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神話の果てに−東北から問う原子力
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第8部・核廃棄物の行方(3)袋小路/最終処分場化を懸念

除染廃棄物の搬入と並行して進められる仮置き場の造成作業。膨大な廃棄物に対し、確保できた仮置き場は圧倒的に少ない=5月中旬、福島県川俣町

<果てしない作業>
 運び出す先が決まらないまま、雑多な除染廃棄物が積まれていく。
 福島県川俣町飯坂の除染廃棄物仮置き場。黒のフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)を積んだトラックが、ひっきりなしに往来する。
 作業員が重機を使ってフレコンバッグを積み上げ、仮置き場を作る。いつまで保管されることになるのか、作業員の男性が心配そうに話す。
 「ここから本当に、別の場所へ運び出せるんでしょうかね」
 福島第1原発事故によって、福島県内は広範に汚染された。大地に降り注いだ放射性セシウムなどを取り除こうと、果てしない作業が続く。
 国は11市町村にまたがる旧警戒区域と計画的避難区域を直轄で除染する。だが、除染廃棄物の保管場所が絶望的に不足している。
 浪江町は142ヘクタールの仮置き場が必要だが、全く確保できていない。飯舘村も140ヘクタールに対し、1割の14ヘクタールにとどまっている。「(仮置き場から除染廃棄物を運ぶ)中間貯蔵施設のめどが立たなければ、仮置き場建設にも住民の理解を得られない」と浪江町の担当者は嘆く。

<30年後は県外へ>
 国は2012年7月、福島県を除染廃棄物の最終処分地にしないことを閣議決定した。その約束の下で、30年間に限って県内保管する中間貯蔵施設の設置を目指す。
 だが県内では早くから「最終処分場」になりかねないと心配されてきた。県外に除染廃棄物を運び出せるとは、とても思えないからだ。
 国が発表した中間貯蔵施設のイメージ図は、重金属や有害産業廃棄物を埋め立てる「遮断型最終処分場」の構造とそっくり。そのことも県民をさらに不安にさせた。
 環境省が示した計画では14年夏に着工し、15年1月に搬入を始める予定だが、福島県内に建設するのかどうかさえまだ正式には決まっていない。
 30年後に運び出すという「県外」の最終処分地の選定作業となると、全くの手つかずだ。
 「最終処分地にはしない」という約束の下に放射性廃棄物がたまっていくのは、核燃料サイクル施設を抱える青森県の状況と重なる。
 青森県が国から「高レベル放射性廃棄物の最終処分地にはしない」との確約書を得てから18年。最終処分地決定の見通しは全く立たず、青森に貯蔵、保管される高レベル廃棄物は増えていった。

<自宅庭に「埋設」>
 福島県内の除染作業は全59市町村のうちの43市町村で実施され、廃棄物の総量は1500万〜3100万立方メートルに及ぶと見積もられている。
 福島市も仮置き場の確保に苦しむ。住宅約9万戸の除染のために18カ所の仮置き場設置を目指すが、めどが立ったのは6カ所にとどまる。
 苦肉の策として住宅敷地の地下に置く「現場保管」を採用し、昨年末までに2274件実施した。つまり仮々置き場だ。市の担当者は「仮置き場の確保ができなければ、現場保管の数はさらに増える」と話す。
 福島市北五老内町の主婦永井三千代さん(44)も、自宅の庭の地下に放射性物質に汚染された土砂などを「埋設」した。
 「運び出す場所が決まらなければ、福島県全域が最終処分場ということになりかねない」と永井さんは危ぶむ。それが杞憂(きゆう)だという保障はまだない。


2013年06月04日火曜日

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