生活保護申請訴訟:車保有で却下、違法 障害者の訴え認める 枚方市に賠償命令−−大阪地裁判決
毎日新聞 2013年04月20日 大阪朝刊
障害で歩行が困難なのに、車の所有を理由に生活保護申請を却下したのは違法として、大阪府枚方市の佐藤キヨ子さん(73)が却下処分の取り消しと約280万円の損害賠償を同市に求めた訴訟の判決が19日、大阪地裁であった。山田明裁判長は処分の違法性を認めて却下処分を取り消し、市に約170万円の支払いを命じた。
生活保護を受ける障害者に車の所有が認められるには、車以外の通院が極めて困難であるなど厚生労働省が示した要件を満たす必要があり、佐藤さんが該当するかが争われた。
佐藤さんは生まれつき股関節に障害があり、1人暮らし。判決は、毎月通院していた佐藤さんについて「歩行や階段の上り下りが困難で、電車やバスでの外出は著しく困難だった」と指摘。市は主治医らに聞き取りして状況を認識していたのに、十分な検討をしなかったと過失を認定した。車の利用目的にも言及し、「車の保有が認められた場合、日常生活での利用も当然認められるべきだ」と述べた。
判決によると、佐藤さんは2006年11月から生活保護を受けていたが、車の所有を理由に07年5月に保護を打ち切られ、09年4月の再申請も却下された。同6月から通院回数の増加などを理由に受給が認められた。
判決後、大阪市内で記者会見した佐藤さんは「これで気兼ねなく友達に会いに行ける。足が痛いのを忘れるくらい、うれしい」と話した。市は「判決内容を精査し対応したい」としている。【渋江千春】