【社説】07年南北会談にいたのは韓国の大統領だったのか

 2007年は北朝鮮がすでに最初の核実験を行った後だった。その後も北朝鮮は何ら態度を改めることなく、大韓民国を火の海にすると脅迫している。米国はその脅威を阻止してくれている国の一つだ。その米国に対して「南側の国民を対象にした世論調査で、最も憎い国として米国を挙げた人がかなり多かった。また東北アジアで平和を破壊する可能性のある国として米国は1番に挙げられていた」と述べた人物が、他でもない大韓民国の大統領だった。盧元大統領は金総書記に「(北朝鮮の核問題で)北側の立場で米国と戦ってきたし、国際舞台に出て北朝鮮の立場を擁護してきた」「米国との関係を完全に断ち切り、米国に『あなた方(米国)は間違っている』とはっきり言えなかったのは、米国側が会談の会場を後にして出ていってしまうと思ったため」と述べた。北朝鮮での急変に備えた「作戦計画5029」についても「自分が破棄した」と金総書記に自慢した。ここまで来ればもう言うべき言葉も見当たらない。

 盧元大統領は「金総書記様と金大中(キム・デジュン)大統領は1回握手をしたが、(それだけで)南側経済は数十兆ウォン(現在のレートで10兆ウォン=約8400億円)を稼ぎ、今回自分が境界線を越えると、その写真だけで南側はおそらく数兆ウォン(1兆ウォン=約840億円)を稼いだ」「任期が終わってから金総書記様にぜひ(南側に)来てもらって会いましょうとは言えないが、平壌には行きたい時に行けるように(してほしい)。特別な歓迎はなくても(よい)」などとも発言していたようだが、これは盧元大統領自身だけでなく、大韓民国全体を侮辱する言動だ。

 盧元大統領は日本人拉致問題についても「日本側の主張を聞いてみたが、何を言っているのかよく分からなかった。オーストラリアの人間がうまく分析した本によると、日本は言い掛かりをつけている(と書いてあった)」と発言した。どこの国でも自国民が拉致されれば、それはその国にとって最大の人権問題になるのは当然のことだ。第三国の懸案になぜ横やりを入れるのか、また拉致した側をなぜ擁護できるのか到底理解に苦しむ。

 この対話録の内容は「外交文書の公表」という重みを超えるほど衝撃的なものだ。今回の問題は、今後、誰が大統領になっても、またどのような政権が成立しても、首脳会談で大韓民国を侮辱するイデオロギー的な偏向や、自らの精神的なレベルによって国益と国民のプライドを勝手に傷つけることができないようにする一種の規範としなければならない。誰であってもこの規範から外れた言動を取った場合、歴史の影に隠れることは絶対にできないという国家的な教訓とすべきだろう。

 民主党は国情院が作成した対話録ではなく、大統領の記録物として登録されている対話録を公表するよう提案した。大統領記録物が、国情院の作成したものと内容や文脈などが一致するのかどうか、この点も確認する必要がある。今回、かつての韓国の大統領がもたらした国内の混乱は、与野党という次元にとどまらず、また一切の疑惑を払拭(ふっしょく)し、全てを白日の下にさらして決着をつけねばならない。

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