虚構の環:第3部・安全保障の陰で/1(その1) プルサーマル、米に約束
毎日新聞 2013年06月25日 東京朝刊
大串氏は取材に対し「誰に面会したのかは外交上言えない。(プルサーマルに関しては)覚えていない」と答えた。エネ環戦略には「安全性が確認された原発を活用」と記載され、プルサーマルへの言及はない。当時経済産業相だった枝野幸男衆院議員は「プルサーマル(と当面稼働させる普通の原発と)を区別していなかった。エネ環でそんなミクロな話はしていない。(私が訪米しても)そう答える」と述べ問題ないとの認識を示したが、国民への説明抜きに対米公約になった形だ。
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安倍政権もプルサーマル再開の方針を維持している。毎日新聞は3月1日に経産省が作成し茂木敏充経産相に提出した公文書を入手した。
核燃サイクル政策について「六ケ所再処理工場で再処理を行い軽水炉におけるMOX燃料利用(プルサーマル)を進める」と明記されている。茂木経産相はこの記載内容に沿う形で、3月22日の衆院経産委で「プルサーマルを着実に進めていきたい」と答弁した。
7月施行の新規制基準により、どの原発の再稼働が認められるのかさえ分からない。にもかかわらず、通常の原発に比べ、問題が指摘されているプルサーマル再開方針を推し進める政府。経産省資源エネルギー庁職員は語る。「確かに異常だ。しかし六ケ所を動かすなら仕方がない」
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再処理工場は19回も完工を延期し、5月にはもんじゅに運転再開準備の停止命令が出された。核燃サイクル政策が一層混迷を深めるなか、国際社会は日本のプルトニウムに厳しい目を向ける。第3部は安全保障を巡る攻防と、その裏でうごめく関係者の実態に迫る。