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旅の言い訳

■ 予告していたように〈古典ハードボイルド一人旅〉を刊行中なのですが、いまだ、記事にできない状況が続いています。状況報告ですが、現在まで、ローレンス・ブロック、スー・グラフトン、ロス・マクドナルド、マイクル・Z・リューインなどを順番に回し読みしております。〈旅の報告〉はいずれまた。

青春ミステリと〈女性の魔法〉

■ 樋口有介さんは、青春ミステリの書き手として評価が高い。しかし、〈人間いくつになっても青春〉などと言っても、精神はともかく、身体のほうは正直なものでついて行かない。そんなわけで、青春ミステリを敬遠してしまう今日この頃。樋口さんの本も、『雨の匂い』くらいしか読んだことはありません。〈新古典日本ミステリひとり旅〉を敢行中ということもあり、青春ミステリではありませんが、彼の代表シリーズ、〈柚木草平シリーズ〉の第1作『彼女はたぶん魔法を使う』(創元推理文庫・2006年)を読みました。1990年刊行です。何ともキャッチーなタイトルで、私が高校生の時に出ていたならば、たぶん買いましたね。カバーのイラストも素敵です。最上佐知子さんです。

■ 本書は、広い意味では、ハードボイルドものです。主人公の柚木草平は、犯人をやむを得ず射殺してしまったことをきっかけに、警察を辞め、家族ともうまくいかなくなり、妻と一人娘と別れて暮らすようになります。別居の本当の理由は、彼の生来からの(つまり「病気」)〈女好き〉にある。現在は、雑誌に刑事事件のルポを書き、いまの〈彼女〉でもある警視庁のキャリア吉島冴子からまわってくる事件調査で、なんとか生活している。そんな彼のもとに、いつものように警察では面倒見切れない事件の調査依頼が冴子から来ます。

女子大生が自宅近くでひき逃げされる事件が起こるが、奇妙なことに、車種も年式も特定されているのに一カ月たっても犯人が検挙されていない。その被害者の姉は、単純なひき逃げ事故ではなく、妹は殺されたのだと思い詰め、事件を依頼してきたのである。〈女好き〉の草平は、事件性は薄いと思いながら、依頼者の美しさについつい惹かれて調査を引き受けることになる。

調査を進めるも、被害者の女子大生は、殺されなければならないほど他人から恨みを買うようなことはない。依頼者の姉には、草平に何か隠していることがあるようだ。警察は、怠慢から捜査を〈放棄〉しているわけでなく、捜査は継続中で、なぜか自動車の登録から持ち主を割り出すことができないでいた。姉は、なぜ高い金を払って事件の調査を草平に依頼するのか。そして、妹思いの楚々とした姉には、草平の知らない別な顔があった。そんな中で、被害者の女性に積極的にアプローチをしていた同級生の学生が殺され、その前のひき逃げ事故が殺人である疑いが濃厚になります。

■ ハードボイルドの探偵は、大きく分ければ、口が達者な探偵と、無口な探偵に分けられる。ただ、総じていえることは、煙草と酒がやめられない。草平は前者。口達者にもいくつかのタイプがあります。たとえば、東直己さんの〈ススキノ探偵〉も口が減らない探偵ですが、彼の場合の軽口は、たいていヤクザに追いかけられて絶体絶命のときに吐く〈やせ我慢〉的なものです。草平の場合は、女性に向けられたもので、半分以上は〈口説き〉が入っています。女性と見れば、〈口説くのが礼儀〉みたいなところがある。君は、フランス人かイタリア人か。聞き込みに行った先の花屋のおばちゃんにすら、「薔薇の花束を贈ろう」などといって、一笑に付される。

草平は、〈女性の魔法〉にかかりやすい体質なのかも知れません。男はみんなそうなのかも。いえ、女性にはそういう〈魔法〉があるのかも。ともかく、これは、〈女好き〉にとって〈便利な言い訳〉です。さて、次回からしばらく、〈古典ハードボイルドひとり旅〉に出ることにします。

彼女はたぶん魔法を使う: 1 (柚木草平シリーズ)彼女はたぶん魔法を使う: 1 (柚木草平シリーズ)
(2012/01/01)
樋口 有介

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テーマ:ミステリ - ジャンル:小説・文学

昭和40年生まれと投手

■ 年齢つながりで言えば、前日本ハムファイターズ投手コーチの吉井さんは、私と同い年です。数年前、直接球場でお会いしたのですが(もちろん一ファンとして握手してもらっただけです)、その時、同い年だとは思えない貫禄でした。186㎝とでかいせいかもしれません。ちなみに、私と同い年の大投手は結構います。工藤さん、斉藤昌さん、与田さん、小宮山さん、武田一浩さんなど。キャッチャーでは古田さんですね(昔、古田さんに似ていると言われまた私ですが、今はその面影はない・・・)。その吉井さんが書いたのが、『投手論』(PHC新書・2013年)です。日ハムファンの私としては、堪えられない一冊でした。

吉井さんによれば、ダルビッシュが成功したのは、もちろん指先の器用さもあるけれど、身長の割には〈腕が短い〉ということにあったとか。斎藤佑樹は、身体の強さと闘争心を持った類い希な投手であり、また賢い投手でもある。しかし、賢いがゆえに頑固であるとか。誰もがそう思っているように、吉川は、他の投手が羨ましがるほどの天賦の才能があるのに、勇気がもてず、ここ一番で弱きになるとか。武田勝は、小さな身体で努力を重ねてエースの座をつかんだように思われるが、実際には、天才肌で、猫みたいに気まぐれな投手であるとか。〈ああやっぱり〉と思うこと以上に、〈えっ、そうなんだ〉と思うことがいっぱいです。

■ 吉井さんが言うには、投手に一番大切なのは、〈やせ我慢〉だそうです。投手はどんなに不安でプレッシャーに押し潰されそうになっていても、相手に絶対弱みを見せてはいけない。読んでいて、マウンドに1人立つ投手と、教壇に1人立つ教師は、なんとなく似ているなと思いました。300人の学生の前に立っても、絶対ビビっていると学生に思われてはならない。マイクが故障しようが、パワーポイントがスクリーンに映らなくても、平然と授業を進めなければならない。300人を〈抑え込む〉には、そのくらいが度胸が必要です。300人が一斉に教壇に詰め寄ろうものなら、教師は一溜まりもありませんし、授業は即崩壊です。

授業するまえによく勉強し、使うテキストを読み込み準備するのは当たり前。プルペンでの投げ込みと一緒です。そして、教室での〈持ち球〉は、自分の〈しゃべり〉と黒板とパワーポイントとビデオです。しかし、パワーポイントとビデオは〈変化球〉で、多投すれば、教育効果を失う。やっぱり、教師にとっての〈ストレート〉は〈しゃべり〉であり、〈決め球〉は黒板です。江川が〈ストレート〉と〈カーブ〉だけで闘ったように、教師も、〈しゃべり〉と黒板で闘うのが一番です。いろいろな〈変化球〉を投げてきた私が最近到達した、あまりにも当たり前の結論です。さて、私のシーズンが今日始まりました。学生さん、お手柔らかに。

投手論 (PHP新書)投手論 (PHP新書)
(2013/03/17)
吉井 理人

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

主人公の年齢

■ 今日は大学の入学式です。私は約30年前でした。歳をとったからなのか、ミステリを読んでいると、主人公の年齢がとても気になります。自分が若い頃ならば、なんとなく、探偵でも警察官でも、ミステリの主人公は、たいてい自分より上だし、〈おっさんだなぁ〉ぐらいにしか思いませんでした。しかし、自分の年齢がかなり〈いっちゃってくる〉と、主人公の年齢が自分より上なのか下なのかが、妙に気になります。ただ、多くのミステリには、主人公の年齢が〈××歳〉と書かれていなくても、妻子がいるかとか、職業の階級が何かといったことから推測できます。

しかし、岡嶋二人さんの『あした天気にしておくれ』(講談社文庫・1986年)の主人公〈私〉の年齢が今ひとつつかめない。結婚して8年というから、たぶん30代でしょう。では、アラサーなのか、アラフォーなのか。子どもは、〈私〉の希望から作らないと夫婦で決めたのでいない。そこから推測することもできない。前職は、競馬記者であり、現在は、牧場を経営する社長に引き抜かれて、サラブレッドと牧場の管理を任されている。競馬をやらない私は、そのためにどの程度の〈経験値〉が必要で、そのためにはどのくらいの年数が必要かわからない。そして、〈私〉は、雇われている社長に対しても、かなり言いたいことを言う。なので、社長との年齢差がどのくらいなのかも読めない。〈私〉の年齢がわからないので、どうも主人公の〈私〉に感情移入できず、本書を読んでいても何となく落ち着きません。

■ しかし、そんなことはどうでもいいほどに、本書は面白い。すばらしい血統をもつサラブレッドの〈セシア〉に付けられた値は、3億2000万円。この馬を4人の男が、8000万円ずつ出して購入します。ところが、牧場を移す際にトラブルがあって、足を骨折します。骨折は治るとしても、サラブレッドとして期待通りに走ることはおそらくできない。この事故は、4人の馬主の1人の牧場で起こったもので、その牧場の管理をしていたのが〈私〉でした。〈私〉は、この牧場とそこで働く牧夫たちを守ろう決め、この事故を隠蔽するために、馬の〈誘拐〉事件をでっち上げます。

身代金は2億円。〈セシア〉の馬主たちも、まだ一度も走っていないサラブレッドに、3億に加えて2億も払うとは思えない。そう〈私〉は踏んでいたのですが、〈セシア〉は日本競馬の宝であるとして、身代金を払うべきだと強硬に主張する馬主が出てきて、事態は複雑な様相を呈してきます。そして、〈私〉と社長のところに、別な脅迫状が届きます。〈私〉が計画した〈誘拐事件〉を別人が乗っ取ろうとしている。〈私〉としては、〈セシア〉が殺されたと世間に思いこませるのが目的ですから、はなからこの狂言誘拐を成功させるつもりはない。しかし、〈私〉と社長を脅迫する謎の人物は、実際に、2億を奪取しようとしている。この脅迫者は、競馬ファンの集まる東京競馬場を舞台に、いったいどのような手段を使って身代金を強奪しようというのか。競馬に詳しい〈私〉にもわからない。

■ 本書は、一見したところ倒叙物ですが、〈私〉は、絶対に誘拐を成功させるつもりはないから、完全犯罪の倒叙物ではない。むしろ、〈私〉は、この誘拐事件を失敗させるために奔走することになります。ミステリの謎は、〈私〉を脅迫する者が誰か、そして、〈私〉が絶対に成功する見込みはないと考える身代金の受け渡しをいかにして成功させるつもりなのか、という点にあります。〈誘拐事件〉の背後にもう1つの〈誘拐事件〉があり、〈脅迫者〉の後ろに便乗する何人も〈脅迫者〉が登場して、ラストまで筋が読めません。〈私〉は、自分で計画した〈誘拐事件の失敗〉に成功することができるのか。このツイストが面白い。続けて岡嶋二人さんを読んでよかったです。

あした天気にしておくれ (講談社文庫)あした天気にしておくれ (講談社文庫)
(1986/08/08)
岡嶋 二人

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

不思議の国の殺人事件

■ 今日から新年度です。入学式前ですが、いきなり1年生のオリエンテーションがあります。なので、仕事モードです。来週から授業も始まりますし。

山口雅也さんの『日本殺人事件』(角川文庫・1994年)は、エラリー・クイーンの〈国名シリーズ〉のパロディか思いきや、必ずしもそうではなく、奇抜な本格ミステリとして楽しく読みました。主人公の東京サムは、アメリカで私立探偵をやっていましたが、母の母国である日本に憧れはるばるやってきました。母と言っても、父の再婚相手で血のつながりはなく、サムを可愛がってくれた彼女との思い出もたった6ヶ月にすぎません。交通事故であっけなく亡くなってしまったからです。

■ サムは、母の生地カンノンという町で、彼の理解を超えた3つの奇っ怪な事件に出くわします。この3つの事件は、日本人にも理解できない日本文化の特徴を言い表す3つの言葉、〈ハジ〉〈ワビ〉〈イキ〉にちなんだ事件です(変な言い方ですが)。最初の事件は、アメリカの商社の日本支社長が社長のリストラに抗議し切腹する事件です(「微笑と死と」)。首なし死体の謎です。地元の警察の署長がサムに言った、「セップクは断じて自殺ではない。強いて言えば、法廷でしょう」〔57頁〕という言葉が印象的です。

第2の事件は、日本の茶道界を舞台にした殺人事件です〔「侘の密室」〕。密室殺人の謎です。サムが呼ばれたお茶会が、家元の後継問題がからんで険悪なムードの中でお開きになった後、1人茶室に残った家元の後継者の1人と目されていた男が殺されます。狭い茶室は完全に密室状態でした。サムは、義理の叔父の力を借りて、この事件を解決するも、西洋の合理主義からすれば、その解決がほんとうに解決なのか、サム自身もわからない。私立探偵のサムは、すっかり自信をなくします。

第3の事件は、遊郭で起こった連続殺人事件です。見立て殺人の謎です。サムは、カンノンの町に船で渡るときに出会った調子のいい若者に乗せられて、日本文化を知るためと称して遊郭のある島に出かけていきます。そこで、花魁道中のどさくさの中で1人の花魁が死にます。さらに、サムを相手にしていた店一番の花魁が、サムの寝ているあいだに、腕を切断されて殺される。次々に起こる殺人は、どうやら〈花鳥風月〉の見立てらしい。サムは、事件を解決する中で、遊郭という〈欲〉にまみれた世界のなかで無惨に踏みにじられた、花魁たちの〈ほんとうの愛〉を知ることになります。もちろん、アメリカ人のサムには、ほんとうのところはわからないのですが。

■ 一番先に、本書はクイーンの〈国名シリーズ〉パロディかと書きましたが、むしろ、この作品は、横溝正史先生に対するオマージュかも知れません。首なし死体の謎は、横溝正史先生が好んだ謎ですし、本書の密室殺人は『本陣殺人事件』を彷彿させます。そして、何よりも見立て殺人の謎は、『悪魔の手鞠歌』に代表されるように、横溝正史先生が最も得意とする謎です。そして、本書のもう一つの読みどころは、巻末の宮部みゆきさんの解説です。こんな解説を書いてもらえる同業の作家は幸せです。

日本殺人事件 (角川文庫)日本殺人事件 (角川文庫)
(1998/05)
山口 雅也

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

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dokuich

Author:dokuich
■ ひっそりと本を読んで世の中について考えてみる。「憲文録」は、もともとは大学で憲法の私の講義を受けている学生との連絡用のHPから出発。学生たちにもっと本を読んでほしいな、というお節介から「別冊」が生まれる。休眠期間を経て、今回、「別冊・読書日記」として再出発する。

■ ミステリとバーボンとワインをこよなく愛し、札幌ドームに足繁く通いビールを飲むのを趣味とする。もちろんファイターズも応援する。

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