ある所にとても美しい少女がいました。



少女は学校に通う途中、他の世界から連れてこられると、怖いお姫様に捕まってしまいました。

お姫様は少女に呪いをかけて、どこにも逃げられないようにしてしまったのです。

お姫様は言いました。

「今日からあなたは私達の―――勇者です」

「少女」はその日から「勇者」と呼ばれるようになりました。

お姫様は言いました。



「あっちに家より大きな化け物がいるのです。退治してきてくれますか？」

勇者は剣を携えて、家より大きな化け物を退治しに出かけました。

お姫様は言いました。

「こっちに悪い盗賊が出るの、やっつけてくれますわよね？」

勇者は盗賊達を倒しに出かけます。

お姫様は言いました。

「そっちに私に逆らう人がいるの、捕まえてきてくださらない？」

勇者は言われた通りにする事しか出来ません。



勇者はとても悲しみました。

それでも勇者は戦うしかありませんでした。



呪いの解き方を探してみましたが、わかりません。

家に帰る方法を探してみましたが、わかりません。

戦っていると元の世界での日常が薄れてきて。

少女と元の世界の繋がりは、ずっと身に着けている学校の制服くらいしかありませんでした。

そんなある日、お姫様は言いました。

「とても怖い場所に危険な悪魔がいるかもしれないの。退治してきてくださいな」

勇者は剣を携え出かけていきました。

その場所は険しい森の中でした。

勇者は深い森の奥で、魔法の霧に飲まれてしまったのです。

先の見えない霧の中で、勇者はここで終わりだとそう思いました。

しかし次に目を開けた時、勇者は魔法使いとカエルに出会いました。



勇者は死んでいませんでした。

魔法使いとカエルが勇者を助けてくれたのです。

「あなたは一体誰ですか？」

勇者が尋ねると、魔法使いは答えます。

「あなたと同じ場所から来た魔法使いです」

勇者はとても信じられませんでした。

でも魔法使いは勇者の世界と同じ服を着て、同じ家に住んでいたのです。

だから勇者は必死に魔法使いにお願いしました。

「元の世界に帰る方法を教えてください！」

だけどそんな勇者に魔法使いは悲しそうに言いました。

「元の世界に帰ることは出来ません。でもあなたにかけられた呪いだけは解いてあげましょう」

魔法使いは勇者にかけられたお姫様の呪いを、あっという間に解いてしまったのです。

勇者はやっと少女に戻ることが出来ました。

でも驚く少女に魔法使いとカエルはこう言います。

「呪いは解けても元の世界に戻してあげることは出来ません。世界のどこかにその方法はあるかもしれませんが探すのは無理でしょう」

少女は悲しくなりました。

でも心の中にまだ勇気は残っていました。

だから少女は笑顔で言う事が出来たのです。

「それでも私は探します」



少女はやっと希望を見つけることが出来たんだとそう思いました。

そして少しの希望があれば、少しの勇気でも前に進むことが出来ました。

この時少女は本当の勇者になったのです。

そんな少女に魔法使いは言いました。

「それでは友達になった証に勇者ではない名前をあげましょう―――」

魔法使いは少女に名前を贈りました。