しかし、1990年代当時のキョンキョンブランドといえば、もはや絶対的な存在。苦手と感じていた女優にあえて挑戦しなくても、ビジネスは十分できたのではないか。
小泉 若い頃から常に自分のことを疑ってるんですよ。例えば、コマーシャルの撮影なんかでも、たとえ現場でOKをいただけても「監督の言ったとおりにできたかな?」という疑いが常にあって、その疑いは次の仕事でしか解消できない。だからこそなにかチャレンジが必要だったのかもしれませんね。
でも、そうやっていつも新しいチャレンジを繰り返してきたからこそ、アイドルとしての生き方の一つのモデルを提示できたのかな、という気もしているんです。
結婚引退なさった山口百恵さん的な生き方は、女性の憧れではあるけど、当時のアイドルにはそういう未来の姿しか提示されていなかった。その後、松田聖子さんがご結婚、出産されても、アイドルをやり続ける生き方を見せてくれたけど、それでもモデルはその2つだけ。そんななか、歌もやれば、お芝居もするし、書く仕事もしてみるという、百恵さんや聖子さんとはまた全然違うモデルを見せられた自負はあります。
いまや女性アイドルの戦国時代。デビュー以来、30年をかけてアイドルという生き方の新しいロールモデルを作り上げた小泉の目には、2010年代のアイドルたちはどのように映っているのだろう?
■いつかすべて楽しい思い出に
小泉 去年、大変なことが起こってしまうなど、今の時代、唯一、ほほ笑ましく見られる存在がアイドルであって、彼女たちの歌う応援歌はきっと多くの人を勇気づけているはずです。私もYouTubeでAKB48の動画を「かわいいなぁ」って見まくってますし(笑)。
たぶん、今彼女たちはなにかを犠牲にして頑張っていて、それが辛く感じられることもあるはず。でも「気にせずやんなさい」って声をかけてあげたいですね。「今は若くて経験も少ないから、辛いかもしれない。でも、それって実は大した犠牲じゃないから。10年も過ぎれば楽しいことばかり思い出すから大丈夫」って。実際、アイドルって楽しいですから(笑)。
小泉今日子(こいずみ・きょうこ)
1966年2月4日生まれ、神奈川県出身。1982年、歌手デビュー。『なんてったってアイドル』ほか次々にリリース、アイドルとして活躍する。1980~1990年代には「CMの女王」といわれ、1990年代後半から女優として本格始動。映画『風花』『空中庭園』、舞台でも高い評価を得る。デビュー30周年の2012年1月、『贖罪』『最後から二番目の恋』と2本の連ドラに相次いで主演した。
(ライター 成松哲)
[日経エンタテインメント!2012年3月号の記事を基に再構成]
小泉今日子、山口百恵、黒沢清、相米慎二、蜷川幸雄、永瀬正敏、松田聖子、久世光彦、浅野忠信、岩松了、AKB48、WOWOW、ライ麦畑でつかまえて
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