■vol.8
「典型的なパターン」の
どこかを変えてみよう!
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◇ストーリーの「典型的なパターン」を使ってアイディアを生み出す
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~ストーリーの「典型的なパターン」~
この世には多くの作品がありますが,その多くの作品でみられるパターンというものがあります。これは昔から作られてきた「典型的なストーリー展開のパターン」なのです。「王道」といわれるものですね。パターンはおもに,以下のようなものがあります。
① 悪者を倒す・勧善懲悪(ヒーロー,チーム,集団が悪いやつをやっつける。異能・超能力バトル、心理戦)
② 宝探し(物,場所)
③ 問題解決モノ(問題・難題を特殊な能力・技能・知識・機知などで解決する)
④ 恐怖モノ(危険な目に遭う,狙われる、ホラー)
⑤ ラブストーリー(恋愛モノ)
⑥ 三角関係(葛藤)
⑦ 平凡な人が平凡な日常から,とんでもない事件・出来事に巻き込まれる
⑧ スポーツモノ、勝負モノ(ゲーム・レース・賭け事 等)
⑨ 友情モノ
⑩ 願いをかなえるモノ(主人公の願望が叶う 『ドラえもん』『ああっ女神様』など)
⑪ 能あるタカは爪を隠すモノ(じつは強かった,じつは偉い人だった 『水戸黄門』など)
⑫ 復讐モノ
⑬ 推理モノ ①犯人(正体)はだれだ? ②なぜやった? ③どうやってやった?(ミステリ,サスペンス)
⑭ ロードムービー(目的地へ行く,道中モノ)
⑮ 戦記モノ
⑯ サクセスストーリー(出世物語)
⑰ 追いかけっこ・逃走劇
……などなど。
まず,これらに分類される既成の物語作品を思い浮かべてみましょう。古典,古い名作なども挙げてみましょう。
~典型的なパターンに「変更要素」を加える~
そうしたら,これらの典型的なパターンに「なにかの変更要素」を加えてみましょう。
次のようなものが考えられます。
◎ 舞台,世界観,場所,時代,いずれかの要素を変えてみる。
◎ 生活環境・家族構成を変えてみる。
◎ 別な設定に置き換えてみる。(スポーツものをバトルものにとか,時代劇をSFにとか)
◎ 扱っているモチーフを変えてみる。今風の題材にアレンジしてみる。
◎ 人物の性別を変えてみる。
◎ 主人公の性格・人格・知性・能力を変えてみる。(増やしたり,減らしたり,無くしたり,付け加えたり,反転,逆転)
◎ 主人公交代,サブキャラを主人公にしてみる。スピンオフ。
◎ 別なキャラの視点で描いてみる。
◎ 人間関係を変更してみる。
◎ ギャグ要素を加えてみる。
◎ 恋愛要素をプラスしてみる。
◎ 恋する相手を変えてみる。
◎ ある一点の要素を強調してみる。
◎ 結末を変えてみる。
◎ 裏話を考えてみる。
◎ キャラクターだけそのままで,別な世界観の別な話,別な状況を考えてみる。
◎ キャラクターの性格はそのままで,人物配置・相関関係を変えて,舞台・時代も変えてみるみる。
◎ シリアスをギャグに,ギャグをシリアスにしてみる。
……などなど。
例)『ロミオとジュリエット』の舞台を現代風に置き換えたのが『ウエスト・サイド・ストーリー』です。
~元ネタは「野球のチーム」だった『サイボーグ009』~
石ノ森章太郎著『石ノ森章太郎のマンガ家入門』の中で、石ノ森章太郎氏の名作『サイボーグ009』は「野球をもとにして発想していった」ことが書かれています。
野球の「9人のチームワーク、戦い」という要素を「SFの世界観」に置き換えて、「9人のサイボーグ(改造人間)が悪い組織と戦う」というストーリーを発想していったそうです。そして、なぜ主人公たちが改造人間にされてしまったのか、敵の目的はなにか、主人公たちの個々の特技・特殊能力はどんなものかという細かい設定を決めていって『サイボーグ009』ができたそうです。(詳しくはぜひ『石ノ森章太郎のマンガ家入門』をご参照ください。マンガ形式でわかりやすく説明されています)
~宮崎駿氏曰く「我々の仕事は前の世代から受け継いだものを,次の世代に伝える事なのだ!」~
わたしたちは最初は何もできませんが、なにかを学ぶ事によって能力を高め、才能をのばしていきます。この「学ぶ」という言葉の語源は「まねぶ」といい、人のやることの真似をすることから学習というものがはじまる、そういう意味があるそうです。昔の職人さんなんかは、お弟子さんになにかを教えたりすることは一切なく、「技を盗め」などと言うように、親方のやっていることを見て「真似する」ことで親方の持つ技術を習得していきました。かけ出しの人を「見習い」と言うとおり、親方を「見て習う、真似をする」ということが、上達のいちばんの近道であり最も効果的な学習手段なのではないかと思います。
物語を作る上でもまず「真似をして作ってみる」ということはとても重要なのです。
しかし、ここで出てくるのが「パクリ」という問題です。この作品とあの作品が似ている、この部分なんかそっくりだ、ネット上ではそうした論争が絶えません。類似点をみつけたファンは鬼の首を取ったようにその似ている作品を血祭りに上げて悦に入ります。しかし、この姿勢は物語の作り手としては間違っています。「他作品のまんまコピー」というケースは別として、誰かの作品と似てしまう事、ネタが被ってしまう事というのは良く起こるのです。なぜなら、物語の作り手は他の作品や事柄からアイディアやヒントを得ながら、物語は作っていくからです。これは「パクリではない」とわたしは思います。なぜなら、ヒントやアイディアを得ながらも、別の新しいモノ(たとえすごく似ていても)を作り出しているからです。ある意味「マネし、マネされる」ことで物語文化全体の技術水準というものは向上していくのではないかと思います。
宮崎駿氏は言いました。「我々の仕事は前の世代から受け継いだものを,次の世代に伝える事なのだ!」と。パクリとか,そういう事ではなくて,創作の本質とはそういうものなのだなぁということを見事にいい表した言葉です。
まんまコピーはではなく、先人の作品の一部でもアレンジして自分の物語にとり入れれば、まったく新しいものができるのです。
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◇典型的な「人間関係のパターン」を使って発想する
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~王道の人間関係を使おう!~
キャラクター同士の関係において,この王道のパターンは強力な力を発揮します。例によって,これにアレンジを加えても良いものができます。そのままでもいいです。
① 主人公とライバル
② 主人公とヒロイン(恋愛関係,対立→恋愛関係)
③ 反対の気質や考え方・価値観を持つパートナー同士
④ 仇
⑤ 敵
⑥ 師匠と弟子
⑦ 主人公と狂言回しの小動物・妖精
⑧ 三角関係
⑨ 敵が味方になる
⑩ 親子・兄弟・夫婦・親族間で敵対する
⑪ 上司と部下
⑫ 探偵と助手
⑬ 戦隊モノ5人組のパターン
⑭ 藤子不二雄パターン(『ドラえもん』などの主要キャラ)
⑮ 主人と有能な家来(弁慶と牛若丸など)
⑯ 怪物と少女(美女と野獣など)
王道のパターンというのは,やはり多くの人が面白い,先が気になるという気持ちを抱く優れたストーリーなのです。だからこそ王道たりえるのです。
今,発表されているエンタメ系の物語は,ほとんどがこの典型的な王道パターンをアレンジしたり,膨らませたり,今風にしたりしたものです。
物語のアイディアを考える段階で,この典型的なパターンに,新しい別要素を加えてみることで,思わぬアイディアが浮かぶかもしれません。
ぜひ,このパターンをいろいろと手を加えて,今によみがえらせた古き良き古典をつくってみましょう。
では,本講の最後に演習をやってみましょう。
演習
自分の好きな作品の一箇所(あるいは何箇所か)を変えて,別の物語を作ってみましょう。
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