その一方で「南側でも軍部は何もしようとしないが、今回軍部が改変され彼らの考え方が変わり、平和協力について前向きな態度を示している」とも述べ、韓国軍をも自らが思い通りにしたと言っていた。これもまさに韓国の国軍に対する完全な冒涜(ぼうとく)だ。
世界のどこの国の大統領が、目の前の現実的な脅威となっている敵の勢力の前で、自国の国境線を「おかしな形で出来上がった怪物」などとおとしめ「国際法的な根拠もなく、論理的な根拠も明確でない」などと言えるのだろうか。盧元大統領は「(NLLの見直しは)絶対に憲法の問題ではない」とも述べた上で「いくらでも自分が進めることができる」と金総書記に断言していた。金総書記が「双方が(NLL関連の)法律を全て放棄すると発表してもよいのではないか」と提案すると、盧元大統領は「いい考えだ」「次の大統領に誰がなるかは分からないので、後戻りしないようくぎを刺しておこう」とも言っていた。
NLLは休戦協定締結以来、20年以上にわたり北朝鮮も何ら異議を挟まないまま認められてきた領土線だったが、北朝鮮はこれを突然紛争化しようとした。これに対して韓国の大統領が首脳会談で自らNLLの根拠を否定し、海上の境界線を南側に引き下ろそうとする北朝鮮の戦略を受け入れていた。この首脳会談の席で大韓民国は、誰も守ってくれない孤立無援の状況に等しかったわけだ。その席には本当の「大韓民国大統領」や「大韓民国国軍統帥権者」はいなかったと言わざるを得ないのだ。
盧元大統領は金総書記の前で、韓国の国民について「NLLという言葉が出るだけでハチの群れのように騒ぎ出す」「詳しい内容も知らない人間たちが神経質になって本当にうるさい」「いくら説明しても話にならない」と侮辱した。金総書記がNLLの見直しに対する韓国側の反応について尋ねると「反対すればネット上でばか者扱いされるでしょう」と答えた。首脳会談で自国民をここまで下品な言葉を使って侮辱する国家元首が他にいるという話は聞いたことがない。
盧元大統領は2007年、任期満了を5カ月後に控えた時期に南北首脳会談を強行した。当時は誰もが「それでも北朝鮮に行くのなら、核問題についてはぜひとも話し合ってほしい」と願っていた。しかし盧元大統領は金総書記に「南側では今回、核問題について確実に話をするよう求める声が多い。しかしそれは状況の変化を願う人間たちの主張だ」と言った。北朝鮮に圧力を加えるために米国が行っていたバンコ・デルタ・アジア(BDA)銀行の口座凍結については「米国の過ちであり、不当であることは分かっている」「一番の問題は米国だ。自分も帝国主義の歴史が世界の人民の前で反省されることがなく、今日もなお覇権的な野望を露骨に示しているとの認識を持っている」という趣旨の発言をしていた。