無届け宿泊施設:劣悪環境 さいたま市が放置
毎日新聞 2013年04月16日 02時30分(最終更新 04月16日 04時21分)
さいたま市の無届け宿泊施設で入所者の生活保護費が運営者に着服された事件で、入所者の大半が劣悪な環境を理由に転居を希望したにもかかわらず、市側が支援しなかったことが分かった。法的権限がないとして、不明朗な金銭管理に対する運営者への指導も行われていなかった。行政のずさんな対応と法の不備が「貧困ビジネス」を助長している実態が浮かんだ。
事件では、施設を所有するNPO法人「幸興友会(みゆきこうゆうかい)」の実質的代表者で元暴力団幹部(76)らが業務上横領罪で2月に起訴された。着服総額は約1億円に上り、一部は知人の暴力団関係者の接待費に充てられたとみられている。
捜査関係者や元入所者らによると、元幹部らは約3畳のスペースに生活保護受給者を住まわせ、月約13万円の保護費から11万〜12万円を徴収。金銭管理契約を結ばないまま預金通帳や印鑑を預かり、振り込まれた保護費を勝手に引き出すこともあった。
無届け宿泊施設を巡っては、厚生労働省が09年、自治体に対し住環境が劣悪な場合は転居を促すよう通知。適正な金銭管理の指導も求めた。さいたま市は11年、別施設での金銭トラブルを受け、市内全施設の入所者から聞き取り調査を実施。幸興友会の施設では79人のうち67人が転居を望んだが認められず、環境も改善されなかったという。
施設を管轄する同市見沼区の担当者は「劣悪という認識はなかった」と説明。契約に基づかない通帳や印鑑の管理は不正につながりやすいとして、入所者には注意を促したというが、「法的権限がないので施設は指導しなかった。手間がかかるので施設側のやり方を優先させた」などと釈明した。
NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛代表理事は「行政は宿泊所を利用している側面がある。結果的に不正を見抜くことができず、被害が拡大している」と指摘する。【西田真季子、遠藤拓】
◇個室3畳「まるでニワトリ小屋」
「まるでニワトリ小屋だった」。「幸興友会」の宿泊施設にいた男性(63)は怒りを押し殺すように語った。
西日本で建設業を営んでいたが50代で故郷を離れた。埼玉県内で日雇いの仕事をしていたが、不景気で仕事が減り、貯金も底をついた。一昨年の冬、路上生活を考えていた時に施設の職員に声を掛けられた。「寒い中どこにも行くところがなかった。本当に助かった」と感じた。