"長野県大町市のセシウム137"小出裕章氏6/9松本市講演会・質疑応答部分(内容書き出し)
会場:長野県松本文化会館 中ホール (キッセイ文化ホール)
平成25(2013)年6月09日(日)
主催:小出裕章講演会実行委員会
制作:長野インターネット放送局[NIBC]
Youtube ↓
http://youtu.be/sVbs43g7vkY?t=22m39s
質疑応答3
大町市に在住のやぎさん
大町地域での測定の結果等についての質問です。
4歳の娘を持つ大町市やぎと申します。
大町という所が自然の放射線量が高いためなのか、
新聞に掲載される空間放射線量が信州で連日No1です。
だけれどもこの値が本当に自然由来だけのものと言い切れるのかどうか?
それから、昨年から大町市で保養プログラムを仲間たちと実施しているんですけれども、
子どもたちを迎える土地としてふさわしいのかどうか?
そのような疑問から、土壌の実際の値を把握しようと、
仲間たちと昨年より40検体ほどの土壌を測定しました。
で、お聞きしたいんですけれども、
結果、不検出のものと、数ベクレルから20ベクレル程度検出されたものが半々ほどだったんです。
その中で、昨年秋に測定した標高700メートルほどの、ある林の土壌から、
セシウム134が不検出、こちら下限値が3.68ベクレルでした。
セシウム137が39.81ベクレルという値が出ました。
測定所の方からは、小出先生にご相談いただいて、
比率から考えてチェルノブイリ由来なのではないかと示していただきました。
で、大町市内でこのような値が出た土地というのは他にはまだありません。
大町は高い山に抱かれた内陸部にあるんですけれども、
なぜ、こういう限られた土地でだけ、古い汚染が検出されるのか、どのような理由が考えられますでしょうか?
小出:
えー、これもきちっと、
私自身もきちっと説明する情報を持っていませんけれども、
いくつか聞いていただこうと思います。
地球というものが放射能で汚れたのは、福島第一原子力発電所が初めてではないのです。
もともと1950年代、60年代を中心として、大気圏内核実験という事が、もう、猛烈に行われて、
ボンボン、ボンボン、原爆・水爆を爆発させる。
そうなればどんどんどんどん死の灰を大気中に振りまくという事をずっとやってきたんです。
で、それだけではありません。
原子力を使うという事で、沢山の原子力発電所をつくる。
そして再処理工場というものをつくる。
再処理工場はさっきちょっと聞いていただきましたけれども、
原子力発電所が1年間で放出する放射能を一日ごとに放出するというような、
猛烈に危険な工場ですけれども、
それだって、原爆をつくるためには再処理工場が必要だという事で、
核保有国はみんなそれをつくって、環境に放射能をまき散らしてきたという、
という事をやってきたのです。
その後でチェルノブイリ原子力発電所の事故がありました。
そして福島第一原子力発電所の事故があるということで、
もう人間がこの手で何度も何度も放射能を地球上にばら撒いているという、
そういう歴史をたどってきたのです。
大気中に放出されたセシウム137の量
黄色:1986年の残存量 赤色:2012年の残存量
これまでどれだけの放射能をまき散らしてきたのかというのを、歴史的にちょっと一覧にしたものです。
1950年代の大気圏核実験で、この一番左の帯ぐらいまき散らした。
そして60年代から70年代にかけて、大気圏内核実験でこんなにばらまいた。
そして80年代のチェルノブイリで原子力発電所の事故一回だけでこれだけ。
そして福島の原発で、これは政府の公表値で、私はこれの2倍や3倍だと思っているわけですけれども、
これだけだということですね。
パッと見て分かって頂けると思いますけど、圧倒的なのは大気圏内核実験です。
福島第一原発でまき散らしたセシウム137の量から、
何度も言いますが、政府公表値です、に比べれば、
大気圏内核実験は60倍とかという程の膨大なものをばらまいて、地球上全部を汚しているのです。
松本だってそうですよ、大町だってそうだし、みんな汚しているんです。
その上にチェルノブイリの事故が加わって、福島の事故が加わっている。
現在残っているのはどのくらいか?と言うと、
大気圏内核実験の放射能は、セシウム137,30年で半分に減ってきたという事で、
福島第一原発の約20倍ぐらいが地球の上に残っている。
チェルノブイリも福島原発の3倍ぐらい残っている。
そういう状態の汚染が残っているのです。
大町で測って下さったというやつは、セシウム134というのは不検出だという事で、
もし福島のものだとすると必ずそれが出てくるはずですので、
私は大町で検出された放射性物質は「福島ではない」と思います。
残りの大気圏内核実験か、チェルノブイリの事故の残渣というのでしょうか、
それがずーっと尾を引いて残っているというふうに考える以外にないと思います。
そして、なぜ大町なのか?ということですけれども、
それも大変難しい問題で、
要するに、福島の汚染についても風がどっちへ吹いたか?と、いう事で、
汚染に巻き込まれた所もあるし、巻き込まれなかったところもある。
山があったから助かったのか、なかったからむしろ風が流れてきたのかという所もあるわけですし、
一つ一つの個別の場所で全然違うんですね。
そしてまたそれに個別の場所であっても、
たとえば
セシウムならセシウムを大変吸着しやすくて、そこにとどめて起きやすい土壌というものもあるのです。
流れていってしまいやすい土壌というものもあるし、
たまたま、その大町で取った土壌というものが
セシウムを強く吸着しやすい土壌であった可能性もあると思いますし、
山に囲まれた大町という所にセシウムが沢山降り積りやすかったという、
そういうこともあるのかもしれません。
でも、日本中でもそう、世界中でもそうですけれども、
1kgあたり数ベクレルというセシウムであれば、どこにでもあります。
40というのは少し高いとは私は思いますけれども、特別不思議な値でもないと思います。
自然というのはそういう、高い、低いというのを、あちこちにばらつきを残しながら存在しているものです。
やぎ:
ありがとうございます。
そうしますと、311由来の汚染よりも、残っているのが40ベクレル、
ま、約40ベクレルと高いんですけれども、
そうなると、チェルノブイリ由来だとすれば、含まれている核種もですね、なんか違うのではないか?
という気がしたりするんですけれども。
小出:
もちろん細かく言うと違うのですけれども、
大気中に噴き出してきた放射性物質のうちで、
常用の放射性物質はセシウム137とストロンチウム90しかありません。
「ありません」と言ったらおかしいのですけれども、
沢山、核分裂生成物というのはおよそ200種類に及ぶ集合体だと、私先程聞いていただいたように、
本当は、チェルノブイリから出てきたその組成と、福島から出てきた組成とでは違うのですけれども、
でも、たとえば重要な放射性物質であるとすればヨウ素という放射性物質もありますけれども、
ヨウ素は寿命が長い要素でも8日経つと半分に減ってしまうものですから、
福島原発の事故で放出されたヨウ素ももうありません。
チェルノブイリ原発で放出されたヨウ素もすでにありません。
ですからそんなものは今から考える意味もないものであって、
やはり考えなければならないのはセシウム137とストロンチウム90だと思います。
そして、放出された時に大気中に出てきた量というのは、
実はストロンチウム90は揮発性が低いので、大気中に出てきている量がセシウムよりは少ないのです。
福島の場合にはセシウム137の1000分の1ぐらいしか出てこなかったので、
重要ではあるけれども、今考えなくても良いと私は思います。
「とにかくセシウム137に注意をして下さい」とみなさんにお願いしていますし、
チェルノブイリの影響も、とにかくセシウム137に注意をするということが、
他の放射能に注意をするよりも重要だとおもいます。
やぎ:
わかりました。
もうこれ以上私たち大人が汚染を重ねないように、
脱原発に向けても腹据えてやっていくという事ですね。
先生ありがとうございました。
小出裕章講演会 松本市 2013/6/09(日) 質疑応答部分の文字起こし
動画はここにあります↓
「国の"放射能を忘れさせる作戦"で被害者同士の間で溝が出来てしまうというふうに仕向けられてしまっている」小出裕章氏6/9松本市講演会・質疑応答部分(内容書き出し)
信州大学理学部物理学科大学院生の質問
「物理を勉強しているが放射能はよくない事、この矛盾をどうすればいい?」
小出裕章氏6/9松本市講演会・質疑応答部分(内容書き出し)
"長野県大町市のセシウム137"小出裕章氏6/9松本市講演会・質疑応答部分(内容書き出し)
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