【北京】米フロリダ州に本拠を置く医療器具メーカー、スペシャルティ・メディカル・サプライズ(SMS)の共同創業者チップ・スターンズ氏(42)は先週末の21日から中国の北京郊外にある同社工場の幹部室に閉じ込められているという。本人が明らかにした。同氏によると、全従業員110人のうち約80人がドアをふさいで門に施錠し、退職手当が支給されるまでは同氏を解放しないと述べているという。
スターンズ氏は「彼らが分かっていないのは、彼らが仕事を失うわけではないということだ」と述べた。同氏によると、製造の一部をインドに移管するという同氏の意向を従業員が誤解し、工場全体を閉鎖するつもりだと信じ込んでいるという。
同氏は、築10年の工場の窓の柵越しに取材に応じ、疲労困憊した姿で申し訳ないと述べた。同工場では滅菌アルコールパッドや糖尿病の検査器具を製造している。同氏によると、監禁当初の数日間は夜間に従業員から戦争捕虜のような扱いを受けた。耳障りな音を出されたり、目にまぶしい光を当てられたりして、睡眠を妨害された。しかし、従業員は銃などを持っておらず、身体的な危害は一切加えられていないという。
同氏は「うわさはすぐに広まる」と話した上で、同社は北京市内北東部の懐柔区にあるこの工場の操業を続けるつもりで、アルコールパッドの製造を続けるために100人以上の従業員が必要だと強調した。糖尿病の検査器具の製造拠点はインドのムンバイに移転する計画だという。同氏は「中国に来て10年たつが、このようなことが起こるとは思ってもみなかった」と話した。
工場敷地内の従業員たちはコメントを拒否し、施錠された門の内側から、メディアとは話したくないと答えた。しかし、彼らはスターンズ氏が窓越しにメディアと話すのを妨害していない。
地元の公安当局、つまり警察の広報担当者は、当局が問題解決に向けて既に動いていると述べ、両者が交渉するようにし、スターンズ氏に食事が与えられ、安全が確保されるようにしていると話した。フロリダ州コーラルスプリングスにあるSMSの電話に出た人物は、同社は状況を「十分過ぎるほどに承知している」と述べたが、それ以上コメントしなかった。スターンズ氏の軟禁については24日にAP通信が報じた。
中国では労働紛争がかなり頻繁に起こっており、その理由は個々の状況によって異なる。どのくらいの頻度で企業幹部が監禁されているのかは不明。しかし、中国では概して、成長鈍化への懸念が強まるにつれ、労働紛争が増加していると言える。労働団体の「中国労工通報(China Labour Bulletin)」は今月、2013年1-4月に中国で発生した労働紛争の数がストライキを含めて201件に上り、前年同期とほぼ同数だったことを明らかにしている。
外国企業も決して例外でなく、中国の巨大市場と能力ある労働者の確保が期待される一方、進出リスクも増大している。3年前には、ホンダが利用していた中国南部の部品工場の従業員がストライキを起こし、生産に影響が出た。
北京郊外の工業地域にあるSMSの工場を訪れると、工場の正門は施錠され、乗用車でふさがれていた。付近には数人の従業員が集まっていた。スターンズ氏は「あのフェンスを越え、監視している連中を振り切るだけで、わたしは自由になれるのだが」と話した。同氏は、誰かがはしごを持ってきてくれれば、窓を開けて、出られると付け加えた。
同氏によると、当局者が1日3回温かい食事を提供してくれているが、その大半が「General Tso's Chicken(左宗雞=鶏の唐揚げに甘辛のソースをからめたもの)」だという。また、同氏によれば、一部の地元当局者と労働者団体が、同氏の読めない中国語で書かれた契約書への署名を強要し、労働者の要求に応えるよう求めた。同氏は、労働者の要求に応じて全書類に署名することまではしていないと言い、そうすることで会社を倒産させてしまう可能性を恐れていると話した。
スターンズ氏はこの週末に北京の米国大使館に電話で助けを求めたと述べた。これは、緊張が高まっており、中国公安当局が同氏を工場敷地から連れ出そうとしている気配がないためだという。同氏は「残念なことに、これは民事上の紛争であり、わたしには待つ以外にできることがほとんどない」と述べた。同氏は時間がたつにつれ、紛争解決がより容易になるとみているという。現時点で米国大使館のコメントは得られていない。
同氏によると、従業員の1人が23日夜、床の上に寝なくても良いようにと簡易ベッドを持ってきてくれた。
同氏は自らの従業員に軟禁されているものの、中国での業務を続ける意向を示している。たとえオフィスでの軟禁生活があと数週間続いたとしてもだという。同氏は「この工場を建設した時に、この部屋にトイレを設置しておいて良かった」と話した。
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