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俺の妹がこんなに可愛いわけがない ~とある電撃娘(コラボ)の人生相談(ガールズトーク)~/第2話「俺の妹が『空間移動能力者』と下着トークをするわけがない」
2013-06-14 00:00
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生放送当日、俺と桐乃は日本橋にあるドワンゴ本社へと赴いた。
「でかくておしゃれなビルだな。緊張するぜ」
「あんたびびりすぎ。ってか、近々もっと綺麗なビルに引っ越すんだって」
「マジかよ……よっぽど金があり余ってるんだな」
「噂によると学園都市からの資金流入があったらしいよ」
学園都市……?
「学園都市って、今回おまえがコラボする『とある科学の超電磁砲(レールガン)』
の舞台なんだっけ? そんなとことドワンゴに、いったいどういうつながりがあるんだ?」
「あくまで噂なんだけど、ひろゆきが学園都市のOBなんだって」
「マジで!? あの人って『能力者』だったのか!?」
「いや、科学サイドにおける『超能力者(レベル5)』クラスの魔術師で、かなり前から学園都市の暗部とつながっていたとか、なんとか」
「なんだそりゃ」
「そう言われてみると、暗部組織『アイテム』『スクール』『ブロック』に、『ドワンゴ』『ニワンゴ』って並べても違和感ないよね」
カタカナ四文字なところだけな。
魔術師とか、暗部とか、ぶっそうな単語が出てきたが。
『とある魔術の禁書目録(インデックス)』を読んでいれば、こいつの言っている意味がわかるのだろうか?
「いま、ひろゆきとドワンゴがどういう関係なのかはよくわからないんだケド、ニワンゴの取締役を辞めたあと、学園都市の何処かに潜伏して、闇の領域で暗躍しているらしい。『ニコニコ動画』を使って世界征服をする研究をしてるってハナシ。ま、あくまで噂だけどね」
「ふーん、ちなみにいまの話って誰から聞いたんだ?」
「黒猫」
いまの一言で、信憑性がグッと下がったな。厨二病の妄想である可能性が大だ。
まあいいか。俺には関係のない話である。
「ひひ、噂がほんとだったら、今回のコラボにも裏があったりして」
「おいおい、そーいうのはバトル系作品の連中に任せておけよ。ホラ、某灼眼の先輩とか、いまだに人気なんだしさ」
「そういうワケにもいかないんだって。先輩方はみんな忙しいし、トークとか苦手な人たちばっかなんだから」
確かに桐乃は猫かぶるのが上手いから、電撃文庫ヒロインの中では、トークイベントに向いているかもな。
「徳島の『マチ☆アソビ』ってイベントで会ったドッコイダー先輩とか、呼べば来てくれるんじゃねーか?」
「いまから呼んでも生放送に間に合わないでしょ。いー加減覚悟決めろっての」
桐乃は、俺を指差した。
「もしものときは、あんたがあたしを守るんだかんね」
「へいへい、そんときゃ捨て身で守らせていただきますよ」
「ば、ばかじゃん」
「……なに怒ってんだ」
俺たちはそんな与太話をしつつ、ドワンゴ本社に足を踏み入れる。
入口をはいってすぐのところに電話があり、それを使って担当者を呼び出す。
と――
ひゅんっ、と、目の前の空間に、突然ツインテールの女の子が現われた。
「うわっ!」
俺はたまらずたたらを踏んでしまう。
一方桐乃は、目を輝かせてこう叫んだ。
「ま、まさかコレって!」
「初めまして、高坂桐乃さん、高坂京介さん。わたくし学園都市で『風紀委員(ジャッジメント)』をつとめております白井黒子ともうしますの」
「やっぱり! 『空間移動(テレポート)』! 初めて見た! すごー!」
来る途中に桐乃から聞いていた。
今日会う人たちは、『能力者』……つまり、いわゆる『超能力』を使えるらしい。
桐乃は『もっと正確に理解しろ』と、黒猫みたいなことを言っていたが、まぁそれほど間違ってはいないはずだ。
――本当だったんだな、アレ。
「おい、桐乃。初対面の人に失礼だろ」
白井黒子と名乗った子が、小柄で愛らしい、いかにも桐乃が『妹になって』と言い出しそうな見た目なので、牽制の意味も込めて窘めると、意外にも桐乃は素直に反省した。
「あっ、ごめんなさい……はしゃぎすぎました」
「いえいえ、構いませんの。そんなに素直に感激してくださって、むしろ嬉しいですわ。『大能力者(レベル4)』以上の能力者になると、化物呼ばわりされることさえありますのに」
「こんなに可愛いコをそんな風に呼べるわけがない!」
力説である。
まぁ、おまえはそうだよな。
「それはどうもですの。……初春の事前調査どおりの御方ですわね」
おい、引かれてるぞ。
「あ、えっと、じゃあ改めて。初めまして、白井さん。高坂桐乃です。で、こっちが兄の京介」
「初めまして、今日はよろしくお願いします」
「はい、こちらこそですの」
喋り方は若干特徴的だが、ずいぶんしっかりした子だな――
「では、控え室までご案内しますの」
――と、このときまでは思っていた。
*
エレベーターで十階へと上る。
「へぇ〜、そんなことが!」
「はい! お姉様のご活躍は、まだまだこんなものじゃありませんのよ! 学園都市二百三十万人の頂点である『超能力者』の第三位! 『超電磁砲』御坂美琴お姉様は 常盤台中学――」
「『そして電撃文庫が誇る最強無敵の電撃姫ですの』でしょ? 黒子ちゃん」
「そのとおりですの! 桐乃さん……わかってらっしゃいますのね!」
「なのに、実は可愛いぬいぐるみが好きだったり、子供っぽいぱんつ履いてたりするとこがまたいいんだよね! じゅるっ!」
「そのとお――りですの! 桐乃さん……わかってらっしゃいますのね!!!!!!! じゅるっ!」
気持ち悪い会話だなあオイ。
いつの間にか、下の名前で親しく呼び合っているし。
「って、どうして桐乃さんがお姉様のおぱんつについてご存知なんですのっ!?」
「『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』を使って『超電磁砲』のぱんつの柄を調べるという恐るべき計画について、黒子ちゃんはどこまで知ってる?」
「そんな素敵な計画が! 初耳ですの!」
「まぁ、その件はあとで『電撃文庫MAGAZINE増刊 とらドラ!VS 禁書目録』(※2)に掲載されている読み切りを読んでもらうことにして……」
(※2)2008年9月に発売された「電撃文庫MAGAZINE」増刊号。冬川基による『超電磁砲』読み切り漫画が掲載されていた。
「まさか話を打ち切るつもりですの!? こんなにも気になるところで!」
「そんなことしないって。ずばり、あたしが美琴さんのぱんつの柄を知った方法は――これだ!」
ばばーん、と、桐乃は黒子に、スマホの画面を見せつけた。
「なっ!」
そこに表示されていたのは――
「ペロッ……! これはお姉様のフィギュア!」
「そ、そのとおり!」
桐乃は、画面に付着した黒子のよだれをティッシュで拭いて、
「フフフ……黒子ちゃん、これでわかったっしょ?」
「し、しかし桐乃さん! このフィギュアは……! わたくしも当然持っておりますが、お姉様のおぱんつは短パンの隙間からチラっとしか確認できなかったハズ……!」
「フッフッフッフッ……」
桐乃は不敵に笑う。
一方黒子は、鼻息も荒く問い詰める。
「あ、ありえませんの! お姉様のパンモログッズは電撃文庫&電撃大王編集部公式で禁忌扱い! おぱんつが確認できるフィギュアなど、公式に存在するハズが! する……ハズが……ッ!」
桐乃は、にこやかにこう答えた。
「脱がした」
「なぁあッ!?」
黒子がオーバーリアクションで仰け反る。
「……い、いいい、いま……なんと? わたくしの聞き間違いでなければ、電撃文庫ヒロインでありながら創造神(アスキー・メディアワークス)に反逆するかのごとき発言が飛び出したような……」
「慎重に、ちょうゆっくりやれば、美琴フィギュアの短パンは脱がせる」
「!!!!」
瞬間、黒子の身体が、電撃にうたれたかのように震えた。
カッと目を見開き、
「桐乃さん! あなたって人は! あああ、あなたってお人はぁ――――!!!!!! …………画像とかありませんの?」
……だめだこいつら。
二人とも、さっきまでのお淑やかさはいったいどこにいっちまったのか。
特に――黒子が『お姉様』の話をするときのテンションと顔……。
エロゲーの話をしているときの俺の妹と、完全に一致していやがる……。
こいつはヤバイと、俺の変態センサーが警笛を鳴らしていた。
「こんなにもお姉様トークが弾む方とお会いしたのは、久しぶりですの」
「あたしもあたしも」
お姉様トークて。
ちょっとの間に、仲良くなったもんである。
二人はさっきからずーっとこの調子で『美琴お姉様』の話で盛り上がっていた。
「さて、そろそろ控え室につきますの」
黒子が前方を指差した。
そこには廊下が続いていて、ふと横を向いてみればスタジオのような部屋が見える。
もしかしたら、ここで収録を行うのかもしれない。
……うう、自分が出るわけじゃねーってのに、緊張してきたぜ。
「で、でもよ……」
「はい? なんですの?」
「『御坂美琴お姉様』が、強くてカッコよくて、君のことを性的な意味で愛しているってのは、いまの話でよーっく伝わってきたんだが」
「素晴らしい理解力ですの。で?」
「……それだけ聞くと、ちょっと怖いイメージを抱いちまってな」
「……ははぁん、なるほど。こちらも初春の事前調査どおりの御方ですの」
「えっ?」
「怖いかもしれないお姉様に、可愛い可愛い妹さんを会わせたくないな〜、なぁんて考えていらっしゃるのでしょう?」
「なっ! ち、違うぞ!」
「でも、ご安心くださいな。お姉様は、強いだけでなく、とても優しい御方……あなたの心配は的外れですの」
だから、違うと……! 人の話を聞かないやつだな。
「ったくもー、シスコンなんだから。大丈夫だっつーの」
桐乃が指を一本立てて、得意げに言った。
「なんたって美琴さんは、『超能力者』の中で一番の常識人なんだから。――ね? 黒子ちゃん」
「……………………」
おい、返事がかえって来ないんだが?
「……ま、まぁ、比較対象がアレですけれども、嘘じゃありませんわね」
「余計に不安になってきたぞ」
黒子はおでこに汗をかきつつ、
「だ、大丈夫ですわよ。いくらお姉様でも、一般の方に電撃なんて――」
黒子が言いかけたところで――
ドゴォォォン!!
轟音が鳴り響いた。次いで廊下の先から、逆巻く風が吹き荒ぶ。
「な、なんだぁ!?」
「扉が爆発した!?」
俺は咄嗟に前に進み出て、妹を自分の背に隠すように立ちふさがる。
顔を打ち据える強風に、思わず目を細めた。
バチバチバチィッ!!
今度は青い電撃が目前でほとばしった。
そして――
「なんで! アンタがここにいるのよ――ッ!」
「ぎゃあああああああああ!! 不幸だぁ――――――っ!!!!」
絶叫とともに、ウニみたいな頭をした男が、こちらに向かって走ってきた。
「…………えーと……………………大丈夫、ですのよ?」
「桐乃、帰るぞ。ここは危険だ」
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第3話「とある電撃娘(コラボ)の人生相談(ガールズトーク) 前編」に続く。
次回更新予定日は6月21日00:00です。
※第2話「俺の妹が『空間移動能力者』と下着トークをするわけがない」は7月4日23:59 で公開終了となります。
※第2話「俺の妹が『空間移動能力者』と下着トークをするわけがない」は7月4日23:59 で公開終了となります。
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