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原子力機構 処分地選定調査/「億単位の金が入る」
 | 調査地となった大野平一帯を指さす佐々木さん=遠野市附馬牛町地区 |
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「大金が手に入りますよ」。高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に向け、日本原子力研究開発機構(原子力機構)が2006年に調査に入った遠野市附馬牛(つきもうし)町地区では、住民の一部に立地を前提にした巨額の補償話も持ち掛けられていた。地元行政区長から機構などの強引な手法を知らされ、調査を打ち切らせた本田敏秋市長(65)は「あれでは地域の信頼は得られない」と批判する。
◎区長訪ね巨額補償話/遠野市長「油断できない」
<パンフ持参> 原子力機構が調査した附馬牛町地区は北上山地・薬師岳のふもとに位置し、市中心部の北約20キロ。戦後、開拓民らが切り開いた農地や国有林が広がる「大野平」と呼ばれる場所では、ボーリング調査も予定していた。 当時、附馬牛第7区長だった農業佐々木清茂さん(76)は2006年夏から秋にかけ4回ほど、原子力機構の職員ら数人の訪問を受けた。最初の3回はどんな話をしたか覚えていない。 「この辺じゃ見掛けないスーツ姿だった。毎回おいしい菓子折りを持ってきた。雑談と難しい話だった気がする」 4回目の訪問は11月。機構職員が最終処分場のパンフレットを持参し、「調査の結果、大野平が一番適している。土地を売るにしても貸すにしても、億単位のお金が出る」と説明していったという。 地区では同年夏から秋にかけ、作業着を着た数人の男たちが何度も目撃されていた。住民が声を掛けると決まって「測量をしている。県と市の許可を取っている」と説明した。 佐々木さんが4回目の訪問を受けたのと同じころ、第5区長だった菊池由明さん(78)も原子力機構職員の訪問を受けた。菊池さんは「最終処分場の話は出なかった。ただ、置いていったパンフレットの一部にそのことが書かれていた」と振り返る。
<募る不信感> 訪問を受けた区長たちが同年11月、本田市長を訪ね、機構職員らの動きを伝えたことがきっかけで、市は正式に許可していない最終処分地の調査だと判断。本田市長は調査の中止を要請し、機構は予定していた大野平のボーリング調査を見合わせた。 遠野での騒動は一段落したが、本田市長は今も「いつ勝手に候補地にされるか分からない。油断できない」と不信感を強め、「今後も処分地調査には断固反対していく」と強調している。
◎補償の説明していない/日本原子力研究開発機構の話
調査を行った遠野市で、地元の方々に高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に関わることや金銭補償の説明をした事実はありません。
2013年06月02日日曜日
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