薬が眼瞼けいれん誘発  不必要な手術も

 ベンゾジアゼピン系などの向精神薬を長期間使うと、副作用で眼瞼けいれんが起こることがある。これは、疲労時などに表れるまぶたがピクピクする症状とは違い、脳神経に支障が出て起こる病気だ。まぶたの動きが不自然になり、目をきちんと開けられず、まばたきが増える。悪化するとまぶたが閉じたままになることもある。感覚も過敏になり、強いまぶしさや目の乾きを訴える。こうした症状のため、抑うつ状態に陥る人もいる。

 以前の記事で、光過敏をベンゾジアゼピン系薬剤の典型的な離脱症状として取り上げたが、これも眼瞼けいれんから生じている可能性がある。この問題は、9月の夕刊「こころ面」で医療情報部の中島久美子記者が取り上げ、眼科医の間で次第に認識が高まりつつあるが、多くの精神科医や内科医はこうした知識を持たず、薬を出し続けている。

 ジアゼパムなどのベンゾ系薬剤を長く服用する40歳代の女性は、眼瞼けいれんで左目のまぶたが開かなくなり、大学病院で手術を受けた。しかし手術後も調子が悪く、まぶたの筋肉の緊張を注射で和らげるボトックス治療を受けている。ところがつい最近、眼科医にこう言われたという。「(あなたの症状は)精神科の薬が影響していたから」。

 精神科医がもっと慎重な薬物治療を行っていたら、この女性の眼瞼けいれんは起こらなかったということだ。手術も、ボトックス治療も必要なかったのだ。女性は「何かもう分かりません。どうでもいい気持ちです」と苦しい胸の内を明かす。

 2011年に日本神経眼科学会がまとめた「眼瞼けいれん診療ガイドライン」の一部を紹介しよう。医師向けの情報だが、精神科や心療内科に通う患者も、身を守るためにぜひ知っておきたい。

 抗不安薬であるベンゾジアゼピン系のクロナゼパム(リボトリール)、チエノジアゼピン系のエチゾラム(デパス)などの長期連用、あるいは比較的短期であっても増量や薬剤変更などによって薬剤性に本症(眼瞼けいれん)が誘発されることがある。本邦では患者の50%にクロナゼパム、38%にトリヘキシフェニジル(アーテン)、29%にジアゼパムが投与されているとの報告がある。

 トリヘキシフェニジルは、パーキンソン病の手のふるえや体のこわばりなどを抑える薬として使われるが、向精神薬の副作用で表れる不随意運動などを抑える目的でも使われる。


 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

 「精神医療ルネサンス」は、医療情報部の佐藤光展記者が担当しています。
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2012年10月11日 読売新聞)

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