涼宮ハルヒの微笑
『涼宮ハルヒの微笑』(すずみやハルヒのほほえみ、英字表記:Smile of Haruhi Suzumiya)は、ゴンベッサが2006年10月にVIPのハルヒSSスレで連載していたSS作品。タイトルが示す通り「涼宮ハルヒシリーズ」の二次創作である。未完の原作の伏線回収・設定補完を積極的に行いつつ、オリジナルの結末を描く作風。ゴンベッサが初めて「SS」という名目で発表した作品である。
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あらすじ
涼宮ハルヒと繰り広げた愉快な高校生活から四年後。キョンはハルヒと結婚し、幸せな日々を手にしていた。しかし、突如としてハルヒが原因不明の病に倒れ、息を引き取ってしまう。キョンはかつての仲間の朝比奈みくる(大)や長門有希と接触し、時間遡行を行ってハルヒの死を食い止めようとするが、ハルヒの存在を良しとしない情報統合思念体の策略により、自身の記憶と長門を失ってしまった。
鶴屋家の居候となり、やがて記憶を取り戻したキョンは、ハルヒを救うための壮大な計画に着手する。
概要
作品の成立
当時のゴンベッサは、後のライフワークとなる『響鬼外伝 中四国支部鬼譚』の執筆を進める一方で、「涼宮ハルヒ」のアニメ及び原作ライトノベルに熱中していた。それまでオタク系アニメ作品やライトノベルにほとんど触れたことのなかったゴンベッサにとって、「ハルヒ」はまさに世界観の転換を促す契機となった作品であり、非常な熱心さを持って原作各巻を読み返しては今後の展開に思いを馳せていた。
そうしたゴンベッサの「ハルヒ熱」が、やがて創作意欲に向かったのは自然な事であったと言える。当時、「ハルヒ」の原作は第8巻「涼宮ハルヒの憤慨」までしか刊行されておらず、作中で提示された様々な伏線や設定を巡ってネット上の読者の間でも活発な議論がなされていた。それらの設定考察の影響を受けながら、ゴンベッサも独自の解釈を徐々に編み出し、それを二次創作の形で結実させたいという思いを強くしていった。そして、高専の授業時間にネタ帳数十ページを費やしてのネタ出しの末、執筆・投稿に漕ぎ付けたのが本作「涼宮ハルヒの微笑」である。執筆準備期間は約一か月にも及び、物語の整合性を取る為に原作を読み返した回数は計り知れない。
本作は、第一章の開始早々にハルヒが病に倒れ死亡するというショッキングな幕開けで始まっている。これは、『究極騎士団ユカレンジャー』の冒頭におけるユカレン戦隊の壊滅や、後の作品『RIDER WARS』における敵軍の日本侵攻などに見られるように、物語の開始早々に絶望的な出来事を配置して風呂敷を広げるという、ゴンベッサが好んで用いた手法である。結果として本作はVIPスレ読者の「掴み」に成功し、概ね好評価を受けながら、全七章+エピローグの連載が終了した。
本作の大きな特徴として、原作の伏線回収や設定補完に努めながらも、恐らく原作では実現しないであろう独自の結末を迎えさせたことが挙げられる。これについてはネット上の読者からも賛否両論があり、「原作者が絶対に書かないラスト」と称される事もしばしばであるが、この結末はむしろゴンベッサが意図的に原作の意図からずらしたのだと言える。当時のゴンベッサが長門有希というキャラクターに特に傾倒していたことも理由の一つであるが、何より、原作者の意図から敢えて外したラストを書きたいという考えがゴンベッサにあった為である。当時のゴンベッサの「ハルヒ」原作に対する“信奉”は並々ならぬものがあり、「トゥルー・エンドはいずれ原作者が書くのだから、自分はそれと被らないものを書かなければならない」「本物っぽいラストを書いたところで、本物に敵う筈がない」という考えを持っていた(まさか、それから六年経っても原作の最終巻が出ていないなどとは夢にも思わなかったが……)。
結果として本作は、VIPのハルヒ系SSの中でも上々の評価を得て各所で取り上げられ、ともすれば作者のゴンベッサ自身よりも本作単体の知名度の方が高いという状態にまでなった。尚、当時のゴンベッサは既に「響鬼外伝」の掲載サイト(後の「創作処しーらかんす」)を有していたが、当初はあくまで「響鬼外伝」の専用サイトという扱いだった為、本作の掲載には至っていない。
作品形態
本作は涼宮ハルヒシリーズ原作の形式を踏襲し、キョンの一人称視点による小説として執筆された(よって、「SS」と言っても後の都道府県SSシリーズのような台本形式のSSではない)。プロローグ+本編全七章+エピローグの構成。作品はVIPのスレに投下され、後にまとめサイトに掲載された。本作は長らくゴンベッサの管理サイト等にはアップロードされておらず、作者不詳とされることもあったが、最近になってゴンベッサは本作の誤字脱字等を修正した最新版を「創作処しーらかんす」で公開している。
また、読者の有志によるイメージ動画がYouTubeにアップロードされたり、ボイスドラマが作られるなどしているが、それらにはゴンベッサ自身は関与していない。
登場人物
SOS団
- キョン / ジョン・スミス
- 本作の主人公。大学卒業後、就職して間もなくハルヒと結婚。平穏な幸せを手に入れたかに思えたが、新婚僅か二か月にしてハルヒを喪ってしまう。
- ハルヒの死と同時に、脳内に時間平面理論とTPDD(時間遡行デバイス)を与えられ、その能力を利用してハルヒを救うことを決意。長門との接触、情報統合思念体の「老人」との一度目の激突を経て、過去の世界で記憶喪失になってしまう。その後は鶴屋家に身を寄せ、幼少期のハルヒとの邂逅によって記憶を思い出し、鶴屋家当主の助力を得て超能力者組織の設立に尽力。また、TPDDで過去や未来を行き来し、未来人組織の男性とも接触して、組織の運営に一枚噛むようになる。
- 朝倉の襲撃などのアクシデントに脅かされながらも、紆余曲折を経て長門との再接触を果たし、「老人」と再び激突。遂にハルヒを救うことに成功する。しかし、その行為は大きな「代償」を孕んでいた……。
- 涼宮ハルヒ(すずみや-)
- 長門有希(ながと ゆき)
- 朝比奈みくる(あさひな-)
- 古泉一樹(こいずみ いつき)
キョンの協力者
- 鶴屋家当主(つるや-)
- 鶴屋さん
- 森園生(もり そのう)
- 少年
- 未来人組織の男性
情報統合思念体
- 老人
- 朝倉涼子(あさくら りょうこ)
話数リスト
備考
- タイトルの「微笑」を「びしょう」と読まれることがあるが、ゴンベッサが想定した読みは「ほほえみ」である。