ネット選挙:野党に有利? 自民一転、積極解禁 制度論議は置き去り

2013年06月26日

 「参院選ではネット選挙が解禁となります。いよいよJ−NSCの皆様が実力を発揮するときがきました」

 自民党本部で6月19日夜に開かれた「自民党ネットサポーターズクラブ」(J−NSC)の総会。安倍晋三首相(党総裁)はビデオメッセージで、インターネットをフル活用した支援を呼びかけた。

 J−NSCは同党が野党時代の2010年6月に発足させたネット利用者による支援組織。同党によると、会員数は約1万7000人。総会はインターネットで中継され、視聴者は2万人を超えたという。

 インターネットを利用した選挙運動(ネット選挙)はこれまで禁じられてきた。ネット普及の起爆剤となったウィンドウズ95の発売が1995年。翌96年、旧自治省(現総務省)が「新党さきがけ」の質問書に対し、ホームページなどが公職選挙法の規制対象となる「文書図画(ぶんしょとが)」に当たると回答。これをきっかけにネット選挙の解禁が議論されるようになった。

 長く解禁論議を主導してきたのは野党だった。戦後の自民党長期政権は業界団体を中心とする組織票に支えられた側面がある。ネット利用者には若年層が多く、組織の枠を超えて個人にアプローチできるネット選挙の解禁は野党に有利に働くとみられていた。野党だった民主党が98年に初めて解禁法案を提出。その後も野党が解禁を主張し、与党が抵抗する構図が続いた。

 09年9月の政権交代が転機となった。10年5月、候補者と政党・政治団体に限ってホームページの利用を認める公選法改正に与野党が合意。これはその後の民主党政権の混乱で棚上げとなったが、ツイッターやフェイスブックを含む今回の解禁につながった。

 自民党はなぜ積極姿勢に転じたのか。

 「野党になってテレビに出してもらえなくなった。与党のときと比べて5分の1から10分の1。そこからネットを使った情報発信をするようになった」

 自民党の石破茂幹事長は6月13日、ネット選挙に関する討論会でこう振り返った。

 野党・自民党の取り組みは周到だった。J−NSCを発足させたり、党本部1階にネット中継用のスタジオ「カフェスタ」を設置したり。ネット上にあふれるツイッターの書き込みなどから世論の動向を分析する「ソーシャルリスニング」にも取り組んできた。参院選では全候補者にタブレット端末を配り、分析情報を共有する予定。有権者向けにスマートフォン用のアプリやゲームも用意した。

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