ヘイトの現場から:/下 カウンター活動、現場で抗議 「対話を」思い届くか

毎日新聞 2013年06月27日 大阪夕刊

 「在日コリアンは働かなくても年600万円支給される」。先月18日、大阪市内であった講演会で、ヘイトスピーチ(憎悪発言)を繰り返す団体を取材しているジャーナリストの安田浩一さん(48)が、団体がビラで「在日特権」として示す内容を紹介すると、会場を埋めた約100人の在日コリアンからあきれて笑う声が漏れた。

 だが、現実は笑ってはいられない状態だ。ヘイトスピーチを行う団体は、在日コリアンの多く住む大阪市・鶴橋や京都府宇治市・ウトロ地区など各地で行動を呼び掛け、参加者を集めている。鶴橋では今年2月、女子中学生が「調子に乗っていたら、鶴橋大虐殺を実行しますよ」と演説。その様子は動画投稿サイトで紹介され、内外に波紋を広げた。

 観光客や修学旅行生も訪れる鶴橋の商店街関係者は警察に相談したが、「言論の自由」を理由に規制は困難と言われたという。日本にはヘイトスピーチを規制する法律などがないためだ。在日コリアンの店主らは「やめてほしい」と口をそろえるが、打つ手はなく、不安を募らせている。

 鶴橋でのスピーチについて在日コリアンの女性(31)は「(警戒の)警察に囲まれながら、ひどい発言を続けていられることに違和感を覚える。ネットでの殺人予告は検挙されるのに……」と憤った。公的な場所での発言を巡る個人宅や事務所への街宣もある。「知人宅に街宣が来て、ショックだった」という在日コリアン団体メンバーの女性(32)は「怖い」と青ざめた。

 過激化するヘイトスピーチに対し、直接抗議するカウンター活動が今年になって広まっている。関西での抗議は、日本人や在日コリアンの個人や団体が呼び掛けている。今月22日も、大阪・御堂筋を日の丸を掲げ、在日コリアンらに対するスピーチを繰り返しながら進むデモ隊の周囲で、「大阪に人種差別は似合わない」とのビラを配る人たちがいた。

 ツイッターで参加を呼び掛けた男性会社員(44)は「女子中学生の演説を知り、何かしなければと思った。日本人の大人として許せない」と語った。大学の博士課程で歴史を研究する男性(32)は「ナチス台頭前のドイツでも、街頭で騒いでユダヤ人の商店を破壊する集団がのさばっていた。今止めないと」と危機感をあらわにした。

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