【社説】07年南北会談にいたのは韓国の大統領だったのか

 国家情報院(以下、国情院)は24日、2007年に行われた故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と故・金正日(キム・ジョンイル)総書記との南北首脳会談当時の対話録を与党セヌリ党所属の国会情報委員らに提供したが、野党・民主党は受け取りを拒否した。この首脳会談で西海(黄海)上の南北の境界線、いわゆる北方限界線(NLL)について、盧元大統領がこれを放棄する趣旨の発言を行ったとする疑惑が、昨年の大統領選挙以来、今なお大きな問題としてくすぶり続けている。今月17日に民主党が「NLL放棄の発言は与党と国情院が共謀してでっち上げたもの」と主張すると、セヌリ党は国情院を通じて対話録の内容を確認したとして、民主党の主張に反論した。しかし最近になってあるメディアが「盧元大統領はNLLを領土線と発言した」と報じたことを受け、国情院は対話録の全文を与野党に提供する決定を下した。

 この文書はこれまで2級機密とされてきたが、国情院は最近になって一般文書に再指定したため、野党の反発に加えて法的にも争いの火種として浮上した。大統領の言動はいかなるものでも国民に公表されるのが原則だ。ただし世界の多くの国は首脳会談の記録に関しては、20-30年ほど過ぎてから公表する。これは直後に公表された場合、国家間の最高レベルの外交である首脳会談の機能そのものに問題が生じ、またその外交的な影響が国益にマイナスになるとの判断に基づくものだ。しかしそれは「首脳会談での大統領の発言は国益を守るためのもの」という前提の下で成立する原則だ。また「大統領は国家元首として守るべき品位を当然守っているはず」という信頼があってこそ成立する原則でもある。

 国情院が作成した対話録を見ると、盧元大統領が問題の首脳会談の席で守ろうとした国益とは果たして何だったのか、大韓民国の国家元首として最低限の品位を守っていたのか、これらの点を深刻に疑わざるを得ない。盧元大統領の発言のうち、会談前からあらかじめ準備していたもの以外は、国益や品位などどこからもうかがい知ることができないものばかりだったのだ。

 首脳会談で金総書記はNLLについて「われわれ(北朝鮮)が主張する軍事境界線、あるいは南側(韓国)が主張する北方限界線、これらの間にある海域を共同漁労区域、あるいは平和水域として設定してはどうか」とする北朝鮮側の一貫した戦略目標を主張していた。北朝鮮が主張する軍事境界線はNLLよりもはるかに南側だ。そのため金総書記の言葉通りにすれば、「平和水域」などというものは、今も北朝鮮が主張する海域をそのままにして、百パーセントNLLの南側にのみ設定するものとなる。また西海5島(西海沖のNLL近くにある五つの島)は南北共同管理区域上に浮き上がってしまうのだ。

 金総書記の提案はまさに国境線を譲歩するよう求めるものだったのだが、これに対して盧元大統領は「同じような考えを持っている。金総書記様と認識が一致した。NLLは見直さねばならない」と述べただけでなく「私が非常に核心的かつ最も大きな目標として考えていた問題を、金総書記様が今認めてくださった」とまで言ってのけた。盧元大統領はさらに「金総書記様がご提案された西海共同漁労平和の海。私も(現状に)息が詰まりそうだが、(金総書記の提案を)南側がそのまま受け入れて解決してしまえばよいのだが」とも言っていた。韓国戦争(朝鮮戦争)を引き起こした敵側の前で、韓国国民の血で守られてきた国境線を韓国の大統領自ら「南側がそのまま(北朝鮮の要求をそのまま)受け入れて…」と発言していたとは、到底信じられないことだ。

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