長生きしたければ抗酸化食品を

酵素と生食の真相を追う(後篇)

2013.06.28(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 「酵素ジュース」で酵素を体に取り込んでも、胃で自分の酵素に分解されるだけ・・・。前篇ではそんな酵素の話を、機能性食品の専門家である愛知学院大学教授の大澤俊彦氏から聞いた。

 「酵素の摂取」と関係の深いのが、食材を生のまま食べる「生食」だ。「ローフード」とも呼ばれる。加熱で失われがちな酵素などの成分を体に取り込むための方法として生食を実践している人もいるという。

 大澤氏の話からすれば、生食で酵素を摂取したとしても、その酵素が体に作用する望みは薄い。だが、生食にはほかの作用もあるのかもしれない。

 そこで、後篇では生食に関心の眼を向けて、再び大澤教授の話を聞くことにしたい。

 生食と、加熱調理した料理を食べるのとでは、それぞれにどのような利点があるのか、改めて聞いてみた。また、生食の目的の1つである「アンチエイジング(抗加齢)」についても、食の点での大切なことを聞いてみたい。

生食と加熱調理食のメリット、デメリット

──「生食」あるいは「ローフード」と呼ばれる食事を実践している人がいます。加熱すると失われがちな酵素やビタミンなどを効率よく摂取することを目的としているようです。

大澤俊彦教授(以下、敬称略) 繰り返しになりますが、酵素については、食べて取り入れても体に吸収される可能性はあまりないと思います。外から入ってきたタンパク質である酵素を、私たちのタンパク質分解酵素が分解するからです。

 だからといって、加熱調理した料理ばかり取ればいいかというと、そうは思いません。生の食材を取ることには他の良い点もあるからです。

──生食には具体的にどのような良い点がありますか?

大澤 例えばビタミンCは加熱すると壊れてしまいますが、生の食材のまま食べれば、壊れずに体に取り込むことができます。

 特に、生の食材をすりつぶして野菜ジュースや果物ジュースなどにすれば、植物の細胞壁が壊れるので、成分が体に吸収されやすくなります。

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漆原 次郎 Jiro Urushibara

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。