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(4時間29分前に更新) |
司法も行政も住民を守らないとしたら、一体、住民は誰にこの現実を訴えたらいいのか。なぜ、沖縄だけ、何十年も基地問題で苦しみ続けなければならないのか-。判決に接して、そう感じたのは、支援者だけではないはずだ。
日米安保と基地維持にからむ問題になると、行政は思考停止に陥り、司法は臆病になる。悲しいかな、それが沖縄の現実である。
東村高江の米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事をめぐり、国が移設に反対する住民の通行妨害禁止を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は、伊佐真次さん롹(51)に通行を妨害しないよう命じた那覇地裁判決を支持し、伊佐さんの控訴を棄却した。
反対行動を続ける住民を国が訴えるという異例の裁判は「SLAPP(スラップ)訴訟」ではないか、との疑問がつきまとってきた。スラップ訴訟とは、弱い立場にある個人を相手に、政府や自治体、力のある団体などが、言論や表現を封じるため民事訴訟を起こし、相手を萎縮させることである。
住民側は控訴審で、この裁判を「反対運動を弾圧するために国が起こしたスラップ訴訟」だと指摘したが、判決は、反対運動を萎縮させることを目的に提起されたとは認めがたい、と住民側の主張を退けた。通路への座り込みなどの行動に対しては「単なる表現行為としての抗議行動にとどまらず、国による土地の利用を物理的方法によって意図的に妨害している」と断定した。
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判決は、過去の裁判例と照らし合わせながら、座り込み行動のどこまでが合法で、どこからが違法なのか、具体的な基準を示しているわけではない。
通路に座り込んで立ちふさがるような反対行動は、全国至る所で、ある意味ではごく普通に見られる意思表示の形態といっていい。その中でなぜ高江の行動が提訴の対象になったのか。判決は、その点にはまったく触れていない。
あえて忖度(そんたく)すれば、今回の工事が日米合意に基づく米軍事案だからである。
日米両政府は1996年12月、ヘリパッドの移設を条件に、北部訓練場の北側約3987ヘクタールの返還に合意した。6カ所のヘリパッドが高江の集落の近くに建設されることになり、住民は2007年7月から北部訓練場の進入路前で座り込み行動を始めた。
座り込み行動は7月でついに6年になる。
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安倍政権が本心から「県民の気持ちに寄り添う」と言うのであれば、この状態を改善するための具体的行動を起こすべきだ。
オスプレイ配備を前提にした環境アセスメントを実施し、ヘリパッドの数を大幅に減らして地元負担を目に見える形で軽減することである。
東村には新設するヘリパッド以外にも、約15カ所に既設のヘリパッドがある。
国はオスプレイ配備を地元自治体や住民に事前に告知せず、十分な説明もしなかった。住民生活や自然環境に配慮して計画を見直すのは国の義務である。