えて、遺灰等Xを一旦小容器(容器)に収納し、該小容器を当該半球部位1bに装填する点で異なる。
【0040】ここに、小容器105としては、図6(a)に示すような紙製の小袋105aや、図6(b)に示すような略円筒状の形態となるセイルロイド製カプセル105b等を用いるとよい。また、この小容器105を構成するに適した材質として、一般的に言えば、空中で破砕し燃焼する消滅性を有するものを用いるのが好ましい。
【0041】そして、この第二実施形態の場合においては、上記の実施形態で説明した葬儀方法の進行過程中、自然葬会場で、遺灰等Xを直接に煙火玉1に対し装填していたのに代えて、まず、上記小容器105に対して遺灰等Xを収納し、当該収納済みの小容器105を、煙火玉1の半球部位1bに対し改めて装填するようにすればよい。その他の葬送儀式の式次第は上記と全く同様である。なお、いま述べたことに関連して、遺灰等Xの小容器105への収納は、自然葬会場で行うのではなく、予め火葬場にて執り行うこととしてよい。この場合においては、さらに、この遺灰等X収納済み小容器105を当該火葬場にて煙火玉1に予め装填するような形態としてもよいし、上記した実施形態と同様に、当該装填に関しては自然葬会場で行う形態としてもよい。
【0042】このような第二実施形態においては、特に次のような効果を指摘できる。すなわち、数人分の遺灰等Xを各々別個に収納した小容器105を複数予め用意し、これらを一つの煙火玉1に装填することで、合同葬形式による葬儀を容易に実施することができることになる。
【0043】なお、本発明においては、煙火玉1の構成として、図1に示すようなものに限定されることはない。例えば、図1に示す星4の配列とともに、煙火玉1の内殻側に別の系列となる星4を配列し、星4を複数列設けるような形態等が考えられる。また、煙火玉1の破裂の際には必ずしも発光を伴わせる必要はなく、「煙(発色を伴う煙を含む)のみ」が発生するような構成としてもよい。ここに、前者の星4を配列する(発光を伴う)タイプでは夜の打ち上げにおいて効果的、後者の煙のみを発生するようなタイプでは昼の打ち上げにおいて効果的、ということが言えよう。
【0044】また、これに関連して、本発明にいう「散骨装置」は、上記した球形状の煙火「玉」の形態に限定されるものではなく、これに代わる実施形態(以下、「第三実施形態」という)として、ロケット状、あるいは例えば図7に示すような円柱状形態となる円筒型煙火20を用いてもよい。このような場合においても、当該円筒型煙火20は、図1に示す煙火玉1と同様に、その内部が、適当な火薬21等が収められるとともに導火線22が設けられる円柱部位(第一の部位)20aと遺灰等Xが収められる円柱部位(第二の部位)20bとに、仕切紙23によって仕切られ、かつ、これら円柱部位20a及び円柱部位20bの両部位を覆う円柱状となる外殻24が設けられている。
【0045】また、殊に、円柱部位20bに関しては、葬儀の実施時に遺灰等が収められるよう、何をも詰められていない円柱状空間Rが形成されているとともに、図中下方に示すように、蓋部25が形成されている。この形態における蓋部25は、図8に示すように、支持点25aを有する円形状とされている。
【0046】そして、このような構成となる第三実施形態に係る散骨装置であっても、図3に示した打上筒100等を利用して、上記した実施の形態と全く同様な作用・効果を得ることができることは明らかである。
【0047】さらに、上記図7及び図8に示す実施形態とは別に(以下、「第四実施形態」という)、本発明にいう「散骨装置」として、図9に示すような構成を採用してもよい。この図9において、散骨装置としての半割玉30には、その内面に沿って複数の星4が配列されるとともに、これら配列された星4の上、すなわち、半割玉30が囲う半球状の空間(部位)に、遺灰等Xを収納した小容器105(上記第二実施形態、参照)が載置された構成となるものである。ここに、半割玉30は、クラフト紙等その他何らかの材質により構成されたものであって、遺灰等Xないしは小容器105及び星4に対し、空中への「送り板」31としての作用を有するものとなる。また、この場合においては、半割玉30に係る赤道面が、本発明にいう「開口部」となる(図9中、符号32参照)。なお、送り板31の具体的形態としては、上記半割玉30の他、開口部を有する円筒でも円板でもよい。
【0048】このような構成となる本第四実施形態における散骨装置に係る作用効果は、以下のようなものとなる。すなわち、図9に併せて示すように、遺灰等X及び複数の星4を配置した上記半割玉30は、打上筒100内の打上用火薬101上に載置される。そして、導火線102への点火、打上用火薬101の着火が、上述した実施形態と全く同様に実施されることで、半割玉30は、打上筒100内の圧力上昇によって、上方へと打ち上げられることになる。
【0049】このとき、半割玉30には、図1あるいは図7に示したような導火線6あるいは22は設けられていない。したがって、図5に示すような、所定高度に達した後の破裂といった現象は生じない。ただし、半割玉30内面には、星4が配列されていることにより、結局その打ち上げの様子は、図10に示すようなものとなる。すなわち、半割玉30の打ち上げの瞬間、その直後に星4への着火が行われることになるから、図10に示すように、星4は燃焼しながら、上昇することになる。また、これと同時に、遺灰等Xは、当該星4とともに上昇しつつ、空中への散布も行われることになる。このとき、星4が適切な発色を伴うこととなるのは、上記実施形態で説明したと同様である。
【0050】このような作用を有する本第四実施形態における散骨装置では、上記説明から明らかなように、図1あるいは図7に示した構成となる散骨装置に係る作用とはその趣がかなり異なるものとなる。この場合においては、図10に示されていることからもわかるとおり、いわばより荘厳な形式となる自然葬を執り行なうことが可能であると言えるだろう。
【0051】なお、上記した半割玉30においても、すでに述べたように、発光を伴う星4を必ずしも配列する必要はなく、煙のみを発する構成としてもよいし、また、星4による発光とともに煙の発生を伴う構成としてもよいことは当然である。
【0052】要すれば、本発明における煙火玉1の構成、あるいはより広く遺灰等を空中散布するに供される散骨装置の構成としては、遺灰等を現場で装填することが可能な構造(開口部)を有するものであればよいのであって、破裂の際における、いわば「花火」としての具体的な作用・効果(上記例では発光あり若しくは煙のみ)をどのようなものと想定するか、又はその装置形状(上記例では玉若しくは円柱又は半割玉)をどのようなものとするか、等は基本的に自由である。また、打上筒100に対する点火方法も様々な形態を用いてよい。例えば導火線102に電気的に点火する形態としてよい。
【0053】さらに上記では、遺灰等として、もっぱら故人の火葬後における亡骸がこれに該当するものとしていたが、場合によっては、生前、当該故人が愛用していた物等を火葬時に同時に焼いたもの、あるいは当該愛用していた物が小さいものであればそのものを、散骨装置への装填の際に加えるようにしてよい。要すれば、空中散布されるものは、「故人を偲ばせる」遺品等であればよい。なお、この点についても、故人の遺志及び遺族の意思が最重要視されるべきことは言うまでもない。本発明にいう「故人を偲ばせる遺灰等」、特にここに用いられている「等」なる文言は、上記したような事情を含む概念として考慮されなければならない。
【0054】また、上記実施形態では、葬儀の形式を「仏式」に則って説明したが、本発明は、いかなる宗教形式の葬儀に対しても適用することができる。もっとも、本発明における遺灰等の空中散布は一般に「自然葬」に属し、ある意味において「無宗教的」とも言えるから、どのような形式の葬儀であっても、本質的に対応可能であるといえるだろう。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の散骨装置及び葬儀方法によれば、散骨の儀式を葬儀の一環として連続的に実施することができるから、従来のように、葬儀とは別個に、あるいは比較的長期となる時間的間隔をおいて、改めて宇宙葬ないし自然葬を実施するといった事態は除去され、葬儀本来の機能の全う、換言すれば、遺族等の故人に対する感情の断絶等を招くことなく、連続的な葬送の儀式の流れにおいて、故人を自然へと帰還させるという十全なる葬送儀式の実現が可能となる。
【0056】また、上記遺灰等を容器へと収納する場合には、数人分の遺灰等を各々別個に収納した容器を、さらに一つの散骨装置に装填することで、一個人の葬儀だけではなく、合同葬形式による上記同様な自然葬を執り行うことが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000173429
【氏名又は名称】細谷火工株式会社
【識別番号】397043145
【氏名又は名称】株式会社日本福祉葬祭
【識別番号】500103144
【氏名又は名称】栗原 格
【識別番号】500106385
【氏名又は名称】村井 和郎
【出願日】 平成12年3月6日(2000.3.6)
【代理人】 【識別番号】100081411
【弁理士】
【氏名又は名称】三澤 正義
【公開番号】 特開2001−245940(P2001−245940A)
【公開日】 平成13年9月11日(2001.9.11)
【出願番号】 特願2000−60749(P2000−60749)