学校と精神科(3) 女子中学生の死

 患者や家族からセカンドオピニオンを求められることが多い精神科医も、「最近、教育関係者からの相談が増えている」と指摘する。

 関東地方の中学の女子生徒は、友人の言葉で過度に傷ついたり、泣き出したりするなど情緒不安定になり、不登校に陥った。養護教諭らの勧めで精神科病院を受診し、「友達に悪口を言われている」「仲間はずれにされる」などと打ち明けた。この年代にはよくある悩みだが、これを被害妄想と決めつけられ、「統合失調症」と診断されて抗精神病薬などが出された。

 服薬を続けるうちに、体調が悪化して入院。何日も高熱が続いた後、死亡した。女子生徒の死後、養護教諭からの相談電話で事情を聞いた精神科医は「(薬の影響で起こる)悪性症候群の可能性が高い。適切な処置がなされず、亡くなったのではないか」と見る。

 そもそも、この女子生徒は統合失調症だったのだろうか。精神科医は「初潮を迎える時期に、ホルモンバランスが崩れて精神的に不安定になることはよくあること。それを統合失調症と診断するのはとんでもないことだが、このような診断能力ゼロの精神科医がますます増えている」と嘆く。

 別の中学の養護教諭からも、相談があった。精神科につなげた女子生徒が、自殺したという。この生徒も、情緒不安定で精神科を受診し、統合失調症と診断された。抗精神病薬と抗うつ薬が重ねて出され、服薬するうちに起こった悲劇だった。遺書はなく、衝動的な自殺だった。

 精神科医は「極めて不適切な薬の処方で、衝動性が高まった可能性は捨てきれない」と見ている。

 この2例は、「学校と精神科1」でふれた死亡例ではない。子どもの精神疾患に対して「早期発見、早期治療」のかけ声が強まる中、全国でどれほど、同様の悲劇が起こっているのだろうか。


 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

 「精神医療ルネサンス」は、医療情報部の佐藤光展記者が担当しています。
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2012年6月1日 読売新聞)

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