被害者の怒り渦巻く 来年は変わるのか?

 「ならずもの医療」編の連載中だが、2回目は年明けの掲載とし、今回はこの1年を振り返ってみたい。

 2012年、最も反響をよんだ記事のテーマは、「抗不安薬・睡眠薬依存」だった。新聞とこのコーナーで繰り返し取り上げ、12月も朝刊連載「医療ルネサンス」で、治療に取り組む病院などを紹介した。そこでも書いたが、今や、病院で専門治療を受ける薬物依存症患者の2割が、処方薬依存の患者となっている。特に、女性患者は処方薬依存の割合が高く、入院する薬物依存症患者の4割を占める病院もある。タガが外れた漫然投薬によって、被害が急速に拡大しているのだ。

 厚生労働省も、処方薬依存の深刻さを認識し始めている。11月から定期的に開かれている「依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会」では、私だけでなく、医師や当事者ら複数の構成員から、処方薬依存の早急な実態調査と対策を求める声が上がった。被害者もさらに声を上げ、及び腰の医療関係者を動かしていく必要があるだろう。

 精神科医の暴言特集も、朝刊記事やこのコーナーで大きな反響を呼んだ。患者に対する蔑視が感じられるこうした実態に対し、「精神医療を変えたい」と第一線で努力する精神科医が漏らした言葉が忘れられない。

 「精神科医はこれまで統合失調症患者に甘え過ぎた」

 統合失調症患者を「内向的で、思いやりがあり、やさしい人たち」とみる精神科医は多い。病気で一時的に乱れる事はあっても、統合失調症患者は総じて「控えめ」だという。「最近は話していて疲れる患者が多いので、統合失調症患者が来るとほっとする」と語る精神科医もいる。そうした、いわば「羊」のような人たちを相手に、精神医療は成り立ってきた。

 ところがこの10数年、精神医療の対象がどんどん拡大した。社会の第一線で働く人たちが、「うつ病」「不安障害」「双極性障害」などと診断される時代。おかしいものを、はっきりと「おかしい!」と言う人たちが、精神科の患者になったのだ。そうした人々が、精神科の診察室や病棟で目にしたのは、驚きの実態だった。

 「精神科医の言動が変だ」「どちらが病気なのか分からない」「主治医に処方薬依存の記事を見せたら急に怒り出した」「インクのシミの見え方(ロールシャッハテスト)だけで人格に問題があると決めつけられた」「初診で抗不安薬が2剤と睡眠薬が3剤出た」「担当医が変わる度に診断名が変わる。私は一体なんなのでしょうか」……。そうした類のメールが、数え切れないほど届いた。会社員、会社役員、主婦、大学生、国家公務員、地方公務員、医師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士、教師など、さまざまな立場の人たちが、精神医療への怒りをぶちまけた。自分自身や家族が、不適切な精神医療で被害を受けた人も多い。

 ネットの特性で、海外からのメールもよく届く。国外に出ると、当たり前と思っていた日本の医療技術や医療システムが、実はとても良かったことに気付かされるものだが、精神医療に限っては「日本の異常さを思い知った」とする声が多い。「海外赴任をきっかけに、子どもを誤診と過剰投薬から救うことができた」というメールもあった。精神医療の問題は、諸外国でも数多く指摘されているが、それでも日本よりはマシということなのだろうか。

 最後に、メールをひとつ紹介しよう。こうした患者の訴えを、「極端だ」と聞き流していては何も改善しない。精神医療を変えるには、精神科医が患者や家族の声を真摯に受け止め、変わるしかない。来年こそは、その兆しが各地で見られることを期待したい。


 精神医療が、あたり前のようにまかり通っている世の中が嫌でたまりません。患者の心を救うはずの向精神薬の中には、依存性の高い、言わば麻薬の様な薬もあります。それなのに、精神科医は平気でそんな薬を処方する。

 どんなに薬の事を精神科医に話しても、「ネットの情報は見るな!」「薬の本は見るな!」と言う。しかも、私が通院する病院の医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士はみな、言葉が横柄。一番、患者を傷付けてはいけないそんな医療スタッフが、平気で患者を傷つけるありさまなのです。

 医師にそれを訴えたところで、改善されるどころか薬を増やし、あろう事か「うっぷんがたまっていますね。カウンセリングを受けた方がよい」と言う。「は?」。意味がわからない。

 しょせん患者は金のなる木。私が通う病院も、こんな時代に病棟が新しくなる。患者の為の治療ではない。平気で患者を薬漬けにし、スタッフの暴言で患者を追い詰め(実際に自殺した患者までいる)ている。国はもっと、日本の精神医療のあり方をしっかり考えて欲しい。患者がどんなにこの現状を訴えたところで、何も変わらないのが私は悲しい。



 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

 「精神医療ルネサンス」は、医療情報部の佐藤光展記者が担当しています。
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2012年12月28日 読売新聞)

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