論点:生活保護とギャンブル

毎日新聞 2013年05月17日 東京朝刊

 支給を惜しむ行財政改革としてやっているのではないことも言明しておきたい。財政健全化の4指標は極めて良好だ。要保護者の情報が寄せられ、結果的に受給者が増えても構わない。受給の適正化が進めば、生活保護を恥と思わず、堂々と受けられる。

 秘匿されているはずの受給者の情報提供を求める矛盾も指摘されるが、地域の特性を知らない批判だ。誰が病気だとか離婚したとか建前上知らないことをみんな知っている。提供された情報は個人で判断することはなく、専門知識を持った適正化協議会という組織で共有する。受給の即停止はあり得ない。自立を支援する指導を強化するということだ。

 施行後、要保護者の情報が早速2件寄せられた。不適切な受給者の情報の件数は、数字が独り歩きする恐れがあるので現段階ではノーコメント。情報は施行から3カ月をめどに分析し、整理したい。

 憲法違反や人権侵害と言うなら提訴してもらえばいい。法令に反してならないのは当然で、厚生労働省や県、顧問弁護団に違反はないと確認している。【聞き手・姜弘修】

 ◇まずは自立支援重視を−−道中隆・関西国際大教授

 100%税金の生活保護費がパチンコや飲酒に浪費されることに「許せない」という市民感情が起きることは理解できるし、保護費の適正な使い方に導こうという小野市の姿勢も評価できるが、問題はその方法だ。この条例は、不適切な消費と、犯罪である不正受給という次元の異なる問題を混同させ、受給者に対するスティグマ(差別や偏見)を助長しかねない。

 条例を制定する前に、不正受給や不適切な消費の客観的データを共有して議論するというプロセスが必要だった。指導困難なケースが頻発しているのであればともかく、具体的になければ条例にする必要性がない。そういう事例があったとしても小野市の規模であれば、ケースワーカーによる生活指導などの支援で十分対応できる。

 生活保護費は厳しい審査を経て支給され、使途は原則自由だ。不適切な消費というモラルの問題は条例で規制する対象になじまない。情報提供を市民の責務としたことにも「市民が市民を監視するのか」と戸惑う人が多いと思う。実効性に疑問を感じる。

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

週刊エコノミスト

週刊エコノミスト

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む