社説
首相問責可決/泥仕合をしている場合か
生活、社民、みどりの風の3党が参院に共同提出した安倍晋三首相に対する問責決議が、会期末のきのうの参院本会議で野党の賛成多数で可決された。 あおりを受けて参院で積み残された法案の審議がストップ。会期末での成立が見込まれた電気事業法改正案、生活保護法改正案、生活困窮者自立支援法案など6法案が廃案となった。 国会は機能の劣化を浮き彫りにするような後味の悪さを残して閉会した。7月4日に公示が予定されている参院選を目前に、与野党の攻防が熱を帯び始めていたとはいえ、いずれも冷静さを欠いた対応は批判を免れない。 与野党の稚拙で容認し難い応酬の積み重ねが招いた失態と言っていい。有権者もあきれ返り、重要な争点を抱える参院選への影響も懸念される。 参院での首相問責決議の可決は、自民党の福田康夫氏、麻生太郎氏、民主党の野田佳彦氏に続いて4人目。 ただ、今回は急転直下の予期せぬ事態だった印象が強い。弾みと受け止めていいかもしれない。 可決に法的拘束力はない。ねじれ国会で野党が政権を揺さぶる戦術としてはあり得ようが、内閣支持率の高さを考えれば、効果があるのかさえ危うい。 衆院小選挙区定数の「0増5減」に伴う区割り改定を盛り込んだ改正公選法案をめぐる攻防が混乱のきっかけだった。 まず動いたのは与党。参院送付から60日たっても法案の審議すら行わない平田健二参院議長の議院運営を批判し、自民、公明両党が議長の不信任決議案を提出。さらに不信任が出ていることを理由に首相が最終盤の参院予算委員会を欠席した。 野党は「憲法違反の暴挙」と首相の欠席を厳しく批判。3党が共同で問責決議案を提出するに至った。 民主党は法案処理を重視、共同提案に加わらなかった。が、党が推す議長の不信任決議案が採決(否決)された上、参院選への影響も多分に考慮、野党共闘を優先して同調した。 双方に理屈はあっても、子どもじみた対応の応酬ぶりは否定のしようがない。 与党は野党の戦術を受けて立つ「らしさ」に欠けた。審議入りしないことによる、募るいら立ちは理解できても、議長不信任決議案の提出はいかにもやり過ぎだった。その流れで予算委を欠席しては逆に審議軽視の批判を浴びかねず、廃案を招いた責任も突き付けられよう。 責め手を欠く野党の焦りも分からないではない。が、効果の乏しさを抜きにしても問責決議案の提出は愚策と言うべきだ。 与野党が決議案を取り下げるなど、互いに顔を立てる大人の対応を取り得たはずだ。与野党にそうした知恵者がいないということだろうか。 有権者の政治不信は癒えていない。重要課題が山積しており、泥仕合を繰り返している暇はない。参院選でのかみ合う論戦で挽回を図ってほしい。
2013年06月27日木曜日
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