東京に出てきた若者が、アルバイトに精を出しながら安アパートで暮らす。こうやって書くと、なんの変哲もない状況だが、この若者が異世界から来た魔王だとすると、かなりのギャップが加わり趣が変わってくる。TOKYO MXなどで放送中の「はたらく魔王さま」は、そんな設定のライトノベルのアニメ化だ。
ハンバーガー店の優秀なアルバイト店員・真奥貞夫は、実は異世界エンテ・イスラの魔王。勇者エミリアとの戦いに敗れ、地球へとやってきたのだが、魔力は使い果たし、一介の無職の青年として暮らすことになる。ようやく見つけたバイトで正社員を目指し勤労に励む真奥の前に現れたのは、遊佐恵美と名乗り、テレホンアポインターとなって地球で働いているエミリアだった。本作では「働くこと」と「食べること」が密接に結びついて描かれ、等身大のプロレタリア・アニメといった雰囲気もあり興味深い。
象徴的にいうと、本作は、真奥のアパートのドアが開いたり閉じたりするたびに、なにかしらの一騒動が巻き起こる作品である。現実から跳躍するギャグと異なり、コメディーは地に足がついた世界観が前提だ。本作では真奥のアパートに代表される日常の空間にこだわることが、笑いにつながっている。
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