先週はオーストラリア・シドニーに行く用事があった。オーストラリアもシドニーも初めて訪れる。セントラル駅近くに宿をとって、ダウンタウンに行くと、街を行く人は、チャイニーズあり、マレー系あり、ベトナム系あり、人種のるつぼといった様子だ。特に中国人が多い。
道を歩いていると、ふつうにマンダリンで声をかけられ、客引きされ、私も店員が中国人だとみると、ふつうに中国語で買い物をする。店の看板も中国語、メニューも中国語、朝ごはんは粥と油条(揚げパン)を食べ、中国語の新聞や雑誌を読む。中国の海賊版DVDや衣料品などが、中国より高い値段で売られている。シドニーに来た目的は、とある亡命学者のインタビューなので、仕事も中国語で済まし、英語圏なのにほとんど苦手な英語を使わずに過ごした。
世界中どこの国にも中国人がおり、チャイナタウンができており、そして中国語のみで、中国式に暮らせる空間がある。中国人は移民によってネットワークを拡大し、富を増やし守り、生き抜いてきた人々であり、中国経済の陰りや政治の不安定さが垣間見える昨今、中国人の移民ブームはますます盛り上がっている。しかし、そんな中国人移民に対し、移民先の国々は警戒感を示し始めた。
高級マンションやワイナリー、農場を購入
オーストラリアに関していえば、人口2150万人のうち、中国人は60万〜70万人という。シドニーで普通語および広東語を使う家庭は17.2%で、すでにオーストラリアの第二言語となっている。昨年、オーストラリアに来た中国人移民は2万9547人で移民全体の17.5%を占め、初めて英国人を追い越して中国人移民の数がトップとなった。
中国人移民の最近の傾向は、いわゆる就労目的だけでなく、投資移民の急増だ。カナダやオーストラリアの投資民申請の7割は中国人という。2010〜11年度、外国人が購入したオーストラリアの不動産は415億豪ドルで前年度の倍となったが、うち中国人投資家が購入したのは40.9億豪ドルで、英国人投資家の46.1億豪ドルに次いで2位という。
シドニーのとある高級住宅地を車で通ったとき、案内してくれた地元華人が「このあたりで、曽慶紅(元副国家主席)の親族が住宅を購入したという噂だ。このあたりは最低でも2000万豪ドル以上するよ」と耳打ちした。本当かどうかは知らないが、そういう噂が立つほど、中国高級官僚の親族がシドニーの高級不動産をよく買っているそうだ。
ノースショアの不動産仲介業によれば、200万豪ドルを超える高級物件の購入者はほとんどが中国人。だいたいが、留学生の親が子供のために、といって買うのだが、以前なら、子供が留学期間に暮らすためだけであれば30万豪ドル程度の物件が一般的だった。高級物件を購入するのは明らかに、資産移動が目的だろう。比較的最近に竣工したジョージ・ストリートのインマーク・タワーの物件の購入者は90%が中国人とか。都市部の住宅、テナントだけでなく、ワイナリーや農場購入も最近のトレンドとか。
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