副作用の眼瞼けいれん 最近まで眼科医も知らず

 ベンゾジアゼピン系薬剤が眼瞼けいれんを引き起こす可能性があると書いた前回の記事を受け、精神科医の斉尾武郎さんから体験談が寄せられた。紹介してみよう。

 5年ほど前、斉尾さんの患者の中に、病気を過度に恐れる心気症の70歳代女性がいた。ひとまず経過をみていたが、女性は眼科や神経内科でメージュ症候群(眼瞼けいれんに加え、口や下顎などにも同様の不随意運動が起こる病気)と診断され、ワイパックスなどのベンゾジアゼピン系薬剤を処方されていた。

 眼瞼けいれんは悪化する一方で、ついに両目が開かなくなった。そこで斉尾さんは「ベンゾが原因ではないか」と眼科に伝えた。すると眼科医は腹を立て、「医者(精神科医)をかえろ」と女性に要求し、斉尾さんから引き離した。

 眼瞼けいれんに対しては、症状を和らげる目的でベンゾ系薬剤が使われやすい。短期間であれば効果が得られるが、長期に使用すると、副作用で逆に眼瞼けいれんが悪化することがある。この女性も症状悪化と共にベンゾが追加され、どんどん悪くなった。

 斉尾さんは「眼科医も神経内科医も、数年前まではベンゾが眼瞼けいれんを引き起こすことを知らなかった。東京の眼科医の有志が、この問題についての研究会を作ったことをきっかけに、やっと影響が指摘されるようになった」と語る。

 まぶたが閉じたままの機能的失明に陥った女性のその後は、斉尾さんも知らないが、眼科でのベンゾに加え、精神科でもベンゾが処方された可能性がある。「それでは治るわけがない」と斉尾さんは嘆く。


 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

 「精神医療ルネサンス」は、医療情報部の佐藤光展記者が担当しています。
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2012年10月19日 読売新聞)

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