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第8部・核廃棄物の行方(4)廃炉/行き場なく進む解体
 | 熱交換器の解体廃棄物を収める鉄箱。原発の死がもたらす膨大な廃棄物の行き先は何も決まっていない=茨城県東海村の日本原子力発電東海原発 |
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<2020年度終了目標> 黒ずんだコンクリート壁の建屋内で、原子炉は静かに息絶えていた。 福島第1原発の南約110キロにある日本原子力発電東海原発(茨城県東海村)。商業用原発として初めての廃炉の現場で、作業に当たっているのは90〜100人程度にすぎない。無数の重機と約3000人が慌ただしく動く福島第1原発とは別世界の廃炉の風景だ。 2001年に始まり、20年度の終了を目指す。作業は今、原子炉とタービンをつなぐ熱交換機の解体、撤去の佳境にある。切断装置を遠隔操作し配管を裁断、廃棄する。 原電によると、廃炉作業で生じる放射性廃棄物の推定総量は計約2万6900トンで、圧力容器なども全て低レベル放射性廃棄物に当たるという。 放射性物質濃度に応じてL1〜3という3段階に区分され、炉心廃棄物が中心のL1は地下50〜100メートルのトンネルやサイロに、低濃度のL3は地下に直接埋設するなど、最終処分方法もそれぞれ異なる。 だが、いつまでに、どこに施設を造って処分するか、肝心なことは全く決まっていない。 「L1、L2は各電力会社共通の施設で処分しL3は原発敷地内で埋設したい」。原電の説明はあくまで一事業者としての希望を述べているにすぎない。 この先、最大のヤマ場の原子炉解体が控える。「処分場がなくとも解体は技術的には可能だ」とする原電に対し、茨城県は「処分先が決まらなければ着手しないことになっている」(原子力安全対策課)とけん制する。
<全く異なる性質> 福島第1原発の廃炉で生じる廃棄物の最終処分は、さらに困難だ。高濃度の放射性物質や塩分が付着し、原発で通常発生する廃棄物と性質が全く異なるためだ。 30〜40年が見込まれる廃炉工程で、東京電力が廃棄物の発生量を想定しているのは15年度まで。がれきが約18万トン、汚染水が63万〜67万トン、ほかに汚染水からの放射性物質除去に用いた樹脂やタンク、配管など大量の2次廃棄物もある。 これとは別に1〜3号機の原子炉内で溶けた燃料(溶融燃料)も最終的に廃棄物となる。燃料が溶け落ちているとみられる格納容器内では昨年、2号機で毎時72.9シーベルト、1号機で同11.1シーベルトの極めて高い放射線量が計測された。人が近づけないため燃料の状態すら分からず、「今後の見通しを示すのは困難」(東電)な状況にある。 溶融燃料以外の廃棄物について、東電と国は20年度までに処分方法の研究開発を終え、21年度に具体的な処分方法を決めたい考えだ。東電は「当面は原発敷地内で保管する」としているが、その後の最終処分先は「未定」と繰り返す。
<当面は一時保管> 5月中旬、廃棄物埋設施設の新規制基準を話し合う原子力規制委員会検討チームの会合で、メンバーの一人が「福島第1原発はどうするのか」とただした。規制委事務局の原子力規制庁がまとめた新基準の基本方針に、福島第1原発の廃炉廃棄物はひと言も触れられていなかった。 規制委の更田豊志委員は「埋設でなく『管理』での対応になる」と説明した。事故炉から出た厄介な廃棄物は埋設という最終処分を考える段階になく、当面はどこかで一時保管するしかない−との見解だ。 放射性廃棄物の最終処分は、原発を持続的に稼働させるために避けて通れない問題だ。その解決を先送りしてきたつけは原発の末期に直面し、さらに重さを増している。
[東海原発]日本初の商業用原発で1966年に運転開始。現在主流の沸騰水型、加圧水型の軽水炉と異なる黒鉛減速・炭酸ガス冷却型で出力は16.6万キロワット。98年に運転を停止した。廃炉は当初2017年度に完了予定だったが、原子炉解体の環境が整わず3年延長した。計画では14年度から原子炉の解体に着手する。
2013年06月05日水曜日
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